とうきょう子育てスイッチ 共育者インタビュー

完璧なお母さんはいない。育児漫画や講演会でお母さん達を応援。 育児漫画家 イラストレーター 高野優さん

プロフィール
高野優さん

高野優さん
育児漫画家・イラストレーター。長女の妊娠・出産をきっかけに育児漫画家として活躍。育児に関する講演会で全国を駆け巡る。著作は40冊以上。「思春期ブギ」(ジャパンマシニスト社)、「よっつめの約束」(主婦の友社)など。2009年4月~2011年3月までNHK教育テレビ「となりの子育て」の司会。2015年ベストマザー賞受賞。大学・高校・中学生の三姉妹の母。

長女の妊娠・出産体験から「面白い、楽しい育児漫画」に取り組む

 実は私、子供がとても苦手でした。ところが妊娠したら自分の体の変化が面白くって、長女が生まれたら、毎日の成長に驚きの連続でした。生まれたばかりの赤ちゃんは、まつげがなくて、少しずつ伸びてくるのを見るのが、楽しくって仕方がない。そんな妊娠、育児話を知り合いの編集者に話したら、その体験を育児漫画にしたらと勧められて、なんと20年後の今も描き続けています。育児漫画を描き始めた時に決めたことは「育児の面白いこと、楽しいことを描く」こと。育児は大変で辛いこともありますが、面白いことや、くすっと笑っちゃうこともありますよね。お母さん達がお子さんのお昼寝時間に私の漫画を読んで、笑って、リフレッシュできたらいいなと、我が家の三姉妹のエピソードなどを描いています。


高野さんの講演会風景。話しながら次々にかわいいイラストが登場。会場が一気に和む


育児をして分かったことは「子供を枠にはめるのはナンセンス」なこと。3姉妹は、一人ひとり個性が違います。季節に例えると、長女は夏、次女は冬、三女は真夏ですね。長女は、家でも私より姉妹の面倒を見ていて、ガールスカウトのリーダーのようなタイプ。東日本や熊本の震災時には援助活動に志願して行きました。次女は、生まれつき筋力が弱くて、療育に通っていた時期もありました。小さい頃からずっと保育士になりたいという夢を持っていて、高校卒業後は保育士の学校に行くことが決まりました。三女は、サッカー命の子で、女子サッカーのチームで汗を流しています。目立ちたがり屋な面もあって、楽譜が読めないのに合唱コンクールで指揮者になりました。三姉妹が通った保育園の先生と今も付き合いがありますが、先生に次女のことで相談した時に「遅いのも個性、泣くのも個性」と言ってくれたことが、私の支えになりました。子供の個性を親が決めるのではなく、子供が持っている個性を伸ばしていく、見守ることが私の役目だと思います。


笑いと時にじんわりする時間 イラストを描きながらの講演会スタイル

 講演会で、全国各地の自治体、保育園、幼稚園、小学校などに伺いました。絵を描きながらの講演会スタイルは、忙しい中、やりくりして来てくれたお母さん達に、楽しい時間を過ごして欲しいと思って試行錯誤しながら、はじめたものです。乳幼児のお母さん向けの講演会には、できる限り託児をお願いしています。それは私が2歳の元気な長女の育児でヘトヘトの時に託児付き講座に助けてもらったから。託児をお願いしたお母さんには、子供のお迎え時には子供にありがとうと、託児者にお礼をと伝えています。育児はひとりではできない、サポートの方がいてこそです。ご自身のお子さんが大きくなったら、この体験を思い出して、次の世代にお返しできるといいですね。



長女の様子を話す高野さん。「育児の冒険という川を共に渡っていた長女が、成人を迎えて、気が付くと巣立っていた。少し寂しいですね」


 講演会をはじめてから、参加者から聞く育児の悩みベスト3はずっと変わりません。1位はママ友との付き合い、2位は兄弟関係、3位は子供にイライラしてしまうです。

 子供にイライラする自分を責めるお母さんも多いのですが、そもそもお母さんはイライラしちゃだめなのか?と私は思います。イライラは押しつぶさなくていいんです。その気持ちをどうもっていくかを考えてみることをおすすめします。朝の登園で子供の準備が遅く「早くして」とイライラすることありますよね?想像して欲しいんですが、80センチの子どもが、約2倍の160センチの大人に見下げされて怒られることを。私は、早く靴を履いて欲しい時、あえて子供に「ゆっくりでいいよ」と声をかけていました。大人と同じペースでできないのは当たり前。焦らず、一つひとつやっていきましょう。

 皆さん学生時代どんなお子さんでしたか?成績優秀?運動神経抜群?全て完璧だったことはないですよね?でもお母さんになった瞬間から「完璧なお母さん」が求められることが本当に多いです。「完璧なお母さん」はいません。忘れ物したり、ミスしたりする等身大のお母さんでいいんですよ。


絵本『よっつめの約束』に込められた「泣いていいんだよ」

 絵本『よっつめの約束』は、父親が亡くなった子供達のことを描いた絵本です。数年前に夫が病気で亡くなり、毎日泣いていました。その後、東日本大震災が起こって、体育館に避難されている様子をテレビで見ました。段ボールで仕切られた体育館で過ごす大人や子供達。「家族や知り合いを亡くしているこの人たちは一体どこで泣いているんだろう?」と思うと「描きたい」気持ちが溢れてきて、絵本の企画を持ち込みました。メッセージは「泣きたい時は、泣いていいんだよ」。ご紹介もたくさんいただき、感謝しています。

 子育ても長女が20歳になり、次女、三女の成長もあり、育児はひとやま超えた感があります。ベビーカーにたくさんの荷物を積んで公園に行ったこと、自転車に荷物と子供を乗せて買い物をしたこと、子供達からの抱っこ攻撃も懐かしい思い出になりました。子供が小さくて大変だった時に手を差し伸べてくれた方のように、これからは、私がお返しする番です。今のお母さんたちの精神的に負担になっている荷物を持てるようになりたいです。よく言われますけど、小さい子供の育児は本当にあっという間です。大変な毎日ですが、その時に味わえる子供との楽しい冒険をぜひ楽しんで欲しいです。


*高野優さんから、とうきょう子育てスイッチ読者のためにオリジナルメッセージを描いていただきました。

ブログ:http://www.take.cside5.jp/alamode/blog/