とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

保育士の働きやすい環境づくりを推進。保育士の楽園Projectを全国に広めたい

ちゃのま保育園(墨田区)

落合香代子さん

ちゃのま保育園 オーナー 宮村柚衣さん

奈良県出身。会社の新規立ち上げ事業を手掛けるために上京。ゼロから形のあるものを作る楽しさを知る。その後結婚、出産。子供が認可保育園に入れず、待機児童になったことをきっかけに2014年10月認可外保育所として、ちゃのま保育園をオープン。2015年4月より墨田区施設型小規模保育所の認定を受ける。一姫二太郎のお母さん。

ご自身のお子さんが待機児童となったことがきっかけで、保育園を立ち上げたそうですが、その経緯を教えてください。

宮村さん:年子の子供がいるのですが、2014年2月に認可保育園の入園不許可通知が届き、二人とも待機児童になりました。認可保育園に入れないことが分かり、すぐに認証保育所に電話をかけましたが、全てキャンセル待ち。待機児童問題がメディアで大きく取り上げられ始めた頃でしたが、私自身、あまり実感がなく、保活の厳しさを知ったのはその後でした。当時、子供を家でみながら、在宅で実家の経理を手伝っていました。子供が保育園に入ったら、会社勤めをしようと考えていました。ところが子供が保育園に入れないことで、その考えも一瞬で吹き飛びました。この事実にまずは腹が立って、始終怒っていました。夫にも怒りをぶつける始末。知り合いのお母さんから小1の壁の話も聞きました。保育園に入れなかったら約10年は仕事ができないことを言われ、とても焦りました。私にとって10年は長すぎる。怒りが落ち着いてきた時「保育園に入れなかったことを、仕事ができなかった理由にする自分が嫌だ」と思うように。そこで、保育園に入れないなら、保育園を作ろうと2014年10月に認可外保育園として、ちゃのま保育園を立ち上げました。それは子供が待機児童になってから約半年後のことです。

墨田区横川にあるちゃのま保育園
墨田区横川にあるちゃのま保育園。大きな通りにでると東京スカイツリーが間近に見える


約半年という短期間での保育園の立ち上げで大変だったことは?

宮村さん:保育園を作ろうと決めてからは毎日大変でした。あまりに大変だったので一つひとつ覚えていないというのが正直なところです。日々決断が強いられ、やらなければならないことは山のようにありましたが、小さい子供を抱えながらだったので、子供の時間にあわせて時間の区切りがあったことで、仕事と育児をどうにか切り盛りできたと思います。

保育園の場所は、下の子をベビーカーに乗せて近所を散歩しながら見つけました。大家さんが町内会の副会長さんで、自分の町内会と隣の町内会の会員さんに顔合わせをしてくれました。会う方に保育園を作ることを言うと「大歓迎だよ。近頃子供の声がなくて寂しかったんだよ」とみなさんが応援してくれました。今、子供の声がうるさいと保育園建設の反対があるところもある中、本当にうれしかったです。

最初、保育園に入園してくれる子供がいなかったらと心配でしたが、保育園の内装を作っている最中に直接来る人が何人も現れ、入園説明会には溢れんばかりのお母さん達が来て、子供を預けたいと泣かれる方もたくさんいました。申し込みを開始すると1カ月間は電話が鳴りっぱなし。子供を預ける場を求める親御さんの必死さに考えさせられました。そして保育園がオープン。当初私も保育に携わっていたのですが、保育士とお母さん目線で子供に対応する私との間に溝ができてしまいました。保育士は、子供をお世話するプロフェッショナルです。子供が大好きで、全てのことを子供の目線に立って考えている人達です。私は子供が育つ現場は、保育士さんにお任せした方がいいと考え、その後すぐに現場を離れました。

保育園がオープンしてから、保護者の方が保育園の様子を口コミで区内の子育て広場などで話してくれたことから、墨田区の視察が来て、2015年から始まる墨田区施設型小規模保育所として開設をしないかとお話しをいただきました。これは、墨田区が定める基準を満たした、保育定員19名までの小規模な保育所で、当時からその基準を満たしていたため、2015年4月から墨田区施設型小規模保育所になりました。

子供一人ひとりに対して手厚い保育
元気よくハイタッチ。19名定員と少人数制のため子供一人ひとりに対して手厚い保育を行える。


夏祭りの様子
夏祭りの様子。何が釣れるかな?


ちゃのま保育園の保育士さん、お子さん、保護者の方のことを教えてください。

宮村さん:当園の保育士は全員保育士資格を持っていますが、みんな以前勤めていた園での仕事が大変だったり、結婚、育児など生活の変化などで仕事を一度辞めた方です。最初私は、保育園は「働くお母さん」のためにと思っていましたが、「保育士」を大切にする保育園でありたいと考えました。保育士が楽しく働ける場であれば、保育士は子供達にもっと愛情を注げる、愛情たっぷりの園で過ごした子供達は、のびのびと育ちます。子供が健やかに育っているのを感じた親は、笑顔になります。その循環がとても必要だと思ったのです。そのために、保育士の待遇改善を行いました。具体的には、保育士を増やして、休みが取りやすい体制を作り、勤務ブランクがある人は、少しずつ勤務時間を増やすなど、その人のバックグランドにあわせた勤務形態などを取り入れた雇用契約書を個人ベースで作りました。また保育士の提案に「ノー」を言わないようにしています。例えば食育に力を入れたい保育士から給食を変えたいという案がありました。提案時は予算がなく、見送りになりましたが、今年度2017年から園オリジナルの給食を提供することになりました。

子供達は保育士の人数が手厚いこともあって、愛情たっぷりの毎日を過ごしています。0歳から3歳までのお子さんを預かっていますが、特に0歳児は1カ月違うだけでできることや成長が異なります。異年齢保育をしているので、1歳に近い0歳のお子さんは、1歳の子供達と一緒に遊ぶなど、個々の成長に合わせた活動を取り入れています。保護者の方からは「まるで親戚の家に来たような気持ちになる」と言われますね。保育士と保護者の距離が近く、お迎えの時には、いつも保育士と保護者が話を交わす様子が見られます。

公園に外遊びに出かける
「シャボン玉待って!」天気の日には近所の公園に外遊びに出かける


おみこし、わっしょい、わっしょい
「おみこし、わっしょい、わっしょい」近所の人からも声がかかる


保育士の働きやすい環境づくりを、全国の小規模保育園に伝えたい

保育士の楽園Projectのことや今後の展望をお聞かせください。

宮村さん:保育士の楽園projectとは、保育士の働きやすい環境づくりが保育の充実・待機児童問題の解消の近道になることを実践・証明していくプロジェクトです。具体的には、現在ちゃのま保育園で行われている保育士の環境設定をロールモデルにして、全国の小規模保育園に伝えていきたいと考えています。保育士の待遇改善というと賃金面に注力されますが、賃金よりも休みが取りやすい、個々の家庭事情や状況に合わせた柔軟な勤務体系を整えることが、保育士にとって働きやすさを感じるそうです。既に長く開設されている保育園にも出向き、課題や悩みを解決に向かうプログラムの提供を行う保育のコンサルティングも行っています。

当園には68歳の保育士がいますが、一度現場を離れたものの「働ける限りは子供達と過ごしたい」と勤めを再開しました。保育士は長くキャリアを積める仕事だと思います。保育士が働きたいと思った時に、年齢に関係なく、長く楽しく勤められる保育園が増えて欲しいですね。

ちゃのま保育園の保育士たち
チーム力抜群!ちゃのま保育園の保育士たち


写真協力:ちゃのま保育園(外観以外)

HP:http://chanoma-hoikuen.jp/