とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

プロヴァイオリニストの本格クラシックを赤ちゃんとママに届けたい。
田島華乃(たじま かの)さん

プロフィール
田島華乃(たじま かの)さん

プロヴァイオリニスト。3歳からピアノ、4歳からヴァイオリンを始める。桐朋学園高等学校音楽科、同大学音楽学部を卒業。全日本藝術音楽コンクール第2位などを受賞。都内のプロオーケストラでの公演をはじめ、様々なジャンルのコンサートに出演。2014年「音の家 otonoya」を設立。おやこカフェやレストランなどで赤ちゃんとお母さんが気軽に楽しめるコンサートを開催。リピーターも多い。

0歳の赤ちゃんも集中 ヴァイオリンの生演奏でお母さん達も笑顔に

 プロヴァイオリニストの田島華乃さんがヴァイオリンの弓を静かに引くと、会場には艶やかでリズミカルな音色が響いた。この日の1曲目は「山の音楽家」。目をまんまるにしながら、ヴァイオリンの音を「なんだろう?」と聴く赤ちゃん達。歩き始めの子供が田島さんのそばに寄ってじっと演奏に聴き入る。しばらくすると田島さんは、ゆっくりと親子の間をまわり、赤ちゃんの顔の近くでヴァイオリンを奏でる。お母さんも子供も満点の笑顔になる瞬間だ。
「毎回、お子さんとお母さんが笑顔になる瞬間に立ちあえて、とてもうれしいです」と語る田島さん。


ほっくる音楽館。0歳から未就学児の子どもと一緒に聞けるとあって、毎回ランチタイムからの予約でいっぱいに



 小さな子供達に本格的なクラシック音楽を届けたいと、田島さんは2014年4月「音の家 otonoya(以下音の家)」を立ちあげた。現在は東京都内のおやこカフェや、レストランなどで気軽に参加できる親子向けコンサートを開催。この日取材で訪れた「ほっくる音楽館」は、日に3度の演奏(1回15分間)を行い、予約でいっぱいになることも。リピーターも増えているという。


 今のような親子向けのコンサートを行おうと思ったのは、ドイツにベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聞きに行ったことがきっかけです。ゲネプロ(本番前の通しリハーサル)を見られると聞き、会場に行くと、舞台前の席を幼稚園生が埋めつくしていました。子供達は、目の前でプロの演奏が流れる中、踊ったり、リズムを取ったり、指揮者のまねをしたりと自由に体を動かしながら演奏を聴いています。日本では考えられない光景にとても驚きました。お客さんや演奏者も子供達の様子を自然に受け止めていて、その場はとてもあたたかい雰囲気で満ち溢れていました。

 元々親子コンサートの演奏を行っていましたが、音はマイクを通じたもの、席も舞台から離れ、子供は席に座るか、親のお膝で静かに聴くのが当たり前。ドイツのゲネプロのように日本でも子供達がプロの演奏を間近に聴くことができたら……と、「音の家」を立ちあげ、本格クラシックが聞ける親子向けのコンサートを始めました。


「ヴァイオリンの音って気持ちいいね」演奏にすっかり夢中な赤ちゃんとお母さん


ちびヴァイオリン体験で、楽器を身近に感じて欲しい

 当初は「子供に本格的なクラシックを届けたい」という思いで始めましたが、回を重ねる内に、お母さん達も生の演奏を聴くのを楽しみにしていることが分かりました。久しぶりに生演奏が聞けてよかった、うれしかったと言われたことが何度もあります。ヴァイオリン単独での音を間近で聴くのは、初めての方も多いですね。お母さん達も演奏を聴くと、心がゆったりするのでしょうか?だんだんと笑顔になってきます。お母さんの気持ちがゆったりすることでお子さんも落ち着いて音楽が聴いてくれているように感じます。


コンサートでは必ず「ちびヴァイオリン体験コーナー」を設けています。3歳位のお子さんが使う1/16サイズの本物のヴァイオリンを私が演奏した後、親子で弾いてもらいます。もちろん初めての方でも、赤ちゃんでも大丈夫です。お母さんがヴァイオリンを持ち、お子さんに弓を持たせて、私が弓に手を添えて音を出します。音でヴァイオリンが振動するのに驚く子や、目をぱちくりしてじっと弓を見つめる子、赤ちゃんはヴァイオリンをなめたりしますね。なかなか触れることが少ない楽器なので、子供の時に少しの時間でも体験する機会を持てればと始めました。コンサートやちびヴァイオリンの体験をしたお子さんが、ヴァイオリンのレッスンを始めることもあり、少しずつですが、音楽の輪が広がっていると感じています。



ちびヴァイオリンの音にびっくり 小さくても音は大人用と同じ



自分の手で音が出せるよ!



ヴァイオリンの弓の動きもじっくりと見いる双子の姉妹


コンサートでは、大きな絵本を朗読して演奏したり、わらべ歌を取り入れるなどし、その中に必ずクラシックの曲を1曲演奏しています。子供の頃に、本物の音を聴く体験を重ねていくことは、お子さん、それを見守るお母さんにとって豊かな経験につながると思います。コンサートで私が、本気でヴァイオリンを弾いている姿を見て、演奏の真剣さを子供達も感じ取っているのが伝わってきますね。


「音の家」の拠点を持ち、子育て中の演奏者と活動を広げたい

今は都内を中心とした活動ですが、出張演奏も行っています。将来的には、「音の家」の拠点となる場所を持ちたいですね。いつでも楽器の音が鳴っている、ふらりと立ち寄って生演奏が楽しめる、いろんな楽器が自由に触れる場所になればと夢は膨らみますね。子育て中のお母さん演奏家で、活動を控えめにしている方も、「音の家」の活動を一緒にできたらいいなと思っています。さらに共感できる仲間を募って活動を広げていきたいです。


HPアドレス http://otonoya.jimdo.com/



レッスンを受けているお子さんと田島さんのアンサンブル。
会場から大きな拍手が鳴り響いた