とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子供達の防災力を高める活動を、地域に根付かせたい

やろうよ!こどもぼうさい(三鷹市)

山崎光さん

やろうよ!こどもぼうさい  代表・防災士 山崎光

東京都新宿区出身。通信制の高校に通いながら建築の現場で働く。その後独立を経て、現在はシェアオフィスを運営する企業の建築関連の部署に勤務。東日本大震災後、ボランティア活動で東北に通った経験から、災害があった時に子供達が自分で自分の命を守ることを伝えたいと2015年「やろうよ!こどもぼうさい」を立ち上げる。現在、三鷹市や近隣市町村でワークショップを開催。

東日本大震災の被災者の言葉をきっかけに、団体を立ち上げる

「やろうよ!こどもぼうさい」を立ち上げるきっかけを教えてください。

山崎さん:以前は、防災は大切なことだと分かってはいるのですが、何から始めていいのかわからない。「防災アレルギー」でした。

それを変えたのは、2011年の東日本大震災です。震災直後から東北支援のボランティアに参加して、何度も被災地に通いました。会う方は家族や親戚、友人などを津波で亡くされた方がほとんど。知っている人が100人以上亡くなった方にも会いました。三陸海岸に暮らす人達の間では「生きている内に必ず大きな津波が来る」と繰り返し聞かされていたそうです。「歴史を振り返っても、地域を何度も津波が襲っていた。その経験や教訓を活かせなかったことが、悔しくてしかたない」と皆さんが口々に話していました。

その話を聞いて、自分の住む東京でもこれから来るかもしれない巨大地震や天災に備えて、何ができるんだろうか?と考えました。震災後、娘がTVで津波が街を襲うシーンを見て不安になり、何度も「(住んでいる場所は)大丈夫なんだよね?」と聞いてきたことを思い出しました。親として子供に自分の命を守るにはどうしたらいいかを教えていなかったことに気づきました。そこで子供が巨大地震や天災が来た時に、自分で判断して動くことを学べる講座を開きたいと思ったのです。そこで、2015年10月に任意団体の「やろうよ!こどもぼうさい」を立ち上げました。

三鷹市内の学童でのワークショップ
三鷹市内の学童でのワークショップ。この日は防災に関する紙芝居を行った


避難所などで使用する新聞スリッパを作る子供達
避難所などで使用する新聞スリッパを作る子供達


「やろうよ!こどもぼうさい」でのワークショップや活動について教えてください。

山崎さん:団体立ち上げ当初は、一人で活動を行っていました。2015年3月に岩手県陸前高田市のドキュメンタリー映画『あの街に桜が咲けば』のラスト上映会を多摩市で行い、映画の縁で団体のスタッフになった人もいます。当団体のワークショップは、子供達に楽しく防災のことを学ぶことをモットーにしています。子供達が盛り上がるのが、災害があった状況のお題に対して代用品を使って、チームで工夫して解決する「防災借り物競争」です。お題に「怪我をした人がいますが三角巾がありません。三角巾として使えるものを持ってきましょう」などがあります。子供達の発想はとても柔軟で、予想もしない代用品の使い方もあって、こちらも勉強になります。また、私が建築関係の仕事をしていることから、家具を固定している部屋と固定していない部屋の10分の1スケールの模型を作りました。その模型をスタッフなど大人が、持って揺らし、子供達に見てもらいます。家具固定のない部屋の危険性を目で見て感じてもらい、家に帰った後、家族で家の家具固定をチェックしてもらいます。

ワークショップは子供のみ、親子で参加とありますが、どちらも子供達が家庭で防災の話題を話すのが各段に増えたと親御さんから聞いています。

家具を固定している部屋と固定していない部屋の10分の1スケールの模型

家具を固定している部屋と固定していない部屋の10分の1スケールの模型
家具を固定している部屋と固定していない部屋の10分の1スケールの模型(上)。実際に箱を揺らして、目で見ることでより家具固定のない部屋の危険性を感じることができる


2017年はスタッフも入り、ワークショップの開催場所も広がっていきました。

山崎さん:今年から稲城市の小学校や三鷹市の学童、港区や文京区、横浜市などでワークショップを行っています。6月に「パパママBOUSAIinみたか」を行いました。防災関連企業に勤めるスタッフが、熊本地震の際、現地に短期駐在したことから、現地報告と熊本のパパやママとスカイプで話す試みを行いました。同じ子供を持つ親同士、報道ではあがらない、困ったことや感じたことを直接話せるのが、とても興味深かったようです。この時は親と子供は別々の部屋で過ごし、子供達は親が報告会やスカイプをしている時は、防災のゲームやワークショップを受けていました。未就学児の参加も多かったのですが、体験型のワークショップで楽しい時間を過ごしていました。

そして8月に「夏休み自由研究お助けキャラバン」を行いました。スタッフが作った津波発生装置を使って津波が起こる仕組みを学んだり、ペットボトルを使ったろ過器作りやみそボール作りを行いました。アルファー食品株式会社から協賛いただいている備蓄米を試食しました。このイベントは、夏休みの自由研究をしようという目的で防災を学ぼうと企画しました。20代の若手スタッフが進んで講座の企画を立ててくれて、心強いです。防災食アドバイザーやみそソムリエの資格を持ったスタッフもいます。スタッフの個性を活かした講座を、これからも開いていきたいです。

スタッフお手製の津波発生装置で、津波の起こる仕組みを学んだ
スタッフお手製の津波発生装置で、津波の起こる仕組みを学んだ


親子で作る「通学路ぼうさいマップ作成キット」

活動から「通学路ぼうさいマップ作成キット」が生まれました。どんなものでしょうか?

山崎さん:子供向けの活動なので、子供が親しみやすいオリジナルキャラクターを作り、小学生向けに「通学路ぼうさいマップ作成キット」を制作しました。これは付属のガイドブックを読み、地域で起こった災害を調べ、通学路でどんなところが危険で安全かを事前に知ってから、親子で通学路を歩いて、危険個所などをチェックし、自宅で地図を書いていくものです。小学生にとって通学路は毎日通る、一番身近なところです。これを親子で協力して作成することをおすすめしています。親は意外と子供の通学路の情況を知らないことも多く、マップ作成で危険な箇所などを確認するきっかけになります。マップが出来上がったら、親子で気づいたことを話したり、通学路以外で子供が使っている道を調べたりと、さらに自分の住む地域の防災について考えることもできます。

小学生向けの「通学路ぼうさいマップ作成キット」
小学生向けの「通学路ぼうさいマップ作成キット」。オリジナルキャラクター「ぼうさいうさぎのみみちゃん」のバッチを付けて通学路の点検を行う


三鷹市に根付いた活動を続けていきたい

今後の展望などを教えてください。

山崎さん:今後はさらに地域に根付いた活動にしたいと、三鷹市でのワークショップを増やし、井の頭住民協議会の防災訓練で小学生向けのブース出展を行う予定です。町内会の行事や市内の保育園での未就学児向けの防災ワークショップも行っていきたいと考えています。また、防災グッズを家族分揃えるには、かなりの金額がかかることもあり、手軽な価格で購入できる防災グッズの制作や販売も考えています。若いスタッフのアイデアを活かして、これからも活動を続けていきたいです。

写真協力:やろうよ!こどもぼうさい(プロフィール、通学路ぼうさいマップ作成キットを除く)

HP:https://kodomobousai.thebase.in/

FB:https://www.facebook.com/kodomobousai/