とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

祖父母と娘息子世代の架け橋に。祖父母力で孫育てを応援
NPO法人孫育て・ニッポン 棒田明子(ぼうだあきこ)さん

プロフィール
棒田明子さん

NPO法人孫育て・ニッポン理事長。NPO法人ファザーリングジャパン理事。「3・3産後プロジェクト」リーダー。自身の出産後、子どもや家庭の状況にあわせて、育児雑誌、医療系編集、育児サイトの立ち上げ、運営、企画会社など転職を多数。2011年NPO法人孫育て・ニッポンを設立。全国各地で「孫育て講座」や行政との共同プロジェクトを行う。また、産後ケア、多世代交流を中心としたまちづくりなどの調査、研究に携わる。男の子二人の母親。


娘息子世代と祖父母世代の「育児」世代間ギャップを埋めたい

 出産が活動を始める大きなきっかけです。夫の実家は自営業、私の両親は共働きで、共に働く親を見ながら、私は祖母と同居の中で育ちました。子どもの頃は祖母にお世話をしてもらっていたので、祖母がいる状況は自然なことでした。最初の子育てを両家の祖母が協力してくれたことは、精神的にとても助かりました。当時、「里帰り出産で実母とうまくいかず早々に帰ってきた」と話すお母さん達が多かったことや、平日はお母さん一人で育児に奮闘していることなどを聞いて、自分の子育て環境とずいぶん違うと感じていました。

 第一子出産後に日本マタニティビクス協会(現(社)日本マタニティフィットネス協会)の協会誌などの編集をし、妊娠や体の仕組みについて詳しく知る機会もありました。

 その後に就いた育児雑誌の仕事で、情報は年々進んでいるのですが、それが育児世代、祖父母世代に伝わっていないことも実感しました。育児サイトを立ちあげ、お父さんとお母さん、祖父母が書きこみ、見ることのできる「かぞくの掲示板」を作りました。赤ちゃんの成長記録や服のサイズなどのデータや写真を掲載でき、情報共有の場になりました。祖父母がサイズの変わりやすい孫の服を買う時に参考になったと聞いています。

 インターネットが普及するにつれて、ママ友や母親に聞くようなささいな悩みを掲示板に書きこむ人が増えてきました。お母さん達が、ネットの情報を一番頼りにしているという育児環境の閉塞感を感じ、お母さん達をフォローして欲しい祖父母に向けた発信がないことに気づきました。東日本大震災で大きな被害のあった岩手県大槌町で、震災前に講演したことも心を大きく動かし、「今、動かなくては」と子育て世代と祖父母世代の架け橋になりたいと、孫育て・ニッポンを2011年9月に設立しました。


震災後、大槌町を訪れ、子育てサークル「ひだまり」を立ち上げ、サポートを続けている。避難所に宿泊した経験や現地での活動から防災講座の講師も務める


社会的要因の影響を大きく受けた今の子育てを知ろう

 「孫育て講座」は、孫がいる方向けに行っています。沐浴やおむつ替えなどの実務的なことではなく、祖父母の方が子育てをしていた頃と社会的背景が大きく違うことや、育児世代とのコミュニケーションのコツをメインにお話します。「今の子育ては!」、「うちの娘(息子)、嫁(婿)は!」と話し始める方がいますが、それはお母さんやお父さん個人のせいではない。便利で効率的な社会的な要因から起こっていることを、時間をかけてお伝えしています。インターネットが普及して、コミュニケーションは対面ではなくメールが主になってきたこと、電子レンジだけで食べられる火を使わない料理が手軽に手に入ること、車社会で外を歩くことが減ったことなど、便利な世の中だからでてくる影響、その中で育児をしている今の子育てを考えて欲しいと言うと、はっとされる方もいますね。

 母乳とミルク、抱き癖などの昔とは変わった今の子育て情報は、クイズ形式で資料に盛り込み、例えば共働き世代が増えているなどデータがあるものは、講座内でお見せしています。以前ある市町村の調査で、自分の子どもが初めて抱く赤ちゃんという人の割合が4分の3という結果がでています。今のお母さん達は、赤ちゃんと触れ合う機会がほとんどないまま育児をスタートします。そして赤ちゃんはすやすや眠るもの、泣かせてはいけないと信じている人もとても多いです。高齢出産の増加で母体の回復が遅く、産後、祖父母や家族以外の協力がますます必要な家庭も増えています。

 「祖父母の私達は何ができますか?」というご質問には、ひと昔前は当たり前だったこと、例えばご飯をみんなで一緒に食べることや、ゆっくり外をお散歩することなど、そして頑張りすぎないことをお話しています。つい可愛い孫のことを頼まれると何でも引き受けたくなりますが、孫が帰った後、数日間寝たきりにならないように(笑)、ご自身の時間も大切にしながら、みんなで孫育てをしていきましょうとお話しています。


産後3カ月を社会でサポートする「3・3(さんさん)産後サポートプロジェクト」

 日本では産後1か月間は、産後の母体を休ませる習慣がありますが、私達は産後3カ月までは、家族、地域、企業など社会でサポートしていこうという「3・3(さんさん)産後サポートプロジェクト」を進めています。これは、里帰りから帰った後、お母さんと赤ちゃんが二人っきりで過ごす時間が10時間以上の割合が61.4%という調査結果(※2)から、多くのお母さんが赤ちゃんのお世話を毎日1人で担っていることがわかりました。初めての育児不安や産後のホルモンバランスの変化などから、産後うつを発症する率も増え、時に虐待などの悲しい事件になる場合もあります。

 「産後サポートの必要性と期間延長を伝え、ママと赤ちゃんの笑顔を増やす」ことをミッションに、家族は、産後女性の身体などの知識習得や祖父母も含めたサポート体制を早めに計画する、企業はお子さんが生まれた男性社員の育児休暇や最低生後3カ月までは定時退社を促す、孫育て休暇の導入などを進めるよう、講座や研修などを行っています。


取材場所のシェア奥沢。地域に開かれたコミュニティサロンで、棒田さんの講座開催場所のひとつ。「奥沢は、若い頃から仕事などでよく訪れ、ホッとする場所です」


地域で子ども達を育てる「たまご(他孫)育て」のすすめ

 一人っ子同士の夫婦から生まれた子どもには、いとこがいません。親に兄弟姉妹がいても、結婚していない、子どもがいないこともあるので、いとこがいない子どもが多いです。そうなると、子どもの周りには大人ばかり。子ども同士が触れ合うことや、大人も子どもと出会う機会が減っています。まずは両隣にいる子ども、地域の孫に目を向けようと「たまご(他孫)育て」をおすすめしています。北区では「まち・人・くらしサポーター研修」という地域の人が子育てや高齢者の知識などを学び、多世代交流の場作りの運営やサポートする人材育成が始まりました。講座で学んだ後、その方が暮らす地域で「たまご」を通じたつながりが進むようになるといいですね。
 また、海外の孫育て事例も集めています。子育てに手厚い支援がある国でも孫育てはこれからというところもあります。日本の孫育てをぜひ世界に広めていきたいですね。


NPO法人孫育て・ニッポン
http://www.magosodate-nippon.org/


取材場所提供:シェア奥沢
http://share-okusawa.jp/


※1 参考資料
内閣府男女共同参画局
男女共同参画白書(平成27年度版)本編Ⅰ第2章第9図 共働き世代数の推移より
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-09.html

※2 2015年育児情報誌『miku』&NPO法人孫育て・ニッポンの調査より