とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

家族を笑顔にする「パパ料理」を伝える
滝村雅晴(たきむらまさはる)さん

プロフィール
滝村雅晴(たきむらまさはる)さんパパ料理研究家、株式会社ビストロパパ代表取締役、内閣府食育推進会議専門委員、大正大学客員教授。京都府出身。立命館大学を経てデジタルハリウッド株式会社創立時に入社し広報、宣伝活動に従事。長女が誕生したことをきっかけに本格的に料理を始め、2009年4月パパ料理の普及・啓蒙活動を行う株式会社ビストロパパを設立。2014年4月には「日本パパ料理協会」を立ち上げ、会長飯士に就任。ブログ「ビストロパパ〜パパ料理のススメ〜」は9年間以上毎日更新中。地域活動も積極的に行い、次女の通う小学校でPTA会長を3期つとめる。
http://blog.livedoor.jp/tuckeym/

長女の誕生で価値基準が大きく変わったことが、パパ料理の原点

デジタル業界で働いていた頃は、文字通り仕事人間でした。妻も同じ会社で働いていたので、仕事が終わった後、一緒に外食したりなど自分たちのペースで自由気ままに生活していたのですが、2003年に長女が生まれたことで、価値基準が大きく変わりました。自宅の目の前が交通量の多い幹線道路で、ベビーカーが押しにくいことに初めて気づいたり、夫婦で気軽に訪れていたレストランやラーメン屋さんに行けなくなったり。今までと同じような生活を続けていると、毎日がうまく回らないことを実感したんです。

なかなか外食できないので家で自ら料理を作るようになり、友人を招いてホームパーティも開いていたのですが、いわゆる“贅沢”な料理を作るばかり。洗い物など後片付けは一切しない僕に対して、いつしか妻が喜ばなくなって……。これをきっかけに、これまでの自分の料理は自己満足のための趣味の料理だったと気づいたんです。そこから、自分のためではなく家族のために料理を作る「パパ料理」が生まれました。

2005年から、ブログ「ビストロパパ~パパ料理のススメ〜」をスタート。当初は『ビストロSMAP』のような雰囲気で、「パパ料理」「家庭内週末レストラン」をコンセプトとして書き始めました。でも、レシピやパパ料理への思いを毎日更新していくうちに、自分自身のパパ料理への想いが明確になり、もっと世の中に広めていきたいと思うようになったんです。

ワーク(仕事)とライフ(家庭)にソーシャル(地域、社会)がつながった

ちょうどその頃、「笑っている父親を増やそう」をミッションとして、父親の子育てを支援するNPOファザーリング・ジャパンの代表理事として活躍する安藤哲也さんの記事を新聞で読みました。その後、安藤さんや、三井物産系の会社社長でありながらPTA会長、地域の子供たちの野球のコーチもつとめる理事の川島高之さんたちと出会い、ワーク(=仕事)とライフ(=家庭)とソーシャル(=地域、社会)を楽しんでいる先輩パパがいるんだ!と衝撃を受けました。この3つにコミットし、世の中をよくするために、ニコニコしながら活動している先輩の姿に刺激を受け、ファザーリング・ジャパンの活動に参加するようになりました。「パパ料理を通じて世の中をよくしていきたい」という思いがますます強くなり、2009年3月に会社を辞め、4月に株式会社ビストロパパを設立しました。

パパ料理とは家族への“思いやり料理”

今は、パパ料理のプロモーションやレシピの企画開発、パパ、プレパパ、パパと子供、ファミリー向けの料理教室やワークショップの開催などを行っています。パパ料理とは、いうなれば“思いやり料理”。料理にはいくつかTPOがありますが、男性がよくやる料理は、自分が必要に迫られて作る「自炊」や、自分が食べたい物を自分の都合で作る「趣味の料理」、つまり“自分軸”なんです。僕が伝えているパパ料理は、自分はお腹が減っていなくても、妻や子供たちがお腹が減っていることに気づいてつくる料理、つまり、“家族軸”の料理です。パパ自身が家族がお腹が減ったことに気づけるかどうか、ここが一番のマインドです。ここに気づけば、「今日はママが調子悪そうだな」「この子は僕に何かいいたいことがありそうだな」など、さまざまなことに気づくことができる。パパが料理を楽しむことで、日々の家庭内でのコミュニケーション力が向上していきますし、ママもきっとそれを望んでいると思います。

パパ料理の活動を続けるうちに、パパ料理に共感し、実践するパパ達が少しずつ増えてきたので、2014年4月に「日本パパ料理協会」を設立。月に1度のペースで異業種パパ交流会を開催しています。協会会員である「パパ飯士」は、現在、全国に約90名。僕1人で広めていくのには限界がありますが、パパ飯士たちが全国各地でパパ料理を広めてくれています。

家族で味わう一食一食を大切にしてほしい

僕がパパ料理教室で教えているのは、料理の技術ではなくて、意識でありマインドです。技術やレシピももちろんですが、それよりも前に、「この人のために◯◯をつくりたい」という気持ちが大切です。たとえ自分に能力がなくても、本気さえあれば、スキルはあとからついてくるものです。料理をつくることで自分が変わり、家族がやさしくなり、地域社会にもやさしくなれるお父さんを一人でも多く増やしていきたい。この思いは、会社設立当初から全く変わっていません。これからも、慌てず、じわじわと、今の自分が思っていることを地道に伝え続けていきたいと思っています。

僕をパパ料理に導いてくれた長女の優梨香は、8歳で天国に旅立ってしまいました。大好きな家族と一緒にご飯を食べるのはとても幸せなことですが、その回数には限りがある。明日は一緒に食べられないかもしれないんです。だからこそ、日々の食卓での1食1食を大切にして欲しい。子供たちの笑顔を見ながら、家族一緒に食卓を囲む機会を増やして欲しいと思っています。

 


パパ飯士


パパ料理教室の様子


パパ料理教室の様子