とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

全ての子供達に感性を育てる参加型クラシックプログラムを届けたい

NPOみんなのことば(新宿区)

渡邊悠子さん

NPOみんなのことば 代表理事 渡邊悠子さん

千葉県出身。上智大学比較文化学部比較文化学科(国際ビジネス専攻)卒業。大学在学中に、生演奏派遣・音楽家庭教師派遣・音楽ベビーシッター派遣を手がける株式会社エルパで1年間のインターンシップを経て、2003年同社代表取締役に就任。当初は大学に通いながら2007年末まで代表取締役を務めた。2008年より1人でも多くの子供たちの感性を育てる音楽との出逢いを提供したいと、2008年みんなのことばの活動を開始。2009年3月特定非営利活動法人化。

「楽器を手にする子供は、武器を手にしない」に共感。全ての子供達に生演奏を体験して欲しい

みんなのことばの活動をはじめるきっかけを教えてください。

渡邊さん:私は大学在学中に結婚式などの生演奏のコーディネート事業や、音楽学校受験生向けの家庭教師を派遣している会社にインターンシップをしました。1年後その会社を引き継ぐことになり、4年間代表取締役として経営に携わりました。ある時、コロンビアのウリベ大統領が「楽器を手にする子供は、武器を手にしない」をスローガンに、音楽で地域の治安維持を行う政策を打ち出したという新聞記事を読みました。ちょうど生演奏の持つパワーや空気感をもっと必要とする人に届けたいと考えていた頃。この記事をきっかけに「未来を作る子供に向けたクラシックコンサートをしたい」と考え、すぐにたくさんの保育園や幼稚園に提案をしましたが「予算がない」と断られてしまいました。ある企業の方にお話ししたところ「スポンサーになるので、ぜひコンサートを開いて欲しい」と、企業の協賛で700名入るホールでの親子コンサートを開催することになりました。コンサートは申込開始直後に満席になり、当日も大成功をおさめました。お母さん達の多くは、子供に楽器の生演奏を聞かせたいと思っています。ですが、チケット代がかかることや、一般的なクラシックコンサートは未就学児の入場が不可なこと、子供の場所見知りなどであきらめてしまいます。企業などから協賛を得て、できるだけ参加者の負担を減らし、子供達が過ごしているいつもの場所で、全ての子供達に生演奏を体験して欲しいと、みんなのことばを立ち上げました。

目の前で繰り広げられる生演奏の様子
目の前で繰り広げられる生演奏に子供達は大喜び!父母や先生達も今まで思っていたクラシックコンサートのイメージと異なる演奏を子供以上に楽しむことも


子供達と一緒にコンサート
音楽家達は、子供達とアイコンタクトをたくさんとり、場の雰囲気をくみ取りながら、子供達と一緒にコンサートを作り上げていく


6歳までの子供達の感性を最大限に育みたい

参加型クラシックプログラム「みんなのコンサート」はどんなコンサートですか?

渡邊さん:参加型クラシックプログラム「みんなのコンサート」(以下みんなのコンサート)は、幼稚園や保育園など6歳までのお子さん向けの「聴く」・「歌う」・「みんなで演奏する」の3本柱を取り入れたコンサートです。子供の集中力がギリギリ持続する45分間に若手のプロ音楽家の四重奏(フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)を取り入れたプログラムをオリジナルで作りました。6歳までとしているのは、子供の感性は6歳までに80%以上が完成し、0~6歳の間は人生の中で特に感性が育つ時期と言われているからです(アメリカの医学者・人類学者スキャモンの説より)。その感性を育てるには、「五感をたくさん使うこと」、「五感を使って感じたことを自由に表現すること」、「仲間や家族と感じたこと、表現したことを共感すること」と言われています。そして「感じたことを表現すること」は、出来事に反応することも含まれています。子供は大きな音を聞くと、びっくりして泣いてしまったり、ぽかーんと口を開けたり、大笑いしたりします。それが表現なのです。その表現や、感じたことをいつも一緒にいる仲間や家族と共感することで、より子供の中で感性が大きく伸びていきます。

ゆる育児キャンペーン


ゆる育児キャンペーン


ゆる育児キャンペーン
どの会場でも、演奏が始まるとあっという間に子供達の笑顔があふれる


渡邊さん:みんなのコンサートのプログラムは、初めにクラシックの名曲を「聴く」、そしてみんなで「歌う」、最後に、音楽家と一緒に演奏をします。クラシックの曲は、TVやCMなどでよく使われる曲を演奏します。四重奏という四つの楽器が同時に音を出すことを初めて聞く子供がほとんどで、びっくりして目が真ん丸になったり、思わず耳をふさいだり、知っている曲だとわかると、体を動かしたり、手拍子が自然に始まります。そして「歌う」では、幼稚園の園歌など馴染みがある曲の生演奏をバックにみんなで歌います。いつも歌っている曲が目の前で楽器から奏でられると、子供達は大盛り上がりで歌い始めます。そして「演奏」。これは、音楽家と一緒に曲に合わせて手拍子したり、床を足で蹴ってみたりと思い思いの音を出します。楽器がなくても大丈夫。音がでれば何でも楽器です。今まで行ったどのコンサートも最後には、子供達と音楽家のエネルギーが室内いっぱいになって、子供達の笑顔や声があふれます。それを見た先生達も感動して、以降、毎年園の行事になったところもあります。

こうとう子育てメッセ
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの大きさ比べ


本物の体験で子供、音楽家、園の先生たちが変わる

「みんなのコンサート」を体験した子供達や音楽家、先生たちの声をお聞かせください。

渡邊さん:子供達にとって、みんなのコンサートはとても大きな経験になっています。コンサート後のお手紙に、音楽家のお姉さんやお兄さんの絵が描かれていたり、兄弟で園に通うご家庭では、兄弟同士、家族でコンサートのことが何度も話題にあがるそうです。音楽家が憧れの存在になって、楽器を始める子もいますね。先生達からは「こういう体験は、大人が気づいて行わないと子供達が出会えないことが分かりました」と真摯な意見もいただいています。音楽家は本当に変わります。みんなのコンサートは、音を出すと目の前で耳をふさがれる、大笑いや手拍子などがそこかしこで起こるという普通のクラシックコンサートとは真逆のコンサートです。しかし音楽家が誰よりも一番楽しんで、遠慮しないでやりきることが大事です。音楽を聴いて繰り出す子供達のパワーは、とてつもなく大きいもの。そのパワーを引き出す演奏を行うには、子供達以上のパワーを演奏に注がなければなりません。音楽家の表情も回を重ねるごとに豊かになり、演奏への意識に変化が生まれ、活動にもいい影響がでています。音楽家は、オーディションで選ばれた私達の理念に共感した方です。今は10名ほどの音楽家が集まってくれています。


ヴァイオリンを弾きながら、部屋を練り歩く音楽家
ヴァイオリンを弾きながら、部屋を練り歩く音楽家


企業のCSRの一環で開く地域向けのコンサートも増やしていきたい

今後の展望などを教えてください。

渡邊さん:みんなのコンサートは、東京都内では現在年70回前後行っています。そして全国、東北復興支援活動も行っています。親子向けのコンサートも企業のCSRと組み、定期的に開催しています。一人でも多くの子供達に、心で感じ、心が動く音楽の体験を届けたい。「コンサートって楽しいな。また聞きたい」と思う子供や大人がもっともっと増えて欲しい。もしかしたら、みんなのコンサートを聞いたお子さんからプロの音楽家が出てくるかもしれないと思うと、とても楽しみです。


2017年の夏には文京区に本社のある文化シヤッター株式会社様の地域への社会貢献の一環として、「親子で楽しむみんなのサマーコンサート」を行いました。子供達がいる環境に囚われず、一人でも多くの子供達が、自分のいる園で、地域で、参加できるみんなのコンサートをたくさん開いていきたいです。

親子コンサートを開催
子育て応援Tokyoプロジェクトで親子コンサートを開催(2015年・2016年)


千葉・フルルガーデンでの演奏
親子、祖父母三世代が楽しんだ千葉・フルルガーデンでの演奏(2015年~2017年)


HP・みんなのコンサート基金:http://www.minkoto.org/concert/supported_concert/

みんなのコンサートを開きたいけど、園の予算が難しい方向けに「みんなのコンサート基金」の利用もおすすめしている。これは、みんなのコンサートに賛同いただいている企業や個人の協賛や寄付によって支えられている。協賛企業や個人を募集中。