新宿の子どもたちの成長を支え、見守り、教育する

NPO法人 みんなのおうち(新宿区)

NPO法人 みんなのおうち 代表理事・小林普子


プロフィール


NPO法人 みんなのおうち 代表理事・小林普子

2003年「特定非営利活動法人みんなのおうち」設立、2007年「外国ルーツの子どもの学習教室:こどもクラブ新宿」を立ち上げ、現在に至る。新宿区を拠点に子どもと子育て支援、外国ルーツの家庭及び子ども支援のボランティア活動に従事している。

新宿で暮らす家庭・子どもたちをサポートしていこうと発足

「みんなのおうち」立ち上げの経緯を教えてください。

新宿は地域コミュニティーが無く、子育てを人に頼りづらい町です。「みんなのおうち」は、そんな新宿という都会で子育てをし、子どもを通して関わった人たちがお互いに助けあい、地域コミュニティーが再生されればいいなという思いから始まりました。

「みんなのおうち」では外国にルーツを持つ子どもたちの支援も行っています。もともとボランティアで地域の児童館や新宿の子育て支援団体の立ち上げに関わっていたこともあり、外国人の子も日本人の子も関係なく、新宿全体の子育てをサポートしようと立ち上げました。これまで拠点場所の確保などで苦労したこともありましたが、区や企業の助成にも支えられ、「みんなのおうち」の運営は今年で13年目になります。

毎日の活動で子どもの成長を支える

みんなのおうちでは”居場所「みんなのおうち」”を運営していますね。詳しく教えていただけますか。

”居場所「みんなのおうち」”は、地域の子どもたちが利用できる施設で、毎日17:00-21:00まで開いています。そこで勉強する子もいますし、家に居場所がない子にとっては、ゆっくり過ごせる場所にもなっています。月曜・金曜は学習サポートができるボランティアさんが来てくれるので、勉強でわからないことがあれば教えてもらうこともできます。

私たちはそこに集まった子どもたちに毎日接しながら、非行をしていないか、虐待を受けていないかなどをチェックします。また親が忙しく子どもに目が行き届いていないと、子どもは生活に必要なことを学ぶ機会がありません。そのような子どもたちには、料理や掃除などの生活面、金銭感覚など日常的な生活のルールも教えています。

子どもたちが自習している様子
子どもたちが自習している様子


居場所「みんなのおうち」で子どもたちを見守っているのですね。

そうですね。この施設のメリットは、毎日開いているので子どもたちの変化がわかりやすいという点にあります。子どもの様子を見て問題を抱えている可能性がある時は、本人に直接話を聞くことができます。

愚痴をこぼすときには、そこに問題があるのかないのか判断します。そして、学校や行政に伝えなければいけないことは伝えて、対応してもらいます。親御さんに話したほうがいいときは、来てもらって話をします。例え時間外でも、対応できるときはなるべく対応するようにしています。

こども食堂も開いていますよね。

寄付や援助などで食材を集め、こども食堂を毎日開いています。最初は毎日こども食堂を開くつもりはなかったのですが、活動の中で、温かい食事を食べていない子や、親からお金をもらってコンビニのお弁当やファーストフードで済ませてしまう子、家族の団欒がない家庭の子どもがすごく多いということがわかったのです。

印象的だったのは、レトルトのカレーしか食べたことがない子どもがいたことです。「カレーって作ることもできるの?」と驚いていました。こども食堂では、食事の準備を手伝ってもらうこともありますし、食後の片付けは子どもたちにやってもらいます。そうすることでゆくゆくは自立して、社会生活ができるようになってもらいたいです。

食堂の誕生日会
月に一度行われるこども食堂の誕生日会。子どもたちはこの日を楽しみにしている。


人間関係を学ぶための教育や、外国にルーツを持つ子どもに特化した活動も

映像制作事業について教えてください。

中高生以上を対象に、年に一度映像制作のワークショップを開催しています。この活動は、始めてから10年以上たちます。どこで撮影するのか、誰が撮影して、誰が出演するのか、子どもたちがグループになってそれぞれ考えながら制作していきます。つまり、一つの作品を作り上げるというプロセスに重点を置いているのです。大学や専門学校の先生に指導をしてもらいますが、編集も先生方に教わりながら自分たちで行います。映像制作をやり遂げると、みんなすごく仲良くなり、絆が深まります。映像を制作する過程で、子どもたちに人間関係の築き方を学んでもらいたいのです。

「こどもクラブ新宿」について教えてください。

こどもクラブ新宿は、外国にルーツを持つ小4〜中3までの子どものみを対象に、学校の勉強や日本語のサポートを行っています。どの子どもも日本語会話は問題がないのですが、読み書きや教科書の内容が理解できないことが多いです。現在は30人以上の子どもたちをみていますが、ボランティアの数が足りず、何名か待ってもらっている状況です。

こどもクラブ新宿
「こどもクラブ新宿」での学習風景。


子育て支援団体と協働して、活動を広げる

みんなのおうちでは、どのような団体と協働していますか?

新宿区が管轄の「子ども総合センター」と共に、子どもの学習支援を行っています。新宿区では、低所得者の中学生以上の子どもたちに対して、塾に委託して学習支援をしています。私が運営する「みんなのおうち」でも小4から学習支援を行っていますが、その活動の中で、低学年から支援する必要性を感じました。そこで総合センターと協働して、低学年からのサポートを始めることにしました。はじめは小規模で行っていましたが、今では6つの子ども家庭支援センターで、低学年に向けた学習指導教室を運営し、そのうち2カ所を「みんなのおうち」が担当をしています。その中で外国にルーツを持つ子どもに関しては、4年生から「こどもクラブ新宿」に移動してもらっています。

また、「新宿・子どもネットワーク」とも連携しています。新宿・子どもネットワークは、新宿でこども食堂を運営している7団体がネットワークを作って、情報交換や、こども食堂の食中毒対策などを行っています。食材をもらったらみんなで分けることもあります。また他の団体に、外国にルーツのある子どもで支援が必要な子がいれば、「みんなのおうち」で引き受けることもあります。情報交換をしながら、お互いにメリットを共有しています。

今年からは子どものキャリア教育も開始

今後の目標や活動予定について教えてください。

「こどもクラブ新宿」を卒業した子どもたちはこれまで150人以上になりますが、嬉しいことに高校中退者はほとんど出ていません。しかし、卒業生の6割が正規職員についていないという問題があります。その原因は、親が単純労働などについているケースが多く、正規職員で働いていないことにあります。親がそのような働き方をしていると、その子どもたちは正規職員で働くことのメリットを知る機会がありません。さらに貧しい家庭の子どもは高校の時にアルバイトをしますが、高校卒業後もそのままアルバイトで働き続けてしまうことが多いのです。しかし、本人たちはそれが問題であることがわかっていません。非正規だと健康保険にも入れないから病院にも行けません。活動の中でこの問題が浮き彫りになり、子どもたちにキャリア教育の必要性を感じました。正規職員で働くという意味や、日本の社会で生きていくためにはどのような法律的知識が必要なのか。労働者として働く時に交わす会社との契約内容などを含め、教えていく予定です。

今年は中央ろうきんの「若者応援ファンド」から助成金をもらえることになりました。その助成金を使って、中高生やフリーターとして働いている子どもたちにキャリア教育をし、この問題を解決していきたいです。外国人の労働問題を扱っている団体にも声をかけ、協力して活動を進めたいと思います。

職業体験をしたことも
SHAKE SHACH(シェイクシャック:ハンバーガーショップ)で職業体験をしたことも。開店の準備や接客を学び、いきいきと仕事に励んでいた。


子どもたちのために、精力的に活動していますね。

赤ちゃんの時に必要なサポートと、小学校に入ってから必要なサポートは違いますよね。「みんなのおうち」に来る子どもたちもそれは同じで、成長とともに必要なサポートが異なります。家庭で子どもをサポートするのが難しい場合は、私たちが子どもたちをサポートしていきたいと思います。


NPO法人 みんなのおうち(一部写真除く)
https://minnano-ouchi.jp/