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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

Vol.17 犯罪・災害に備えて全国で安全教育を実施する

NPO法人 体験型安全教育支援機構 (文京区)

NPO法人 体験型安全教育支援機構


プロフィール

NPO法人体験型安全教育支援機構
犯罪や災害から子供たちが自分で自分のことを守れるように、全国の保育園・幼稚園・学校などで安全教育を行っている。

清永奈穂(写真左)
立教大学文学部教育学修士課程終了後、大学研究助手等を経てNPO法人体験型安全教育支援機構代表理事を務める。著書に「犯罪と地震から子どもの命を守る」(小学館)等。テレビや新聞など、様々なメディアでも活躍している。

砂川優子(写真右)
慶応大学法学部政治学科(社会学専攻)卒業。体験型安全教育支援機構では、幼稚園や小学校、中学校に赴き、児童・生徒に実践的な教育と指導を行っている。東京都福祉保健財団助成研究「放課後児童クラブにおける犯罪からの安全テキスト」執筆。

防犯・防災で重要なのは、子供に力をつけること

「体験型安全教育支援機構」立ち上げの経緯は?

清永さん:学生時代から犯罪や犯罪防止の研究をしていましたが、犯行現場に行くたびに、子供たちに自分で身を守る力をつけてあげたいと思うようになりました。さらに自分に子供ができてからは、我が子ですら守ってあげるのにも限界があると感じ、犯罪や地震に出くわした時に対処できる力をつけてあげることが、いかに大切なことかを改めて実感しました。こうした経緯から、体験型安全教育支援機構で「研究」と「実践」を行うようになりました。


子供の安全教育の現状について教えてください

清永さん:まだまだ座学が多いと感じています。地震が起きたら机の下に潜れと言いますが、机がなかったらどうしたらいいのでしょうか。防災においても、防犯においても、もっと様々な場面を想定して具体的に、さらに研究に基づいた教育がなされるべきだと思います。だから私たちの講座では「座学」のみならず、犯罪・災害の「体験」をしてもらうようにしています。体験したことがないと、必要な時に行動できません。例えば犯罪に遭った時、防犯ブザーを鳴らすことができた子供は100人中1人でした。
また、親の考え方によって防犯・防災に力を入れたり入れていなかったりと、個人の裁量に任されてしまっていることも問題だと感じます。安全教育が必要だと思っていても、どうしたらいいのかわからないという人もいます。

地震を想定した体験学習
地震を想定した体験学習。腰を低くして障害物から身を守る訓練をしている。


砂川さん:防犯ブザーやGPS装置を付ければ「安全」と思ってしまう人も多いです。そういったものを使った上で、一歩踏み込んで何ができるか考えることが大切ではないでしょうか。


清水さん:小さい子供にも、できることがあります。例えば、「歩く」というのは身を守るのに必要な基本的な力です。しっかり周りを見ながら歩くこと。そして学校から家までの通学路を自分だけで歩いて帰ってくることです。このような、人としての基礎的な力も安全教育を通して教えています。


「体験」するから、実際に行動できる。「研究」に基づいているから、成果が得られる

「体験型安全教育支援機構」の活動と特色について教えてください

清永さん:研究をもとにした教育プログラムを作っています。犯罪者が好むタイプ、狙いを定めるのはいつか、狙いやすいのはどんな環境かということなどを研究しています。災害が起きた場合は、実際に現場に行ってどうすれば身を守れたかを研究しています。また、子供の発達段階に合わせて全て違うプログラムを作っていることも特色の一つです。年齢に応じて教育を受けることで、力が積み重なっていきます。

これまで研究してきた資料などが部屋いっぱいに並んでいる
資料室。これまで研究してきた資料などが部屋いっぱいに並んでいる。これらの研究結果をもとに安全教育のプログラムが作られる。


資料室にある模型
資料室にある模型。犯罪が起こりやすい環境を、元犯罪者の視点をもとに分析する。


指導を受けた人たちからは、どのような反応がありましたか

砂川さん:中学生に安全教育をした時、「困った人がいたら助けたいと思いますか」という質問に「はい」と答えた人が教育を受ける前では39.7%、教育を受けた後では60.3%(中学3年生)まで増えました。体験することで、「自分もできるんだ」「人を助けるべきなんだ」という意識が芽生えるようです。


清永さん:大人に聞いたアンケートでは、「実際に危ない目にあった時に役に立ちますか」という質問に、97%の人が「役に立つ」と答えてくれました。さらに、大人に向けて段階的に教育を受けて行くべきだと考えている人も多いです。

地震を想定した安全教育
地震を想定した安全教育。頭を守れる体勢で歩くよう、指導する。


実際に指導が役に立ったことはありましたか

清永さん:小学一年生の子が道で知らない人に話しかけられたことがありましたが、走って逃げることができたと報告を受けたことがあります。幼稚園の時に安全教育を受けたことがあるお子さんでした。


砂川さん:これを聞いたときは、すごく嬉しかったですね。


清永さん:女の子がマンションのエレベーターで写真を撮られたこともありました。その子はすぐに母親に伝えたそうです。母親は管理人さんに防犯カメラをチェックしてもらい、さらに警察にも通報したそうです。結局その時は、写真を撮った人は犯罪者ではなかったから良かったのですが、こういう小さなことは大きな事件の前兆であることもあるので、見過ごさずに行動することが大切なんです。この親子は親子講座を受けていたので、正しい判断をしてすぐに行動できる力が身についていたのだと思います。


砂川さん:東京都でも、保育園やこども園で親子教室を開催したことがあります。子供が犯罪に巻き込まれそうになった時、どのように行動したらいいのか戸惑う大人が多いのです。講座には親や教師も一緒に参加し、子供から報告を受けたらどのように行動するかを学びました。110番や、学校への報告の仕方も練習しました。

親子講座の様子
親子講座の様子。お尻をついて、相手の足(すね)に向かってジタバタする訓練。犯罪者の犯罪意欲を低下させる効果がある。


安全教育で育む、自助の力・共助の力

子供に防犯・防災について教える上で、特に大切なことは何でしょうか

清永さん:子供たちに、「自分の命がどんなに大切であるか」ということを知ってもらうことです。被害に遭ってしまうと、本人ばかりか周りの友達や大人も傷つきます。もし事件に遭遇してしまっても、その命を絶対に諦めず、力を振り絞って何とか戻ってくる力をつけて欲しい。そして、自分で自分を守ることができるようになったら(自助の力)、周りの人も助けてあげられる大人になって欲しいです(共助の力)。

防犯講座で使う紙芝居
防犯講座で使う紙芝居。子供に理解できるよう、わかりやすく説明することを心がけている。


多くの人が防犯・防災を学び、体験できるように

これからどのように活動を広げて行きたいですか

清永さん:もっとたくさんの子供に体験してもらいたいので、指導員を増やしたいと思っています。首都圏以外からも安全教育の申し込みがあるのですが、私たちが赴くよりも、その地域に住み、その地域をよく知っている人が教育をした方が、より具体的な内容のプログラムを実施できるのです。

また、現在は未就学児・小学生を中心に指導していますが、安全教育は0才〜15才まで対象にしているので、幅広い年齢層に教育していきたいです。

一番大きな目標としては、体験型安全教育施設を作ることです。イギリスには犯罪のことも災害のことも全て学べる施設がすでにあり、学びたい人が誰でも施設に行って学ぶことができます。老若男女が年齢に応じてあらゆることを学べる施設を作り、犯罪や災害に備えてもらいたいと思います。


写真協力:NPO法人体験型安全教育支援機構(一部写真除く)

http://www.safety-education.org/