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アウトドアの知恵と防災をつなぐ。子育て世代が生活の中で楽しくできる防災を

アウトドア流防災ガイド あんどうりすさん
アウトドア流防災ガイド あんどうりすさん

アウトドア流防災ガイド。2003年より阪神大震災被災体験とアウトドアの知識を生かした講演活動を全国で展開。子育てグッズと防災グッズをイコールにするアウトドア流の実践的な内容が好評。毎日の生活で楽しく実践できると親達の口コミで全国に広まり、小・中・高校や自治体、企業研修などで年100回以上の講演を続けている。モンベルの布オムツの提案者でもある。『自然災害サバイバルブック』(枻出版)他。

東日本大震災から5年。熊本地震、ゲリラ豪雨などが続いている昨今、子育て世代を中心に「防災」に対する意識は高まっています。阪神大震災を経験し、アウトドアの視点を取り入れ、毎日の育児が防災に繋がるお母さん向けの防災講座を開いているあんどうりすさんにお話を伺いました。


アウトドアの知恵と防災をつなぐ。子育て世代が生活の中で楽しくできる防災を

「お母さん向けの防災講座」を開くきっかけを教えてください。

あんどうさん:1995年に起こった阪神大震災を経験しました。当時兵庫県に住んでいて、街の風景は地震前とは全く違うものになりました。それまで体験したことのない大きな揺れに、揺れている最中は何もできないことも体感しました。この地震の経験は私にはとても大きく響き「自分の身は自分で守りたい」と強く思い、そこからアウトドアの世界に足を踏み入れました。そして結婚し、子供が生まれた時「自分が生き残るスキルは身に付けたけど、これからは子供と生き残ることを考えなくては」と、赤ちゃんがいる生活の中でできる防災を考え、自分なりの工夫を始めました。そのことをママ友に話したところ、ぜひその話を聞きたいと、はじめは子供を生んだ助産院で、同じ年齢の子供を持つお母さん向けにお話をしました。話しを聞いてくれた方が、ぜひ地域のママサークルでもとなり、口コミで講座が広がっていきました。2003年から始めた防災講座は、年100回以上行うようになり、書籍の出版や、TVに出る機会もいただきました。



静岡で開催された「東海地震から赤ちゃんを守る防災セミナー」の様子。子供と津波から逃げる、避難する際に役立つさらしでのおんぶの仕方を講座でお伝えする。NPO法人「だっことおんぶの研究所」が研究しエビデンスもしっかりした内容。「さらしのおんぶを覚えておくとカーテンなどでもおんぶができます」(あんどうさん)http://www.babywearinglabo.com/


「育児=防災」に繋がるきっかけづくりをすすめる

育児世代の防災意識は高まっていますか?

あんどうさん:関東では東日本大震災を体験されたお母さん達も多く、防災情報は十分持っています。防災の準備をしなきゃと思っているけれど、毎日の子育てに追われてできない。私自身もそうでした。講座を始めたのも防災のことを伝えたいが先にあったのではなく、「防災をいかに毎日の子育て生活の中に楽に取りこめるか」がありました。日々の子育て生活が結果、防災になればお母さん達もできますよね。そこにアウトドアのスキルがフィットしたのです。


「お母さん向けの防災講座」内でお話していることをいくつか教えてください。

あんどうさん:毎日使う赤ちゃんのおむつ替えシートを断熱シートにすれば、真冬に体育館に避難となった時には、寒さを防いで重宝します。雪の上でも寝かせられます。さらし布は、おむつにもなりますし、小さく切って下着の当て布にし、その布を変えれば、着替えを減らせます。怪我の時に止血や包帯としても使えます。懐中電灯は電池消耗の低いLEDにする、ヘッドランプを持っていると、停電した夜道を歩く時にも便利ですが、お子さんの耳かきの時も使えます。水に濡れても音が出せる玉の入っていないホイッスルを用意すること、スマートフォンに雨雲レーダーや星座のアプリを入れておくと役に立つことなど、すぐにできることを中心にお話します。そしてママバッグを防災バッグにしようと呼びかけています。



「右腕をあげ、左腕を回してあげると、左腕の方が長くなります。 高いところに登って避難する時に使えます」(あんどうさん・動画での説明もあり)


スマートフォンのアプリなどは、お母さん達には身近に感じて、すぐに実践したくなりますね。

あんどうさん:星座アプリは、お子さんと日常的に使ってみるといいですよ。方位を覚えるきっかけにもなります。子育て中のお母さん達は日本中の誰よりも、日々物事を臨機応変にこなしていて、能力が高いです。そして誰よりも「子供を守りたい」気持ちがありますが、現実は忙しくてなかなか動くことができない。講座を聞いて、忙しい中でもそれなら家に帰ってすぐやってみよう、試してみようとその人が動きだす「きっかけ」を私はお伝えしています。 実はアウトドアの世界ではかなり前から常識なことが、防災では旧態依然のままで、最新情報に更新されていないことが、とても多いのです。アウトドアの知恵が防災に繋がり、育児も楽になったらと思っています。

アウトドアの知識やコツを知ったお母さん達は、講座後、みなさんご自身の思った方向にどんどん突っ走っていきます(笑)。防災講座を各地に広めたり、おしゃれなさらしにしたいと染めを学んで色とりどりに染めたり、講座を聞いたお母さん同士で「防災マルシェ」を開いたりという話をお聞きすると、私はとてもうれしいですね。 。



江東区にある「そなエリア東京」での講座風景


マニュアルを覚えるのではなく「知恵」を蓄え、自分で考えて動ける人になって欲しい

防災の知恵が毎日の生活の中でも使えるのは面白いですね。

あんどうさん:ぜひやりやすいことから試して欲しいです。毎日の生活の中でしていることなら、緊急時も慌てずにできます。ただ、みなさんマニュアル世代なのか、講座で話した通りにしないと、そのグッズがないといけないと思われている方もいますね。講座で聞いたことは、状況に応じて自分で考えて行動できるようになって欲しいです。「ベビーカーで避難してもいいですか?」と聞かれることがありますが、車輪は半径以上の高さは乗り越えられません。そのことを覚えていれば、地震の時はベビーカーで避難してはいけないではなく、外の状況からベビーカーで避難する、しないの判断をし、車いすや保育園のカート、自転車などのタイヤが付いたものでも、避難時段差があれば前輪部分も持ちあげて、高さに対応していくなど、自ずと応用ができると思うのです。防災の知識や知恵、グッズは、持っているだけではなく、災害が起こった場面でどう使っていくか、それがとても大事です。



救護などで役立つ古武術を実践するあんどうさん。「おへそに両手をあててもらい、手首をつかんで引きあげると、力を入れなくても人を持ちあげることができます。」


災害時、防災の知恵を活かせる行動力が必要だと感じます。

あんどうさん:災害にあった時、防災グッズを一つも持っていないこともあると思います。その時でもできることはあります。学んだ古武術で、子供の重さを感じない抱っこの仕方や、身体の動かし方一つで大人の人を持ちあげる技もあります。このような身体一つでもできることも知っておくと心強いですね。防災を「人任せ」、「他人事」にせず、災害時は「防災グッズがなくても、自分を信じて動く」こと。毎日予期しないことが起こる育児にも通じます。グッズよりもスキルや知恵を持って、毎日の生活に活かして、災害に備えて欲しいです。



豪雨のニュースでよく聞く「1時間に100ミリメートル」を分かりやすく表したイラスト。「ミリだとピンとこなくても、お相撲さんが落ちてくると考えると、いかに大変なことか想像できますよね」 イラスト提供:気象庁気象研究所予報研究部研究官 荒木健太郎さん ベレ出版 「雲の中で何か起こっているか」


写真提供:あんどうりす

あんどうりすさんHP:http://andorisu.jimdo.com/


そなエリア東京(東京臨海広域防災公園)

国の災害応急対策の拠点として整備されたの国営公園。その中に防災体験学習施設「そなエリア東京」がある。

http://www.tokyorinkai-koen.jp/