とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

東京をはじめ全国各地、被災地を「移動式子ども基地」で駆け巡り、子供の遊び場を展開

特定非営利活動法人 コドモ・ワカモノまちing(千代田区)

並木江梨加さん

特定非営利活動法人 コドモ・ワカモノまちing
代表理事 星野諭(プレイワーカー・一級建築士・地域コーディネーター)

1978年新潟県妙高高原町(現妙高市)生まれ。子供の頃は野山を駆け巡って遊び、街全体を遊び場にして育つ。2001年大学生時代に前身となる任意団体を立ち上げ、空き家を改装して子供基地(子供の居場所づくり)やまちづくりに関わる。2008年特定非営利活動法人コドモ・ワカモノまちingを設立。現在は主に0~20代の子どもや若者を対象に、遊び・教育・環境・防災・建築・福祉・食・まちづくりなどの多分野で、都内を中心に全国で活動。2008年千代田まちづくりサポート10周年記念事業大賞、2009年財団法人まちづくり財団全国「まちづくり人」認定、2014年こども環境学会活動奨励賞、2015年あしたのまち・くらしづくり活動賞(振興奨励賞)など受賞歴多数。

野山を駆け巡り、街全体が遊び場だった子供時代 。
東京の街に子供がいないことにショックを受ける

星野さんの子供時代や、団体を設立するきっかけなどを教えてください。

星野さん:新潟県の妙高市で生まれ育ちました。自然豊かな環境で、野山を駆け巡って、魚を取ったり、川で泳いだり、秘密基地を作ったり、八百屋さんや魚屋さんでリアルお店やさんごっこをする毎日でした。街中が子供達の遊び場で、大人達も子供達をあたたかく、時には叱って見守っていましたね。大学進学のため、東京で暮らし始めて驚いたのが、街で子供が遊んでいないこと。公園は禁止事項ばかり、自分の子供時代とのギャップに大きなショックを受けました。そこで大学時代に、学生仲間を集めて、子供の居場所づくりを進める任意団体を2001年に設立。大学のある千代田区で活動を始め、イベントの開催や、地域のお祭りに参加をしていました。2004年に神田多町にある築50年の2階建ての一軒家を借りて「子供達の居場所・子供基地」を開設しました。開設にはリフォームが必要でしたが、学生で資金はなく、近所の工務店や工事現場から余った建材などを寄付してもらい、ボランティアを募って、自分達でできるところは修繕をして開設にこぎつけました。開設後は、近隣他大の大学生達が専攻を活かしたボランティア活動を展開し、路地で遊ぶ活動などを行いました。2年が経ち、一軒家の取り壊しが決まった時に、今後の活動をメンバーで話すと「子供の遊び場作りを続けたい」、「もっと地域で顔の見える関係性を築きたい」という話があがりました。ある日、ジュースなどを補充するボトリングカーが、自動販売機の前に駐車しているのを見た時にひらめいたのです。「この車から子供達の遊び道具がでてきたら?まるでおもちゃ箱みたいだ」。この車に子供達の遊び道具を乗せて、公園や広場に行き、そこが子供達の遊び場になったら?都市部では移動式の遊び場の需要があるはずだと思い、早速トヨタ自動車株式会社に連絡を入れました。そこで、社会的活動を支援するトヨタ財団を教えてもらい、地域・社会貢献の部に応募、企画が通り、移動式子ども基地となる車の費用を助成してもらうことが決まりました。そして2008年特定非営利活動法人コドモ・ワカモノまちingを設立しました。

移動式子ども基地1号「かんちゃん」
移動式子ども基地1号「かんちゃん」


移動式子ども基地で東京全域をはじめ、全国各地、被災地を遊び場に

活動内容について教えてください。

星野さん:活動の柱は3つあります。1つ目は「移動式子ども基地」です。トラックには、木や竹、藁や革、絵本・紙芝居、世界の楽器、リユースおもちゃ、昔遊びのおもちゃ、工作道具、オリジナル遊具など100種類以上の様々な「宝物」が搭載されています。このトラックで、東京全域や全国各地の公園や広場などに赴き、子供は好きな道具やおもちゃを使って、思う存分遊びます。そこで繰り広げられる子供達の発想の豊かさには、毎回驚かされます。子供って目の前にあるもので無限に、自由に遊べるんですよ。親御さんも「こんなにシンプルな材料で楽しめるんですね」と言われる方もいます。この活動は、2016~2017年東京子育て応援事業の、多世代交流事業として採択されました。

NHK主催の環境、防災イベントを始め、多くのイベントに「移動式子ども基地」が呼ばれて出展し、生活空間である路地や空き地も遊び場にしています。最近特によかったのは、台東区谷中で開催した多世代交流イベント「四世代あそびデー」。おじいちゃん、おばあちゃん、パパ、ママ、子供達、赤ちゃんが集いました。その場を通りかかった人も、ふらりと立ち寄って子供達と昔遊びをする光景がいくつも見られましたね。

毎月1回、道路が遊び場に変身!
毎月1回、道路が遊び場に変身!


いろいろな自然素材の玩具で思う存分遊べる
いろいろな自然素材の玩具で思う存分遊べる


キャンプやワークショップも精力的に行っているそうですね。

星野さん:そうですね。2つ目の活動が、四季の感育学校(キャンプ)です。街の中で行うことが難しい森や里山での遊びをしに行きます。森に入り木を切って、移動式子ども基地の材料を作ることもします。3つ目が年100本近く全国で行っているワークショップやセミナーです。子供との遊び方を学ぶプレイワーカーの育成や防災、コミュニティビジネス関係、企業研修など様々な内容で呼んでいただいています。東日本大震災の被災地、石巻市などに移動式子ども基地が行き、子供の居場所や遊び場づくりにも務めました。そこから、子供の遊び場と防災をコラボしたイベントやワークショップも始まりました。

活動の中で、印象的なエピソードなどを教えてください。

星野さん:活動を始めた17年前に遊び場に来ていた子供達が大学生になって、ボランティアで入るようになり、結婚して子供が生まれて、家族で遊び場を訪れるということがでてきました。遊び場で育った子供達の世代循環を体感できる喜びは、何物にも代えられないものです。

今までたくさんの子供達に会いましたが、昔も今も子供達は何も変わっていません。どんな子も端材ひとつで、無数の遊びを作り出す天才です。変わったのは、子供を取り巻く社会です。子供の遊びを、どんどん制限する方向に向かい、今の子供には、5間(時間・空間・仲間・隙間・手間)が欠如しています。子供が自由にのびのびと過ごせる遊び場の必要性を年々強く感じています。

本音の話を積み重ねて、協働がすすむ

学生時代から地域や企業、自治体との協働を行っていますが、協働を進める上でのコツなどはありますか?

星野さん:会議の場だけではなく、飲食を共にして語る時間を持つことですね。食を介すとお互いの気持ちも緩んで、本音の話ができます。どうしてこの活動をしたいか、そのためにどんな協力を必要としているか、さまざまな団体と何度も話し合いを重ねていくことで協働してみようという流れに自然になっていきます。いくつかの団体で協働事業をする時、互いのできることや想いを重ね合わせて一番核となる「価値のダイアモンド」を見つけることが大事です。あとは、無理をしないで活動を続けること。続けていくことで出会いも増え、協力者もでてきます。時間をかけて仲間を増やしていき、活動目的を遂行していけたらいいのではないでしょうか?

年間を通じて、里山暮らしを体験
年間を通じて、里山暮らしを体験


今後の展開や夢を教えてください。

星野さん:夢は「移動式の学校」をつくることです。校舎のない学校で、街や地域が学び場です。職人さんなど街のプロフェッショナルに学び、子供達がどんどん街の中に入っていく。そんな学校ができたらいいですね。

ワテラスキッズを開催している神田淡路町にある「ワテラス」
今回の取材場所でもある月1回のワテラスキッズを開催している神田淡路町にある「ワテラス」。オフィス、マンション、商業施設、コミュニティ施設などで構成された複合施設で、星野さんが学生時代から意見交換会に参加するなど、現在も関わってる場所

http://www.waterras.com/


写真協力:特定非営利活動法人 コドモ・ワカモノまちing(星野様のプロフィール写真を除く)

HP:http://www.k-w-m.jp/