とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

協働の力を活かして、地域で子ども達を守っていきたい

ママリングス(江東区)

落合香代子さん

ママリングス 代表 落合香代子さん

看護師・不妊カウンセラー。看護師として、子育て訪問支援、産婦人科外来勤務、育児電話相談ダイヤルなどに携わる。地域のつながりイベント「秋のこどもまつり」、「亀戸フェスティバル」や児童虐待予防の啓発「ゆる育児キャンペーン」、スウェーデンのたたかない怒鳴らない子育て「ポジティブ・ディシプリン講座」( 公益社団法人 Save the Children監修)、などを企画・開催。2016年11月に江東区行政と協働事業にて、江東区初の「こうとう子育てメッセ」を企画・運営。お子さん二人のママ。

自身の経験から、子育ての問題と子ども虐待予防を地域から発信する

ママリングスの立ち上げや、江東区で子育て支援活動をはじめるきっかけを教えてください。

落合さん:私は看護師として病院で勤務し、現在は、子育て相談ダイヤルで子育て相談員をしています。元々は高齢者看護に従事し、決して母子保健が専門ではありませんでした。

現在、私が専門分野を変えて地域の子育て支援に関わっているのには大きなきっかけがあります。その頃、私は看護師の仕事を退職し、結婚後ようやく授かった子どもの子育てをしていました。ある日、子どもをベビーカーで散歩中に幼児虐待の場面を目にします。

目にした時、歩道にある何かを激しく蹴りつけているその人の激しい動きが見えました。よく見ると蹴られているのは3歳くらいの幼児でした。目の前で繰り広げられる凄まじい泣き叫び声と暴言ですぐに「虐待だ!」と気がつきました。

それまでも仕事の中で、子ども虐待対応を間接的にしたことはあっても、大人が本気で子どもに暴力を振るう場面を目にしたのは初めてでした。

暴力や暴言を受け激しく泣きじゃくる幼児を自宅に連れて帰りたい気持ちでいっぱいでしたが、そこでは親に声をかけるくらいしかできませんでした。その時、私は地域の中に、暴力を受けて育っている、虐待を受けている子どもたちがいる、その子どもたちは自分を助けることができない、ということを知りました。私の価値観が180度変わった体験でした。

その後は体も震え、忘れられない日々が1週間ほど続きました。ちょうどその頃、ある刑事事件を起こした少年の裁判がニュースで報道されていました。殺人を犯した少年は子どもの頃に親からひどい虐待を受けていたこと、そのことが事件に影響したと報道されていました。

それを聞いて、虐待を受けていた幼児と犯罪を犯した少年がつながり、すべての子どもが安心・安全に育まれる地域がなければ、子どもは成長してくことはできない、そのために子どもが安心・安全に暮らせる地域が必要なのだと気がついたのです。

それには、子どもを育てている親が安心・安全に子育てができる、親をサポートすることが必要なのだと考え、すぐに赤ちゃんだった我が子を連れて地域の子育てサークルのお手伝いを始めました。そして東日本大震災での子ども支援をきっかけに、2011年3月に子育て支援団体ママリングスを立ち上げました。

赤ちゃん安心カフェ
「赤ちゃん安心カフェ☆0歳からの子育てびより」
0歳児を持つママが気兼ねなく出かけられる場。ベビーマッサージ、ヨガ、整体、アルバムカフェなどの乳幼児を持つママ達がブースを開き、当日参加できる


「地域でつながる 子ども虐待予防」をベースにした共感と楽しいが味わえるイベントを開催

ママリングスではどのような活動をされていますか?

落合さん:団体設立当初は、東日本大震災の子ども支援やその関連イベントを行っていました。ちょうど震災の1週間後に主催を予定していたイベントが中止になり、イベント用に準備した乳児用のサンプル品を被災地へ届けることにしました。

するとすぐに子育て中のママ達や地域の人たちから、保管スペースいっぱいの寄付品が集まりました。物資を寄付してくれた方々自身も大きな地震を体験した身。同じ体験をするとこんなにも共感性が高く、行動に結びつくのだと気づきました。その後も地域で被災地支援のイベントを開催するごとに、地域の人たちに自然のつながりができることを体験しました。地域でつながりを作るには「共感性」と「楽しい」がキーワードだと気づきました。

江東区や墨田区、文京区などの子育て支援団体と協働で「ゆる育児キャンペーン」や地域で「秋のこどもまつり」や「亀戸フェスティバル」、「赤ちゃん安心カフェ☆0歳からの子育てびより」(旧0歳からのゆる育カフェ)などのイベントを開催し、「地域がつながる」・「子育て当事者が子育て支援とつながる」を目指したイベントを行ってきました。そして、北欧・スウェーデンの「たたかない怒鳴らない ポジティブな子育て ポジティブ・ディシプリン講座」の公益社団法人 Save the Children Japanのファシリテーターとして、伝える講座を並行して開催していました。

さまざまなイベントに関わってきましたが、「楽しいイベントに人は集まる」こと、そして参加者の「共感」を得ることで、集客も伸び、参加者の満足度も上がります。そしてイベントには、主催者の意識を入れることも重要です。ママリングスは「地域でつながる 子ども虐待予防」という意識を必ず入れたイベントを行ってきました。

ゆる育児キャンペーン
東京都内で児童虐待防止の啓発活動を行う6つの団体で行った「ゆる育児キャンペーン」


江東区13課が参加 江東区初の「こうとう子育てメッセ」

江東区と協働で開催した「こうとう子育てメッセ」についてお聞かせください。

落合さん:多くのイベントに関わる中で「地域でつながる」ということを体感してきました。そして、子育て支援の現場でなかなか子育て当事者の声が届かない・届ける方法がないと感じていました。

乳幼児期の子育て支援では、「子育て当事者の声を届け、子育て当事者と子育て支援をつなげること」、「子育てのスタート期に子育て当事者に子育て支援情報を届けること」が大切だと考えてきました。

そこで「こうとう子育てメッセ」では、区民公募の子育て当事者が実行委員となり、子育て当事者の意見をメッセに取り入れ、発信する機会にしたいと思いました。行政側にも子育てに関わる課にできるだけ参加してほしいと呼びかけ、江東区役所の13課が参加することになりました。

また、子育て当事者や子育て支援団体の情報だけではなく、歯科医師会、医師会、助産師会、有名産婦人科医の講演も実施し、外国籍の方、シングルペアレント、発達に課題のある子を持つ親、東京都の事業である里親養育体験発表会、そして、子どもと親が楽しむワークショップなどを取り入れ「メッセに来れば江東区の乳幼児の子育て支援情報が全てわかる」イベントを目指しました。これは、「こうとう子育てメッセ」開催の目的として「子どもを地域で守る=子ども虐待予防の啓発」が重要な軸でもあるからです。

また、ワーキンググループという対話の時間も大切にしました。実行委員には、いろんな背景をもった人が集まります。実行委員だけでなく、行政職員、専門職、メッセを盛り上げてくれる出店団体にも目的を共有するため、司会進行のファシリテーター講師を招いたワーキンググループで対話を重ねてきました。

この場があったことで、実行委員それぞれが子育ての現状を知ったり、役割意識が高まったり、何よりも子育て当事者としての声を発信してもらいました。そして、実行委員と行政職員との間で「乳幼児の子育て当事者に子育て支援情報を発信する」目的理解が深まりました。

メッセ当日は、お天気も危ぶまれましたが、約4000人もの来場者がありました。実行委員長、委員は、日々の子育てをこなしながら、時間を作ってイベント準備に取り組みました。メッセの企画が進む中で、365日の子育て情報のワンストップ化を目標にウェブサイト「こうとう子育てびより」が生まれたのもうれしいことです。

「こうとう子育てメッセ」は「子育て当事者の声を発信する」場として、「子どもを地域で守る=子ども虐待予防の啓発」を続けていくことに意味があると感じています。育児当事者の代替わりは必然です。メッセの運営を担う子育て当事者にとっても同様です。メッセをやりたい人が継続できるシステムを今後は作っていきたいと考えています。

こうとう子育てメッセ
昨年2016年の「こうとう子育てメッセ」の様子
実行委員には、乳幼児のママや外国籍のママが活躍。江東区は幼稚園、保育園、子育て支援施設などのチラシ配布やポスター掲示を行い、当日は約4000人もの親子が訪れた



区を超えた協働事例やポイントを伝えたい 江東子育てネットワークづくりに奔走

今年、落合さんは子育て応援とうきょう会議の協働推進コーディ―ネーターに任命されました。コーディネーターとしてやってみたいことなどはありますか?

落合さん:私が今まで経験した区を超えた行政との協働例や子育て団体との協働のポイントなどを、これから自治体との協働や子育て団体同士での協働を考える方や団体にお伝えできればと思っています。

これからのママリングスの展開や想いを教えてください。

落合さん:ママリングスの活動も6年目を迎えました。今は江東区内の子育て支援団体同士をつなぐ「江東子育てネットワーク」を来年2018年に立ち上げる準備に取り組んでいます。ネットワークが立ち上がると、今まで点であった個々の団体活動が、団体同士のつながりを経て活動を一つの面にすることができます。ますます江東区の子育て環境が豊かになることを願っています。


江東子育てネットワーク準備会の勉強会の様子
江東子育てネットワーク準備会の勉強会の様子


こうとう子育てメッセ2017
「こうとう子育てメッセ2017では、パパの実行委員さんも頑張ります」
(ポスターを持つ落合さん)

こうとう子育てメッセ2017
2017年11月12日(日)開催予定
出店団体などは、今後「こうとう子育てびより」サイト内で発表。

こうとう子育てメッセ2017

HP:http://www.homestartjapan.org/

こうとう子育てびより:http://www.koto-kosodate.com/