とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

アートを通じてこどもとママを開放 被災地の復興を応援。
戸口朱美(とぐちあけみ)さん

プロフィール
戸口朱美(とぐちあけみ)さん

セツ・モードセミナーを卒業後、フリーのイラストレーターとして活躍。結婚後、渡米。帰国後、子育てをしながら絵画講師として多くの子供たちに関わる。その後児童館勤務を経てこどものアトリエ「ひつじぐも」を設立。表参道、さいたま市を中心に活動を行う。2014年よりボランティアとして気仙沼サンマフェスティバルに参加、現地の子供たちのための20メートルの魚を描くワークショップを継続して行っている。

1歳から参加できる「ベビーアーティストクラブ」を開催

 表参道やさいたま市の浦和で1歳から参加できるこどものアトリエ「ひつじぐも」を主宰しています。以前は、小学校の受験向けの絵画講師をしていましたが、自分の子供も大きくなり、これまでの子育て経験を生かした「赤ちゃんとママが楽しんでくれるワークショップ」を作りたいと思いました。スタッフには私の考えに賛同してくれた息子の恩師である小学校の先生や古くからのママ友、ボランティアで参加してくれる若い保育士さんとたくさんの人の輪が繋がっています。いつもどんなお子さんが来てくれるかしらと楽しみにしています。ちょうど1歳になったばかりのお子さんも参加してくれました。1歳代のお子さんは、ローラーや刷毛、自分の手に絵の具をつけて絵を描きます。毎回、季節に応じたテーマをお伝えしますが、その日の子供たちのインスピレーションを大切にしています。その月齢だからでてくる大胆さ、大人の思う絵を描くことに捉われない豊かな表現に毎回驚かされています。自宅で絵の具を使うことに抵抗がある方には、このクラスで思う存分、こどもに絵の具を使わせてくださいと伝えています。小さなお子さんが使う絵の具ですので、安全面を重視したものを選んでいます。 「うちの子は絵が下手なんです。」と言われるお母さんがいらっしゃいますが、どの子の作品もお子さんの気持ちがたくさん描かれていてどれも素敵です。お母さん達は、絵を描くことに固定観念がある方が多いですね。白い画用紙をお渡ししたら、全ての面に平らに塗る方もいました。絵は感じたまま、もっと自由に、絵を描くことで大人も自分を開放して欲しいと思っています。小さなお子さんの育児中は、お母さんは毎日の生活に大忙しで、余裕のない日々が続きます。私もそうでした。ひつじぐもの時間が、お子さんもお母さんもほっとできる時間になって欲しいです。

ベビーアーティストクラブ 1歳のお子さんが、刷毛や手を使って思い思いに画用紙に描いていく。


花や魚を触って感じて描く 「五感をひらく」

 ベビーアーティストクラブは3歳までの子供たちのワークショップです。3歳をすぎても通えるクラスを開いてほしいという要望があり「五感をひらく」を開講しました。このクラスは、描く対象物をさわったり、においをかいだりなどをしてから絵に取り組みます。ある時は、まるごと1匹の魚を用意して、鱗のザラザラ感や、エラを開いてみたり、目を触ってみたりと、子供たちは興味深く魚を体感、観察してから絵を描きます。いろんな魚の名前をみんなであげていき「絵の対象」を全身で感じていました。このような体験は身体の中に残ります。お買い物や親子で過ごす日常生活のふとした時に「五感でひらく」の経験を思いだしてくれたらとてもうれしいです。

「面倒くさいこと」を楽しもう

今はとても便利な世の中になっていますが、「面倒くさいことは面白い」とも思っています。すぐにできてしまうものは、その分すぐに飽きます。面倒くさいなと思いながら時間と手をかけたことは、記憶に残ります。子供を育てることは大変なこともたくさんありますが、あっという間なんです。親子共に過ごした時間は、いい思い出になりますよと、教室に参加してくれるお母さん方にお伝えすると、少し先のことを思われてほっとされる方もいますね。

復興支援「気仙沼サンマフェスティバル」  子供たちへ夢のタネを~

 宮城県気仙沼市に学生時代からの友人が住んでいます。2011年3月に起こった東日本大震災の際は、震災から3カ月後の5月にやっと友人と電話が通じて安否の確認ができました。「現地で何かできることがないか」。私にできるのは「絵」を通じた支援だと思い、様々なところに掛け合いましたが、現地は子供の数が減っている、復旧で手一杯。絵のワークショップを受け入れられないと断られ続けました。わたしにできることはないのかと肩を落としていた時期もありました。ある時、震災の翌年から開催されている気仙沼サンマフェスティバルのことを知りました。すぐに事務局の方に連絡をしたところ「子供が遊べるものを探していました。ワークショップをやっていただけるのはとても助かります」とお返事をもらいました。そして2014年秋、美大に通う息子や友人たちの4名で気仙沼に向かいました。現地では長さ20mの白い生地に子供や大人が思い思いに魚の絵を描きました。皆さん絵を描いた後に「ありがとう。」って言われるんですよ。その感謝の言葉に、私の方が大きなものをいただいたように思います。次の年には、私の教室に通うご家族が、自ら名乗り出てくれて、ボランティア活動に参加したいと、さいたまから駆けつけてくれました。震災から5年が経ちましたが、現地はまだ復興途上です。気仙沼フェスティバルには、学生や仲間を募って継続して参加したいと思ってます。
 今年の春にさいたま市で子供たちに20メートルの生地に絵を描いてもらいました。その布をバッグにして気仙沼の図書館に送る計画もしています。今後も絵を通じて気仙沼との交流をもっと増やしていきたいですね。


気仙沼サンマフェスティバルの様子。長さ20mの白い生地にいろいろな絵の具を使って、大人も子供も思い思いに魚の絵を描いた。



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