とうきょう子育てスイッチ 子育てキャッチアップ

貧困・社会的孤立に苦しむ子供たちにも、学習の機会を
学習支援事業prele(プレール)

男女協働・子ども家庭支援センター課長 鈴木秀洋さん
特定NPO法人3keys代表理事・森山誉恵さん

子供の貧困が問題化する中、学習支援の必要性を訴える声も増えています。しかし、いまだ解決の糸口は見えていません。中でも家庭環境に問題を抱え、親と別れて暮らす子供達の問題は、深刻です。NPO設立当初から児童養護施設での学習支援事業に取り組んできた森山誉恵さんに、お話を伺いました。

原点は、大学時代の学習支援ボランティア

学習支援に関わるようになったきっかけは?

森山さん:学生時代はアクティブな学生で、大学1年生のときからビジネスコンテストに参加したり、コンテストを運営する側に回ったりしていました。インターン先の社内ビジネスコンテストで出したプランを、事業化したこともあります。そうした経験を重ねる中で、どうしても社会的意義に焦点を当てがちな自分に気づいたんです。
ちょうどそのころ、家族や友人関係での不幸が続いたこともあり、「日本は一見豊かだけれど、そのひずみとして、教育や福祉の問題があるのでは…」と考えるようになりました。「自分は、そうした問題解決に携わる仕事がしたいんだ」と思い始めて調べていくと、日本には、虐待などで親と暮らせない児童が、全国に約5万人もいるという現実に行きあたりました。
その問題意識をもっと深められるかもしれないと考え、児童養護施設での学習支援ボランティアを始めたのが、きっかけです。

「一人で」から「グループ」の活動に移行した経緯は?

森山さん:施設の内側に入ると、児童福祉の現場の厳しい実情が見えてきました。学習支援ボランティアのニーズは高いのですが、施設スタッフは忙しすぎて、ボランティア募集に割く時間もお金もありません。私が最初に施設にメールで問い合わせたときも、2カ月くらい返事がなかったほどです。
これは学習ボランティアの募集から選抜まで、一連の段階を担う外部団体が必要だと感じました。そういう問題意識をもって施設にヒアリングを行うと、多くの施設が「そんな団体があれば、ぜひお願いしたい」という答えがありました。そして、大学3年生のときに、学習支援ボランティアを集めてフォローも行う学生サークル「3keys」を設立しました。

ボランティアは、1対1で向き合う特別な存在

森山さん学習支援活動で気を付けていることは?

森山さん:たとえ虐待を受けていたとしても、親と別れて暮らしている子供達は「自分がもっといい子にしていれば、こうならなかった…」と思いがちです。だから、学習支援ボランティアが活動を辞める場合も、「また、自分がいけないから、人が去ってしまう」という喪失感を子供に持たせることだけは、絶対に避けるべきです。そのためには、最初に「この人(ボランティア)は、この目標達成のために、いついつまでを期限に活動します」という覚書を交わす工夫もしています。

学習支援ボランティアの難しさとは?

森山さん:養護施設の職員も学校の先生も、一度に複数の子供達を見ています。学習支援ボランティアだけが、唯一、子供とマンツーマンで向き合っている珍しい存在。週1回の活動といえども、その子のことが一番わかってくるときがあります。そうなると、ボランティア側は「もっと、この子のためにしてあげたい」という気持ちになってしまうことがあります。でも、実はそこが難しい点です。子供達は複雑な事情を抱えて入所しているので、ボランティアがちょっと踏み込んだだけでは改善されない何かが、そこにはあるのです。もっとやってあげたい気持ちと、踏み込み過ぎてはいけない自制の間で、うまくバランスを取らなくてはいけない。難しい活動であるな~と思います。

課題の多い活動だからこそ、法人化を選んだ

森山さん

法人化を決意したのは、なぜですか?

森山さん:3keysを行っていくうちに、かなり工夫が必要な活動だと気づきました。ボランティアはフォローしないとすぐに辞めてしまう、子供達の個人情報を守らなくてはいけない、支援先でトラブルが起きたときは瞬時に動ける体制が必要……。とても学生の片手間でやれる活動ではありません。だからこそ、「仕事として続けたい!」と思い、就活から独立の勉強に切り替えて、大学を卒業した2011年に法人格を取得しました。

施設との関係性に変化はありましたか?

森山さん:学生サークルのころは、交通費もいただかず、まったく無償活動でした。だからこそ、施設との深い信頼関係も築けたし、中にいる人にしかわからない難しさや苦労を踏まえたプログラムが作れたと思います。
ただし、無償だと離れていくボランティアが多いのも確かです。人の入れ替わりが激しいと、組織としてのノウハウが蓄積できず、私が疲弊していくばかり。それもあって、法人化しました。
法人になってからは、施設とも新たに契約を交わし、少しですが費用もいただくようにして、お客さまとしておつき合いするように変えました。「0円だと要望があっても言いづらいけれど、有償なら言いたいことが言えるね。」と好意的に受け止めてくれる施設もありました。

運営資金はどのように捻出していますか?

森山さん:施設からは年会費をいただいていますが、金額は子供1人あたりに換算すると200円程度。行政と交渉したりもしましたが、現実は厳しくて、完全に赤字です。

現在は、活動に共感してくださる民間からの寄付を募り、支援金が集まった分だけ支援を提供するというスタイルにしています。

クローズドの領域で支援するのが私たちの役割

最近は、地域で学習支援をする動きも出てきましたね?

森山さん:無料塾や子ども食堂などが出てきて、地域で困難を抱える子供達を支援する動きが生まれていますね。
私たちが得意とするのは、虐待の被害者など、外部から保護する必要がある子供達の支援。いわゆるクローズドの領域です。一方、地域全体でオープンに支援することには慣れていません。以前は、どちらもやらなくてはと思っていましたが、今は子ども食堂などの取り組みも出てきたので、住み分けがしやすくなって気がラクになりました。
今後は、自分たちの培ってきたノウハウを生かして、クローズドの領域を突き詰めていきたいと思います。

 

新たなチャレンジ!
子供たちのためのポータルサイトをスタートします!
【10代向けの支援サービス検索・相談サイト「Mex(ミークス)」東京版】
https://me-x.jp

 

子ども食堂や無料塾があっても、そこに繋いでくれる大人がいないと、子供たちは支援を受けることができません。支援を受ける術を知らずに、ますます孤立してしまう子供達もいます。そんな彼らが社会とつながる唯一のツールが、インターネットです。
子供たちが悩み事を打ち込んだときに、有害な情報に誘導されることなく、適切な支援団体とつながることができる。そのためのポータルサイトが立ち上がりました。是非ご覧ください!

 

特定NPO法人3keys代表理事・森山誉恵さん


  • 自立援助ホームでの学習支援

  • 児童養護施設での学習指導風景

  • 学習ボランティアの事前研修

  • 学習ボランティアの面談風景