とうきょう子育てスイッチ 子育てキャッチアップ

「遊び」は最高の「学び」をモットーに、大学の持つ教育資源を社会にデザインしていく NPO法人東京学芸大こども未来研究所

NPO法人東京学芸大こども未来研究所

2005年東京学芸大学と株式会社おもちゃ王国が、様々な「こどもの遊びと子育て」に関するニーズに応えるために設立した、産学共同研究のための研究組織「学芸大こども未来プロジェクト」を母体として発足。2009年NPO法人化。

NPO法人東京学芸大こども未来研究所
小山田氏(左)、正木氏(右)


正木 賢一(まさき けんいち)
東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、デザイン事務所を経て、東京学芸大学准教授(芸術・スポーツ科学系、美術・書道講座)。東京学芸大こども未来研究所副理事長として数々のプロジェクトをてがけている。絵本学会所属。

小山田 佳代(おやまだ かよ)
イベントディレクターを経験し、出産後、子育て支援活動を始めたのを機に東京学芸大学こども未来プロジェクト市民研究員となる。その後、東京学芸大学6大学連携教育支援人材育成事業の専門研究員を経て、現在、学芸大こども未来研究所チーフプロデューサー。

大学の「知」を、企業や行政と連携して社会に還元。成果を循環し良い教育環境を実現する

発足の経緯などを教えてください。

正木さん: 産学連携の必要性が世の中でも認識されはじめていたという背景から、東京学芸大学(以下、学芸大)の持つリソースを活用するための研究組織として「学芸大こども未来プロジェクト」を発足させました。大人も子供時代を思い出し、子供のように夢中になり、「おとな」から「こども」へモードチェンジして取り組む、という「こどモード」を、発足当初から一貫して合言葉にしています。これには、「遊び」は最高の「学び」であり創造力の源泉であることを、多くの大人達に思い起こしてほしいという願いがこめられています。教育は「子供の可能性を引き出す」ことであり、その方法に正解はありません。子供本来の特性を大切にしながら見守り、適切な環境を整えることができれば、自然に育ちます。子供と同じ目線になるためにも、「こどモード」にモードチェンジして、子供と一緒に「遊び」を通して成長しようという精神が、すべてのプロジェクトの基盤になっています。
方向としては、大学の研究者や学生が生み出す「知」と企業の持つ「展開力」を結集し、「こどもの遊びと子育て」に関するノウハウを研究開発するとともに、公的サービスや商業サービスでは担いきれない問題を解決することを目指しています。このように産学連携で得たものを地域教育や家庭教育につなげていく中で、現在も数十のプロジェクトが動いています。
事業領域は、①地域教育支援事業(地域の教育支援人材育成、地域のネットワーク構築支援、地域教育の場・空間のデザイン・監修、地域教育コンテンツの開発)、②学校教育支援事業(教員研修プログラムの開発、教材・遊具の開発、外部人材による授業プログラムの開発)、③家庭教育支援事業(子育て・教育に関する情報発信・情報発信媒体の監修、商品開発・監修、家庭教育に関する研究・調査)、④地域の強いニーズで開始した保育園事業の4つです。
また、最近スタートした「AI×教育」プロジェクト(リクルート次世代教育研究院)をはじめ、各事業領域を横断するような多岐にわたる研究テーマにも取り組んでいます。


シャボン玉遊び
いろんなシャボン玉遊び(出典:東京学芸大学こども未来研究所)


大きな絵を描こう
大きな絵を描こう(出典:東京学芸大学こども未来研究所)



地域に根差した多様な教育支援人材育成を通して、大人も学生も子供も育つ

数十のプロジェクトが進んでいるということですが、いくつか紹介していただけますか?

正木さん: 近年、地域力が衰退し、児童や生徒の多様化や複雑化などにより、以前は地域と子供をつなぎまとめていた学校教育は、機能が弱まっています。特に学校以外で、地域の多様な教育資源を発掘し、それらと学校・家庭をつなぐ人材が必要とされているといえるでしょう。このような背景を受けて、当初は文部科学省による「戦略的大学連携支援事業『6大学連携教育支援人材事業』」として始まった教育支援人材認証協会の活動は、全国的な広がりを見せている事業のひとつです。内容は、子供が幅広い年齢層の地域人材とふれあい、子供として正しく理解され、心の豊かさを育むことができる環境整備のための認証講座の開催です。学校支援、アフタースクール、地域の子育て支援など、認証された方々の活躍の機会は今後も増えていくと思われます。(2016年11月時点で会員校19大学1専門学校1機関、こどもパートナー認証数6433名、こどもサポーター認証数1772名、こども支援士認証数128名)
また、今年で10年目を迎える小金井市・国分寺市・小平市の三市との連携講座においても、こどもパートナーの認証を得ることができます。うれしいことに学芸大の学生も参加しており、彼らが学外で経験した事例を学内に持ち帰り研究するという「知」の循環がみられます。学生たちが様々なプロジェクトに参加することは、彼らにとって自分がどんな心構えで教員になるべきかを考える機会となり、大変有意義なことです。

こども支援士
今後、全国の会員校が各地域の特性にあわせて独自の人材育成プログラムを開発し実践することが期待されます。
『こども支援士』認証講座の案内(出典:東京学芸大こども未来研究所)


三市連携講座の案内
三市連携講座の案内(出典:東京学芸大こども未来研究所)



小山田さん: 子育て・教育に関する情報発信媒体の監修として、小金井子育て・子育ち支援ネットワーク協議会のウェブ「のびのび-の!」のプラットフォーム制作や情報発信支援を行っています。30団体以上がゆるやかにつながり、利用者に情報をわかりやすく伝え、相互交流する工夫をしています。たとえば、ママや子育てに興味のある方がレポーターとしてイベントの「市民レポート」を担うことで、当事者目線のライブ感のある情報を共有することができます。地域の子育て支援団体やイベントはたくさんあるものの、情報発信が追いつかなかったり、情報が分散しているという状況を打開し、見やすく整理して、最新の状態で読者に届けたいと考えています。子育て支援サービスや団体のメディア作りや情報発信については課題も多く、こども未来研究所がコーディネートすることでいずれは当事者だけで運営できるような形にするお手伝いをしたいです。

正木さん: 2009年にNPO化したことで、より社会に開かれるきっかけになりました。特にNPOの研究員以外にも他大学の研究者や企業の方々が教育フェローとして参画してくださり、活動の幅も大きく広がりました。


多様な教育支援人材の育成・活用に力を入れ、遊びや楽しみを大切にしつつ地域教育における大学のモデルケースを作っていきたい

今後の展開や課題などを教えてください。

正木さん: 教育支援人材の育成が重要な課題だと思います。多様化する社会に応じて、教育のあり方も大きく変えていかなければなりません。 今後は、学校教育にかぎらず、家庭や仕事の現場においても、豊かな人間性を育む教育環境の必要性が高まることでしょう。そのためにも、教育への様々な関わりや支援の方法を探り、その成果を広く社会に発信していくべきです。そこでNPOとしては、有為の教育者を養成するという大学のミッションを念頭に、教職という専門性にとどまらない創造力・実践力に富んだ教育支援人材の育成にも貢献していきたいと考えています。
その一方で、私個人としては「教育をつくる町、小金井!」をスローガンに、地域に根ざした教育モデルの開発に携わっています。この研究活動は、小金井地域の再開発にともなう産学連携事業としてスタートしました。「大学のある町づくり」をかかげ、教育リソースによる地域産業の活性化にもつながる内容です。大学には、全国各地から毎年1,000人近い若者が入学します。豊かな「教育マインド」を育もうと日夜勉学に励む学生たちの存在は非常に大きいといえます。なぜなら、彼らが積極的に地域とかかわり市民と協働することで、家庭と学校と社会をつなぐ役割を果たすからです。それが「地域教育」の意義だと私は考えています。知的好奇心に満ちた人々が集い、語らい、協働していく地域社会を実現させたいですね。今後も、子供たちの未来、そして未来の教育をつくりだすNPOとして活動を展開させていきたいと思います。


東京学芸大こども未来研究所:http://www.codomode.org/
教育支援人材認証協会:http://www.jactes.or.jp/
のびのびーの!:http://nobinovino.net/