とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

若者支援は社会投資。社会のよい変化がリターンです
工藤 啓(くどうけい)さん

プロフィール
工藤 啓(くどうけい)さん

認定NPO法人 育て上げネット理事長。2001年に若者就労支援を専門とする任意団体「育て上げネット」を設立、2004年にNPO法人化。金沢工業大学客員教授、東洋大学非常勤講師。著書に『大卒だって無職になる "はたらく"につまずく若者たち』(エンターブレイン)。『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(共著、朝日新聞出版)など。双子を含めた4児の父でもある。

欧州で知った「若者支援は社会投資」という考え方

実家が塾をしていたんです。障害をもつ1人の女の子を引き受けたことがきっかけで、その塾には、社会的困難を抱えた子供たちが集まるようになりました。家が遠い子供は通えないから、寝食も一緒です。だから私は、物心ついたときから、血のつながらない兄弟姉妹30人くらいに囲まれて暮らしていました。
その後、アメリカに留学して会計学を学んでいたとき、友人から話を聞き、欧州の若者支援施設を見学しました。現地では「すごいだろう?大変な子供たちを支援しているんだ」と言うけれど、私の実家がしていたことと規模は違えど、本質的には変わらない。目新しくはありませんでした。その一方で、彼らが「これは社会投資だ」といった言葉は私の胸を打ちました。
“社会投資”とは、社会問題の解決に自分の時間と情熱を注ぐことで、社会がよくなるというリターンを得ること。若者支援を経営的な視点でとらえることで、新たな可能性があるのでは? と気づいたんです。そうして、帰国後の2001年、「育て上げネット」を立ち上げました。

日本は働けない人へのラべリングが強い

2004年当時、「フリーター」「ひきこもり」という言葉はありました。でも、両者の中間の「家から出られるんだけれど、働けない人」もいるのではないか?と考えていた矢先に、新聞が「ニート」という概念を世の中に提示しました。ちょうど、育て上げネットを法人化したときだったので、メディアにも多く取り上げられ、ニート支援団体として認知された気がします。
現在、相談者の約6割が「働く自信をつけたい」「社会性を身につけたい」といった目的で、育て上げネットを訪れます。そもそも日本は、働けない人へのラべリングが強い風潮があります。働いていない=何もしてない、怠けていると思われてしまう。本人や家族も「いい年なんだから、もう働いていなければならない」「正社員でなければならない」「親にもう迷惑を掛けられない」といった心境が膨れ上がって、追い詰められてしまうのでしょう。

幸せな状態で働き続けていくことを支援する

私たちの団体は、「夢(やりたいこと)に向かって、突っ走れ」という考え方よりは、もっと現実的に「どうしたら働けるようになるか」「よい形で働き続けられるか」ということを探っていきます。そのためには、インターンシップを含めた体験・経験を中心に、若者ができることを、納得度の高い状態に絞り込んでいきます。
就労支援の根底にあるのは“幸せな状態で働き続けて欲しい”という願いです。ただ単に、労働市場に押し込むのではなく、継続して働き続けることに基点を置いています。

若者から子供へ。より低い年齢から支援を

今まで十数年間、無業、ニートやひきこもり状態の若者を支援をしてきました。これは川の流れに例えると、若者支援の下流部分。問題を抱えた状態でお会いしています。これからはアンカーを就労支援に置きながら、より上流にさかのぼって、もっと低い年齢層からの支援に力を入れたいと思っています。
教育支援事業もその1つ。学校と就業の狭間に落ちやすい若者と出会うには、学校内外のどちらにもいて、在学中から支援したほうが効果的。現在、約100校の高校と連携して、高校生を支援をしています。キャリア教育や金銭基礎教育など単発の講座もあれば、高校内で支援スタッフが「場」を運営するものもあり、やり方は多様です。
また、小4から中3までの子供たちの学習支援も行っています。決して「生活困窮家庭の子供保護のためにやっている」とは言いません。支援が必要な子供だけを集めると、ラべリングになってしまいますから。あくまでも学習支援として行っています。
最近は、ルーツが外国にある若者・子供も増えています。多文化と自然に交わることができる素養が、支援する側にも求められます。多様な人達に寄り添える人材育成が、目下の課題です。

 


学習支援:学習に加え、企業訪問やサマーキャンプを実施している


PCスキル研修:利用者ニーズに合わせて少しずつプログラムを拡充している

 


教育支援:学校に出向いてのワークショップなども展開している


スタッフ写真:多様な年代、バックグラウンドを持つスタッフの存在