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不安・悩み・孤立感を抱える親達に、あたたかいフレンドシップで寄り添う「家庭訪問型子育て支援」特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン

特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン
ホームスタートとは、未就学児が1人でもいる家庭に、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問する「家庭訪問型子育て支援ボランティア」。1973年にイギリスで始まり、「すべての子供に幸せな人生のスタートを」という理念のもとに世界22カ国で訪問支援の仕組みが利用されている。日本では2009年より普及が始まり、NPO法人や社会福祉法人などの地域団体が運営母体となり、2016年11月現在、27都道府県87地域で活動。ホームスタート・ジャパンは、ホームスタート・ワールドワイドの認証を得た国内唯一の公認組織として、日本での普及、オーガナイザー育成などの支援の向上、行政との連携促進を行う。2016年、厚生労働省主催「第5回健康寿命をのばそう!アワード」母子保健分野で全国のホームスタートの活動が「厚生労働大臣最優秀賞」受賞。

森田 圭子(もりた けいこ)
特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン副代表理事。ホームスタートわこうオーガナイザー。


森田圭子さん
森田圭子氏


「子育て」を「孤育て」にせず、小さな悩みを一人で抱えず「気軽に」支援を得られるように

ホームスタートの活動が日本で広がった経緯などを教えてください。

森田さん: ホームスタートはイギリスで40年以上前に始まり、日本では2009年から普及を開始しました。2006年より導入に関わる調査研究がはじまり、2008年に日本版システムを試行した結果、97%のニーズが改善されたことが確認されました。このように、ホームスタートでは調査やモニタリングを大切にしており、学術的研究結果を伴う説得力のある普及活動に役立っています。
現在は自治体の委託事業としての実績も増え、活用できる国の財源も、拠点の地域支援、利用者支援、妊娠出産包括支援、養育支援等広がっています。


ホームスタートの存在意義とは?

森田さん: 育児中に孤立しがちな時代背景を踏まえ、様々な子育て支援施策が打ち出されていますが、残念ながら「子育てひろばなどに出かけづらい親子」や「専門機関の支援を受けるほど問題は重篤ではないけれど、ストレスを感じている親」には、支援は届きづらいものです。ホームスタートは、このような支援のすき間で孤立しがちな親子に支援を届けることを目的としています。小さな悩みも一人で抱えてしまうことで大きな悩みになってしまうことは、誰にでも起こりうることです。私たちは、問題が大きくなってからようやく支援を得られる社会ではなく、誰でも「気軽に」手助けを得られる社会にしていきたいと考えて活動しています。


76平米の室内遊び場
「すべての子どもに幸せなスタートを!」の理念を大切に活動しているホームスタート・ジャパン(出典:ホームスタート・ジャパン)


子育て経験のある当事者が、「傾聴」と「協働」を通して、友人のように利用者に寄り添う

訪問支援の詳細を教えてください。

森田さん: 基本的には、支援を必要とする未就学の子供がいる家庭に、子育て経験者が訪問支援ボランティア「ホームビジター」として訪問します。ホームビジターはピアサポーター(当事者性をいかした支援者)として週1回2時間、定期的に2~3か月かけて無償で訪問します。時には子供と一緒に公園や子育てひろばに外出する等、地域の子育て支援や人々とつながるきっかけづくりも応援します。初めての子育てで困惑したり、なかなか外出できず孤立感に悩む方や、引っ越したばかりで地域になじみがない、などという方の利用が多く、中には2人目が生まれたりなどで2度目の利用してくださる方もいます。家事代行や保育は行わず、「傾聴(気持ちを受け止めて聞く)」と「協働(家事育児や外出を一緒に行う)」を通して、フレンドシップで(友人のように寄り添い)支援するのが基本です。


活動で工夫されている点は?

森田さん: 枠組みとしては、その運営団体の責任者であるオーガナイザーが、利用者とホームビジターのマッチングや訪問全般のフォローを行い、保健師などの地域の専門職などを含めて組織された運営委員会がオーガナイザーをサポートすることで、質の担保をしています。(図1参照)。
特にオーガナイザーは、「利用者を守り、ホームビジターも守る」中心的な役割を果たしており、ホームビジターの養成、地域の各種支援機関との連携なども行います。そのためオーガナイザーには地域の子育て支援拠点事業で実績のある人材が運営団体から推薦を受け、ホームスタート・ジャパンが主催する養成講座を経て就任します。ホームスタートではほかにも、オーガナイザーをサポートする各地運営委員会や全国のネットワーク組織等を通じて支援の質を高める努力をしています。


ホームスタートの支援体制
ホームスタートの支援体制(出典:ホームスタート・ジャパン)


ホームスタート・ジャパン
子育て支援経験豊富な候補者から選ばれた、オーガナイザー達(出典:ホームスタート・ジャパン)


住民参加型+「質」を担保できる訪問支援を実現する仕組みが整備

子供がいる中での家庭訪問となると、つい構えてしまいがちです・・・。

森田さん: そうですね、プライバシーの問題もありますし、最初は抵抗を感じられる方も多いと思います。ホームスタートを利用するかどうか半年間迷って、やっと連絡をもらった例もありました。でも、子育てに煮詰まったり、不安を抱えていると、家が散らかっているなど、訪問を受け入れることへの躊躇よりも支援を受けたい気持ちの方が優先されることが多く、そのような場合、ホームビジターはもご本人が躊躇されている気持ちや家の状態などに否定的にかかわることはありません。子供が騒いでいる中でお話を聴く、というのがよくあることということも学んでいます。ホームビジター養成講座は、8日間延べ37時間にのぼります。ホームビジターは自分の育児経験を押し付けるようなことはなく、「傾聴」するのが役割です。利用者さんからは「話しているうちになんとなく考えが整理されてきた」「客観的に状況を把握することができた」という感想をいただくことも多いです。「話してすっきりした」「育児に向き合うエネルギーが湧いてきた」「家族以外と話せてうれしかった」と感じてもらえるだけで活動の意義が果たされるというものです。まずは気軽に利用していただきたいです。


活動の質を保つためのアセスメント(評価)やモニタリング制度が充実しているとのことですが。

森田さん: ホームビジターさんが訪問する前にオーガナイザーは利用者さんとニーズをアセスメントし使い方の計画をします。それに沿ったホームビジターの訪問が4回終了したら訪問による自分の変化を自己評価してもらいます。どれだけ問題が軽減したかを自己評価する仕組みになっています。また、オーガナイザーはホームビジターの訪問のフォローもしており、常に利用者、ホームビジター、オーガナイザーの3者が安心して話ができる体制を築いています(図2)。このような評価・モニタリングの仕組みと人材発掘・育成への取り組みにより、地域の子育て経験者(非専門家)でも、安心安全に訪問支援に参加できるようになっています。現在、平均で全ニーズの約9割が満足する高い効果を得ています。


訪問の流れ 図2 訪問の流れ(出典:ホームスタート・ジャパン)


利用者の声を紹介していただけますか。

森田さん:支援ニーズの上位は、①孤立感の解消、②子供の成長・発達を促す機会作り、③子育て支援などの情報です。人見知りで、大勢の知らない人が利用する子育て広場には行きづらいという方の中には、家でじっくり関係性を育みながら話を聴くほうがいいという方もいます。引っ越しで知り合いがいないなどの場合には、地域情報をお知らせしたり、一緒に広場に行ってみたりすることもあります。保健師に相談するほど深刻ではないけれど、ちょっと子育てのことを聞きたい、という方にはちょうどよい相談相手となっているようです。どんな親でも、出来事や体調やお天気によって自分の調子が変わり子供への接し方も変わることもあります。子育てにはいい時もあればそうでない時もある、子供をかわいいと思えるときとそうでない時もある、落ち込んだり自分を責めたり、そんな揺れる気持ちを子育て経験者と話すことで、誰もがそんな気持ちになることがあり、自分だけが特別なわけではなく、もっと自信をもって、ときには気楽に育児していいんだ、という気持ちになってもらえればと思います。


訪問時の利用者とホームビジターの様子 訪問時の利用者とホームビジターの様子(出典:ホームスタート・ジャパン)


プレママへの定期訪問普及を進め、子育て世代の包括的支援の底上げをはかりたい

今後の課題や展開についてうかがえればと思います。

森田さん:今、国は、ネウボラなどの産前からの切れ目ない支援、子育て世代包括支援に本格的に力を入れ始めています。ホームスタートでも昨年から産前期対象の訪問を開始しました。これまでプレママへは周知が難しいということがありました。産婦人科で周知をお願いしても来院者が多くの地域からくるために、プレママ向けのホームスタートがない地域からの来院者への対応が難しいと、チラシを置けないこともありました。今後、制度が新たになり、その制度の下で行政と連携が取れれば地域の中での産前期支援のための周知が可能になってくるでしょう。いずれはすべてのプレママにホームスタートの活動が届くよう、行政と連携できていけばと思います。
そして、すべての子育て家庭へのホームスタートの認知度を上げていきたいと考えています。子育て施設にチラシを置いても、そこに来られない親子には届きません。保健師による訪問や、健診や母子手帳交付など多くの機会を使って多くの親子が目にするであろう方法を利用できれば、周知が広がると思います。そして日本全国のすべての家族が気軽に訪問支援を利用できるように、支援の質を保ちつつ、もっとホームスタートに取り組む運営団体を増やしていければと思います。


特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン:http://www.homestartjapan.org/
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