とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

将来「楽しい子育てだったね!」とママが思えるように 産前産後・育児中のママの「体」と「ココロ」をサポート

子育て応援サロン ママサロンよつば(板橋区)

ママサロンよつば主宰
保育士/地域子育て支援士 野辺まりこ(左)
ママサロンよつばスタッフ
看護師/日本医療科学大学 保健医療学部 看護学科 講師 柳田徳美(右)

板橋区の「子育て支援員養成講座」の受講をきっかけに女性のための学習支援活動を行う「保育支援ネットワーク キャンネット」を立ち上げる。3年ほど前に事業のひとつとして「ママサロンよつば」の運営を開始。それぞれ2人の子供を持つ母であり、保育士、看護師という専門知識を生かしながら、出産育児に携わる地域のママたちをサポートしている。

「子供と接する方法をママと一緒に考えたい」との思いからサロンを開設

ママサロンよつばを立ち上げた経緯を教えてください。

野辺さん:ママサロンよつばは、「保育支援ネットワーク キャンネット」の事業のひとつとして、約3年前に立ち上げました。キャンネットは、子育て中のお母さんたちが、さまざまな学びや活動ができるよう、保育サポートを行っている団体です。お母さんたちがサークルや講座などに参加している間、小さなお子さんたちをお預かりし、見守るのが主な活動です。
私も、さまざまな場所でお子さんたちの見守り支援を行っていましたが、あるとき、ふと「なぜ、お母さんたちは子供を預けたいのかな?」という思いが浮かんだんです。子供がそばにいてもできることを、なぜ、短時間でも預けたいんだろう。そこには、何があるのだろう。子供を預けていたお母さんたちが、戻ってきて最初にいう言葉が「ごめんね」であることも気になっていました。短時間でも預けて、子供と離れてみたい。でも預けることに罪悪感がある。もしかしたら、子供のことをじっくり知る時間がないまま、いきなり「母」になってしまって、戸惑っているのかもしれない。それなら、もっと違う角度から子供と接する方法を一緒に考えていけたらな、と思ったのが、このサロンを始めてみようと思ったきっかけです。

柳田さん:ママたちが子育てで行き詰ったときに寄り添ってくれる場って、実はあまりないんですよね。「お母さんたちが楽しめる時間を作りましょう!」という、「外側」のサービスはたくさんあります。でも、「子供から離れたい」と感じてしまうお母さんたちが「内側」に秘めているものは、全然、解決していない。そこにアプローチしてみたいと思ったんです。

保育士のスキルアップのための研修会
保育支援ネットワーク キャンネットでは、保育士のスキルアップのための研修会も開催している


保育士、看護師、それぞれの専門を生かしてお母さんたちをサポート

通常は、どのような活動をされているのですか?

野辺さん:サロンは、第二金曜日にこの集会所(下赤塚駅前集会所 第二洋室)で開催しています。一番の特長は、保育士(野辺さん)と看護師(柳田さん)が常駐しているところです。必要があれば、助産師がお母さんたちの相談に乗ることもできます。

柳田さん:妊娠・出産・子育てのライン上にいる方たちの悩みや不安をサポートしたいと思っています。産婦人科では聞きにくいこと、家族や友人に相談しにくい体や心の悩みとか、子育てについての相談ごとなど、なんでもいいんです。子供のことであれば保育士の野辺さんが、お母さんの心身のお悩みであれば看護師の私が、それぞれの立場から相談に乗っています。ときどき、専門家の方をお呼びして、子育てに関する学習会みたいなものを開くこともありますよ。もちろん、ただふらっと遊びに立ち寄ってくれるだけでもいいんです。

どんなことを相談される方が多いですか?

野辺さん:一番はお子さんのことですね。「ほかの子とうまく遊べないんです」といったお悩みで来られる方が多いです。でも実は、お母さんの体や心のほうがずっと疲れているのに、そのことに気付いていないというケースもとても多いんです。
以前、こんな方がいらっしゃいました。「赤ちゃんができたけど、生まれたときの抱っこの仕方が分からない」と。それでこのサロンにいらしたので、赤ちゃんの人形などを使って、抱っこの仕方などを一緒にしました。よくよく話を聞いてみたら、板橋区外の産婦人科にかかってしまったので、区の助成サービスも受けられていなかったんです。核家族で、近くに知っている人もいないと病院選びから分からないんだなと気づきました。相談できる場所になれるとよかったのですが、残念でした。

柳田さん:その後、無事に出産されたのですが、生まれてからゲップのさせ方が分からない、夜泣きがひどいなど、初めての育児でお母さんの体がボロボロに。おっぱいもカチカチになっていて、痛いはずなのに、その痛みに気づかないほど気持ちが張り詰めていました。おっぱいの様子を見させていただいて、赤ちゃんが吸い付いてくれたときはうれしかったです。「あれからどうしたかなぁ」と二人で心配していたのですが、間もなく社会復帰されました。
産後は誰でもマタニティーブルーになるんですが、それに気づいていないから「ヘルプ」のサインも出せず、一人で悩んでしまい、解決方法として「社会復帰」を選ぶ人が多い。私たちはそこで何かお手伝いできることはないだろうかと考えています。悩んだときこそ、そこでいったん、子供ときちんと向き合ってほしいとも思っているんです。

記念すべきサロンの初日
記念すべきサロンの初日にきてくれたお母さんとお子さん。開設当時は、柳田さんの自宅がサロン活動の場でした。


悩みがあるのはちゃんと育てている証拠。だからどんどん悩んでほしい

「子供と向き合う」とは、どういうことでしょう。

野辺さん:初めての子育ては、誰にとっても大変で分からないことや戸惑うことがたくさん起こります。だからこそ、そこを見て見ぬふりをしてほしくない。母になる覚悟があって母になったはずだけど、子育てがうまくいかないのはみんな同じなんですね。悩みがあるっていうのは、ちゃんと育てている証拠。だからどんどん悩んでほしいんです。

柳田さん:保育園に預けて社会復帰することがいけないと言いたいのではないのです。私も、子供を預けて社会復帰した経験がありますから、働くお母さんの気持ちもとても分かります。ただ、そのときでしか見れない子供の様子や成長の過程を、しっかりと観察して、受け止め、大変さを味わってほしいと思うんです。その過程には、思い通りにいかなくて、心配だったり、ときには腹の立つこともたくさんあります。でも、腹が立つということは、「子供を大人の時間軸に合わせよう」とすることから起こること。そこを、いったん、子供の時間軸で見てみることも必要なんじゃないかと思うんです。じっくり観察していれば、この子は何時くらいにお腹が空くんだな、何時くらいに眠くなるんだな、こうすると機嫌がいいんだな、といったことが見えてくるはず。ご飯をつくる時間に子供が泣いているなら、その時間にご飯を作らなければいいのかもしれない。折り合いをつける方法はきっとあります。お母さんと子供、お互いが幸せになれる方法を一緒に考えていきたいなと思っています。

母になりたい人、なる人、なった人が、安心して出産育児に取り組める支援をしたい

活動をされていて、どんな時に「良かったな」と感じますか?

柳田さん:そうですね、突然ふらりとやってきた人が、ポロリポロリと悩みを打ち明けてくれたときや、目の前にある事柄ではなく、別のところに問題の原因があったことにお母さん自身が気づき、解決することができたときですね。
一番、つまづきやすいのは、出産直後なんです。「いい産後」を迎えることができれば、そのあとの育児もスムーズにいくことが多いです。

いい産後とは、どんな産後でしょう。

野辺さん:いざ子供が生まれてくると、思ってもいなかったことがたくさん起こります。その「思ってもいなかったこと」が起こりうるということを知っている、覚悟できていることが「いい産後」につながるかな。「いい産後」を迎えられるかは、その後の子育てを決めていくポイントになると思います。

柳田さん:病院や定期健診では、お母さんや赤ちゃんの体の状態は診ることができますが、心の部分を診ることが足りていないと思うんですね。出産直後は、実は虐待も多いんです。お母さんたちが元気じゃなかったら子育てが「苦」になってしまいます。どんな些細なことでも、あそこに行けば話せる人がいる、悩みを聞いてくれる人がいる。このサロンは、お母さんたちにとって、そんな場所でありたいと思っています。

最後に、今後の展望について教えてください。

野辺さん:今は、1月に1回だけの開催なのですが、常設したサロンとしてやっていきたいというのが私たちの夢です。オープンにできる保育室みたいなスペースですね。そこに来れば、子供を遊ばせたり、子育てやお母さん自身の心身についての相談がいつでもできる、そんな場を作りたいと思っています。
お母さんになりたい人、なる人(妊婦さん)、なった人(出産した人)、すべてのお母さんたちが、安心して子育てに取り組めるような支援を続けていきたいと思っています。
「今日はここに行って楽しもう!」くらいの、気軽な気持ちで立ち寄ってみてください。いつでもお待ちしています。

入口に掲げられている黄色い旗が目印
入口に掲げられている黄色い旗が目印「いつでも、お気軽に遊びに来てください!」


写真協力:ママサロンよつば(プロフィールを除く)