とうきょう子育てスイッチ 子育てキャッチアップ

地域で学生の力を活かした子供達への支援活動


一般社団法人 D&A Networks 代表理事 中田弾さん

一般社団法人D&A Networks代表理事。2004年日本大学理工学部建築学科卒。2006年日本大学大学院理工学研究科博士課程前期建築学専攻修了。大学在学中から子供を対象としたワークショップの企画、運営を行う。大学院卒業後は、不動産を扱う企業で集合住宅の企画設計などに携わり、並行して地域活動を継続。2011年D&A Networksを立ち上げ、2014年一般社団法人化。2015年児童発達支援・放課後等デイサービス「ぴかいち」の運営を開始。現在、約400名の学生とともに子供向けイベントの企画・運営、次世代育成、リーダー養成、福祉関連事業、若者の地域活動支援などを行い、複数の大学で非常勤講師を務める。一級建築士、こども環境アドバイザーなど。


子供や親子連れが集う公園。最近は、ボール遊び禁止など、禁止事項が多いことから、公園で自由に遊べなくなっている。中田さんが代表理事を務める一般社団法人 D&A Networksは、千代田区と協働で区内にある公園で時間や場所を限定してボール遊びなどが自由にできる『子どもの遊び場事業』を運営。学生のプレーリーダーを派遣して、子供達の遊びを支援する。多くの学生と地域を繋ぎ、豊かなまちづくりを進める一般社団法人 D&A Networks代表理事の中田弾さんにお話を伺いました。


学生時代から子供や地域に関わる「地域の何でも屋さん」

中田さんの経歴と子育て支援に関わるきっかけを教えてください。

中田さん: 大学と大学院で建築学を専攻し、子供の過ごす空間である小学校や児童館の建築を専門に学びました。卒業論文のテーマは、小学校の校庭開放についてです。大学在学中は、子供を対象としたワークショップの企画、運営を行い、千代田区の小学校や児童館、お祭りなどに関わっていました。就職後も、ボランティアで子供に関わる地域活動を続け、その後、千代田区の観光協会を経て、現職となりました。


一級建築士の中田さんが、子供の支援活動をされているのは異色では?

中田さん: よく言われますね。理系の人が?と(笑)。私は子供を対象とした建築の勉強からスタートしていることもあって、自然と子供に関わる活動に繋がりました。現在は、地域の子供や障がい者、高齢者も楽しめるイベントの運営や、バリアフリーマップの作成など福祉に関する活動、約400名のボランティア登録の大学生への研修など幅広く活動を行っています。言わば、地域でのお困りごとを解決する「何でも屋さん」ですね。


千代田区主催の「子どもの遊び場事業」を受託・運営

活動のひとつ、千代田区との遊び場事業について教えてください。

中田さん:千代田区では外遊びを推奨する条例ができ、それまで公園ではボール遊び禁止だったのを、ボールを使った遊びができる日を作って、子供達の外遊びを推進することになりました。
私は学生時代から数えると10年、千代田区で子供と関わってきた経験があり、柔軟に動ける学生を束ねているということもあって、担当課の方から依頼を受けました。
現在、千代田区内6カ所、各所週1回、「子どもの遊び場事業」を開催しています。予約なしで子供だけで気軽に来られて、大学生のプレーリーダーと一緒に、サッカーや大縄跳び、鬼ごっこなどをして遊びます。お兄さん、お姉さんやいろんな学年の子供達と遊べる場として、学年を超えた子供同士の縦のつながりも生まれています。


「たくさん遊べて楽しい」と子どもに好評の千代田区の「子どもの遊び場事業」(出典:千代田区子ども総務課)


保護者の声を形に 放課後デイサービス「ぴかいち」を立ち上げ

児童発達支援・放課後等デイサービス 「ぴかいち」を昨年立ちあげました。

中田さん:これまでたくさんのお子さんや保護者の方と関わってきました。その中で障がいや療育手帳のあり・なしではなく、地域にいる支援が必要な子供達が集まれる場がないかという要望は以前から根強くありました。行政は、待機児童問題等ですぐには動けない状態。それであれば、私達が施設を立ちあげようと、2015年児童発達支援・放課後等デイサービス「ぴかいち」を、オープンしました。



「ぴかいち」には、さまざまな遊び道具が揃っている。子供の興味や特性に応じて使う


児童発達支援・放課後等デイサービス「ぴかいち」はどんなところですか?

中田さん:支援が必要なお子さんが通う場として、千代田区を始め、目黒区、新宿区、文京区など区を超えて通所されています。療育手帳の有無は問いません。特徴としては、大学生や社会人のスタッフが随時入ります。数学学科や建築学科の大学生が、子供達の勉強をみることもしています。
また、同様の一般的な施設では、子供達の外出はとても大きなリスクがあるため、実施するのにハードルが高いのですが、ぴかいちでは、外出イベントを月1、2回、多い時は週1回行い、外出時は、常勤のスタッフにプラス大学生スタッフも一緒になって、基本はどのような特性があっても子供達全員で行きます。そして子供や親の事情で、急にぴかいちを利用したくなった時も、柔軟に対応できる体制を整えています。多動や知的障がいのお子さんを持つご家族からは「こういう場を必要としていた」「幼稚園や保育園、小学校などの行事参加は今まで難しかったが、ぴかいちのイベントに参加できてとても楽しそうだ」という声をいただきました。私達は、子供はもちろんですが、家族全体のサポートを考えています。子供の個性が活きる居場所づくりをこれからも続けていきたいです。



みんなが大好きな外出。この日はお花見に行った


行政との協働事業をよりよい形にするには?

千代田区との協働事業を多く手掛けていますが、行政との関わり方について教えてください。

中田さん: 今、区で関わりのある各部署の役職の方は、私が学生だった頃、現場によくいらした方でした。ある事業を始める時、私達の団体を選択肢のひとつとして考えていただいてくれることが多いようです。やはり、そこには地域で長く活動しているという「信頼」が大きいと思います。行政と協働する事業は全て、依頼を受けて動いています。「こんなことを地域で解決したいんだけど……」と話しをいただいた時は、まず話をお聞きます。子供や福祉など現在の活動以外のどんな内容でも、地域の役に立てれば、検討してできることがあればやりましょうというスタンスでいます。
「まち」には、私達の活動対象である「子供」「福祉」そして私が専門の「建築」があります。それぞれがまちの中で、何かしら関わりを持っています。一つひとつの活動と捉えずに、「まちづくり」という視点から、大学生達の地域活動が、地域の人との触れ合いを生み、住んでいるのが楽しくなるまちをなって欲しいと思っています。



中田さん自身も「ぴかいち」に入り、子供、親と接する時間を持つ。 「現場の空気感を味わっていないと課題の解決はできません」


D&A Networksのこれからの展望を教えてください

中田さん:私が学生時代に遊んでいた子供達が大学生になって、最近一緒に活動をするようになってきました。千代田区の小学校出身の子が、自分の地域に舞い戻り、次世代の子供達の活動に関わるようになったことで、世代の循環が始まったと思いました。これからも、学生達が子供と関わる場をどんどん作っていきたいです。学生時代からいろいろな子供と遊んでいると、自分が親になった時、子供とどんな遊びができるか、バリエーションが持てます。障がいのある子供や支援が必要な子供だったら、どんな支援が必要かなど、選択の幅も広がります。子育て支援は長い目でみないと結果はわからないものです。今の大学生達に、さまざまな地域活動を経験してもらい、次の世代で子育てが変わればと望んでいます。


一般社団法人 D&A Networks
http://www.d-and-a-networks.jp/index.html

千代田区『子供の遊び場事業』
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kosodate/kyoikukatsudo/asobibajigyo.html

児童発達支援・放課後等デイサービス ぴかいち
http://www.d-and-a-networks.jp/pikaichi/index.html