とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

育児当事者が楽しく読める書籍や自治体冊子を作成
ママクリエイター集団「まちとこ」

合同会社 まちとこ (世田谷区)

石塚由香子さん

合同会社まちとこ代表 石塚由香子

長女を出産後、子連れで行ける地域情報の必要性を感じ、2007年に自主発行物『まちとこ』を発刊(現在は不定期刊)。その後、冊子を読んで集まってきたママ仲間と編集・デザインの請負を始め、2016年に合同会社まちとこを設立。子育てしながら楽しく働き、なおかつ世の中のお役に立てる働き方を模索中。共訳に『フランスの子どもはなんでも食べる』(WAVE出版)。小6、小3の2児の母。

自分が知りたい子育て情報を集めた冊子『まちこと』を自主発行

自主発行をした『まちこと』を制作したきっかけを教えてください。

石塚さん:結婚後、世田谷区に住むことになり、長女を出産しました。出産前は、海運会社や翻訳書籍の版権代理店に勤務し、家と会社の往復で、住んでいる街のことはほとんど知らない状態でした。長女が生まれて痛感したのは「子育てが大変なのに、欲しい情報がない」こと。元々外に出かけるのが好きだった私でしたが、赤ちゃんと二人、子連れでどこに行けばいいか分からず、困っていました。そこで「自分が欲しい情報を自分で発信しよう」と思い、自主発行誌『まちとこ』を2007年に発行しました。特集は、当時ほぼ毎日娘と一緒に散歩していた下北沢の街にしました。子連れで入れるカフェや子育ての相談先、遊び場所、一時預かりなどの情報も入れました。

私は出産前、出版業界にはいたものの、編集は未経験でした。本を作るにあたって、編集経験のある、1歳違いで子どもを産んでいた友人と、その友人が助産院で知り合ったデザイナーに「お母さんが子連れで街を楽しむ冊子を作りたい」と話を持ち掛け、二人の力を借りて発行しました。

『まちとこ』を発行後、メールなどたくさんの反響をいただきました。同じような悩みを持つお母さん達に読んでもらえたことはとても励みになりました。そして「一緒に冊子を作りたい」と言うクリエイターのママ達とも知り合うことができました。それから約10年間、任意団体の形でクリエイターのママ達と一緒に、書籍や雑誌、自治体発行の冊子、ポスターなどを制作していました。活動を始めてから10年目を迎えるにあたって、法人化に挑戦してみようと考え、2016年に仲間5人と合同会社まちとこを設立しました。

まちとこ
自主発行誌の冊子名であり、現在は会社名である『まちとこ』は、「まちと子」、「まちをとことこ」から名付けられた


子育て関係の書籍や雑誌、世田谷区の冊子などを手掛ける

まちことではどんな制作物を手掛けていますか?

石塚さん:「読んで楽しく、伝わるモノ」の制作を心掛け、主に主婦や女性対象の書籍、雑誌記事、ウェブ記事の企画、編集、執筆、デザインなどをしています。制作者が全員ママということもあり、企画出しで多く出てくるのが「子育てに関するネタ」ですね。自分達が知りたいことからスタートし、子育て中のお母さんに働きかける内容のものが多いです。また、インターネットなどで情報が溢れる中、丁寧に取材して良質な情報の発信を心がけています。そして制作者の多くが住む世田谷区を中心とした行政などの冊子、チラシ、ポスターも幅広く手がけています。

自分達からの発信も大切にしていて、まちとこのオリジナル手ぬぐいのネット販売や電子書籍の制作・販売、自主発行物の制作などもしています。最近の請負では、スポーツイベントの記念ピンバッジの制作もありました。

書籍や雑誌、手ぬぐいなど
書籍や雑誌、手ぬぐいなど幅広く手掛けている。『おとなごはんと一緒に作るあかちゃんごはん(離乳食編)』や『忙しいママでもできる!毎日の時短ごはん』など、日々の生活からヒントを得たものも


『せたがや子育て応援ブック』をはじめ、世田谷区子育てメッセのポスターやチラシ、各種リーフレットの制作を行っていますね。世田谷区の制作物を手掛けるきっかけを教えてください

石塚さん:子供が生まれるまでは、自治体の印刷物にあまり気に留めていませんでしたが、子供が生まれて地域に根ざして生活するようになると、自治体の印刷物は、大切な情報源なんだなあとしみじみ感じました。乳幼児健診や予防接種、育児の相談先などの情報が掲載されたものが、素敵で楽しいものになれば、もらった人は喜ぶのではないかと考えて「子育て世代に響く、素敵なものが作れます」と区役所の担当課に押しかけて営業に行きました。今思うと、制作経験も少なかった自分達に期待して任せていただいたのは、本当に感謝しています。この時にご依頼いただいた制作物がきっかけで、区役所内の別の課ともつながり、現在は世田谷区の子どもや教育関係のものを中心に幅広く冊子、チラシ、ポスターなどの制作、編集をしています。

行政の方も伝えたい情報や気持ちをたくさん持っています。その思いを汲み取って、「情報が必要な人に、知りたい情報がスムーズに伝わる楽しくて、素敵なもの」の制作を、いつも心がけています。

まちとこが手掛けた自治体関係の制作物(一部)
まちとこが手掛けた自治体関係の制作物(一部)


働き方を試行錯誤しながら、チーム制で制作を行う

まちとこのスタッフは全員ママと伺っています。どのように仕事を行っているのですか?

石塚さん:現在、社員は私を含め6人。編集、ライターが3名、デザイナーが2名、カメラマンが1名の体制です。そのほか、外部協力スタッフもいます。社員は2歳児から小学生の子供を持つ子育て真っ最中のママです。まちとこへの参加条件は「締め切りを守る責任感と仲間と協力する心」ですが、社員、スタッフの共通の認識でいるため、お互い気持ちよく仕事ができます。基本的な仕事の仕方は、案件ごとに、やりたい人を募ってチームを作って進めていきます。仕事が佳境に入ると、家族が寝た後に仕事をしたり、休みの日に家族に協力してもらい、仕事の時間を作るなど各自工夫しています。スタッフからは「自分と同じ子供のいるママクリエイター同士なので、いい意味で遠慮なくSOSが出せて、頼りあえるのが、仕事をする上で精神的に助かっています」と言われました。私自身も長女が2歳の頃からまちとこを始めて、今は小学生になり、子供の成長にあわせた働き方を試行錯誤してきました。小学校のボランティアをを引き受けたり、子供の近くにいられる今の働き方は、私にはとても良かったと思います。個々にやりたいことを持っているスタッフなので、まちとこを通じて、それぞれがしたいことが実現できればいいなと思っています。

まちとこ社員
まちとこ社員が集合!お互いの自宅は自転車で10分前後の距離だったり、家族ぐるみで付き合う仲間だったりする。月1回の会議は、議案はきっちり進めつつ、雑談も大事にしている


公園も仕事場
公園も仕事場に。近所の公園に集まり、子供をだっこやおんぶしながら、打ち合わせをすることも


今後、取り組みたいことなどを教えてください。

石塚さん:みんなで「ひと旗あげよう!」と燃えています。今までの実績を大切にしつつ、子育て関係から、介護や働き方など人生全般をテーマに進化していけたらいいなと思っています。また「この世にまだないもの」もどんどん生み出していきたいです。そして、まちとこが取り組んでいる新しい働き方の提案ができたらうれしいです。

写真協力:合同会社まちとこ(プロフィール、まちとこ冊子を除く)

HP:http://machitoco.com/