とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

自分には力がある 大切な自分を守るための女性や子ども向け護身法

NPO法人ライフライツ インパクト東京(足立区)

山崎光さん

インパクト東京 代表 森山 奈央美

自治体の広報誌に募集のあった護身法講座に参加したことをきっかけに、インパクト東京の活動に共感。インパクトBasicクラスを受講後、活動に関わる。2007年先代代表が引退、2代目として団体を引き継ぐ。2011年『今日から使える護身法』を出版。2016年中央大学ハラスメント防止啓発支援室の嘱託専門相談員に就任。

女性と子ども向け護身法講座を開催。延べ5,000人以上が参加

インパクト東京の活動について教えてください。

森山さん:インパクト東京では、女性と子ども向けの自分の体と心を守る護身法講座を開いています。定期的に東京ウィメンズプラザで16才以上の女性限定の「護身法ワークショップ」やインパクト(IMPACT)体験クラスを開催し、自治体の男女参画課センターや小中学校などで女性向け、ティーン向け、子ども向け、親子向けの護身法ワークショップや、女性支援者向けの安全研修なども行っています。今までに延べ5,000人以上の方に受講いただきました。

団代名にもあるインパクトとは、アメリカで開発された女性のためのセルフディフェンスプログラムの名称です。阪神・淡路大震災の時に被災地で起こった女性への性暴力事件のことを知り、大きなショックを受けた初代代表は、女性が自分で自分の身を守れることが必要だと様々な護身法を学ぶ中、インパクトに出会いました。それから初代代表は渡米して、プログラムに参加し、帰国後、当時アジア圏初のインパクトの指導者として活動をはじめました。私は住んでいる自治体で開催していた初代代表が講師の講座に一参加者として参加して、インパクトのことを知りました。簡単で効果的な技を教わったこともありますが、何より「女性が自分で自分を守ることは可能である」ということを気づかせてくれたことが、とても大きかったです。

女性向け護身法ワークショップの光景
女性向け護身法ワークショップの光景。「はじめは緊張している方でも、講座が終わる頃には、すっきりした笑顔を見せてくれます」(森山さん)


講座では女性性や被害の現状をレクチャーされるとお聞きしています。

森山さん:講座では、女性を取り巻く社会的な環境や、被害の現状などもお話しします。小さい頃から「女性」という枠組で生きることを強いられる中で、「おかしいな」と思っても心の中にしまって、多くの人はもやもやした状態のまま。そのような状況では自尊感情も下がりがちです。また、その中で、被害にあってしまうと、自分が悪かったのではないかと考えてしまったり、偏った情報を信じている世間から落ち度を問われたりと、被害を受けた側が更に過酷な状況に晒されるという現実があります。ですからやはり正しい知識が大切です。例えば加害者は、全く知らない人よりも、実は顔見知りである率が高いとか、暴力はついカッとなってしまったからではなく、相手を自分の思い通りにしたいという目的があるとか、だからコントロールしやすい自分よりも弱い立場の人を狙うなど、ただ技を習うだけではダメで、なぜそれが起こるのか、加害者はどんなつもりなのかを正しく知ることで、自分を守るためには何が必要なのか、どんな態度が危険回避に効果的なのかが分かってきます。このようなレクチャーと技を一緒に学べるのが当団体の特徴ですね。

自分の「声」で相手を寄せ付けない 自分に力があることを体感

護身法ワークショップについて具体的に教えてください。

森山さん:護身法というと、普通の人にはできない特別な技を習うイメージをお持ちの方がいますが、インパクト東京のお伝えする護身法は違います。

前半は先程お話ししたようなレクチャーがあり、後半では、具体的な技を習うのですが、どれも簡単なものばかりです。まずは姿勢と声です。暴力や侵害を許さないという毅然とした態度や嫌だという意思表示はとても重要なことであり、護身の基本です。声の出し方のデモンストレーションをすると、皆さん最初は「そんな声出せるのかしら」と不安そうな顔になります。そこから、徐々に声を出していくと、最後には今まで出したことのない声が出て「自分にこんなことができるんだ」と驚く方や、「新しい自分を見つけた」と言われる方もいますね。他にも手を掴まれた時や、首を絞められた時の対処法などもお教えするのですが、危険な場面でもできることがあると体感すると、日々の生活を送る上での自信にもつながります。

声を出す練習中
声を出す練習中。最初は恐る恐る声を出していたのが、最後は全員相手を寄せ付けない声が出せるようになる


「自分を大事にする」 「嫌なことは嫌と言っていい」を知る

子どもや親子向けの護身法ワークショップの様子を教えてください。

森山さん:子ども向けクラスは小学生が対象です。大人向けとほぼ同じ流れですが、レクチャーでは、人との距離感や「大切な自分を守っていい」、「嫌なことは『嫌だ』と言っていい」、「SOSを出す」ことなどを伝えています。日頃、子ども達は「相手を大事にしなさい」と大人から言われているので、「自分のことを大事にしていいと初めて聞いた」という子もいます。もちろん、友達を大事に思う気持ちは大切なことですが、まずは自分自身が守るべき価値のある、大切な存在であるという感覚を培うことが、自分を守る力につながります。

ある時の講座で「怖い人が来たらキックやパンチでやっつけられる」と自信満々だった男の子に、掴まれた手をほどく実習をしたところ、全くほどけず、とても焦っていました。もちろんちゃんとやればほどけるのですが、できた時はほっとした表情になりました。男の子の中には力を過信している子もいます。親子の講座では、お母さんやお父さんに「自分は大切な存在だ」と感じるように子どもに日々接して、自尊感情を育てて欲しいことと、子どもがSOSを出せる信頼のおける大人であって欲しいと伝えています。

子ども向けクラスの風景
子ども向けクラスの風景。講座後、いつもお友達に嫌なことをされても嫌と言えなかった子に、初めて嫌と言えたという報告をもらったことも


今後の展望などを教えてください。

森山さん:2017年は東京都からの依頼で女性の犯罪被害防止講習会を大学や専門学校で行いました。定期的なワークショップとは参加者の層も異なり、気づきを多くもらいました。これからは今よりももっと小学生や未就学児を育てている方、学生達に護身を伝えていきたいです。そして、企業や団体、NPOなどとも連携を取り、コラボで講座を開催するなども行っていきたいと思います。 

写真協力:インパクト東京(プロフィールを除く)

HP:http://impactokyo.net/