とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

地域社会で子育てをしよう!さまざまな世代がシングルママの子育てを応援

NPO法人 子育てKitchenグループ (文京区)

NPO法人 子育てKitchenグループ


プロフィール

子育てKitchenグループ理事長 田中由美子:食育子育てシニアインストラクター、食品衛生責任者。3男1女の母。4人の子育て経験を活かして、2013年に2歳から参加できる親子料理教室「子育てKitchen」を開設。現在では絵本講座やベビーマッサージ、ママの学びの講座など、活動の幅を広げて子育てに貢献している。これまでに関わった親子は1,000組以上にもなる。

子どもの「やりたい」という気持ちを受け止めてあげたい

どのような経緯から「子育てKitchenグループ」を立ち上げたのでしょうか。

自分の好きなことを仕事にしたいと思っていたとき、文京区のソーシャルイノベーション事業(社会問題を区民が解決するのを支援する取り組み)に参加することになりました。自分にしかできないことを企画として出さなければならなかったのですが、それは何だろう?と自問したときに、私の育児の方法が思い浮かんだのです。
実は私の家では、長男が1歳半のときに台所に興味を持ち始め、一緒に料理をするようになりました。だから私の子育ては「台所育児」が当たり前だったんですが、周りの人にそのことを言うととても驚かれました。


1歳半で料理の手伝いをさせるのは、普通は危ないと思ってしまいますよね。

そうなんですよね。でも子どもの「やりたい」という気持ちをなんとか受け止めてあげたかったんです。だから「どうやったら子どもにもできるか」ということを考えながら、工夫して育児をしていました。
4人の子育てを経てわかったことですが、子どもが親のやっていることに関心を示すのは、7歳ごろまでなんです。その後は、子どもは自分の世界を持って外に目が向いていくので、家庭に興味がなくなります。だから子どもに好奇心があるときに体験させてあげないと、親が教えたいと思う頃には見向きもしなくなってしまいます。
こうした自分の育児経験から得た、当たり前だと思っていた「台所育児」を子育て中の人に伝えていこうと思いました。それをちゃんとわかりやすくプログラム化したのが「子育てKitchen」の始まりです。現在では、子どもの「やりたい」という気持ちを受け止めるという目的で、親子料理教室のほか、絵本講座なども開いています。

「危ない」からやらせないのではなく、「どうしたら安全にできるか」を教えることが大切

親子料理教室での活動について教えてください。

親子料理教室では、子どもだからといって特別メニューにするわけではなく、家で夕飯に出すような普通の食事を作ります。料理方法も家で作る方法と全く同じで、食材を洗うところから、切る、加熱するところまですべてやってもらいます。


料理の前に行う「食材クイズ」。知らない食材がたくさんあるので、みんな興味津々!目をキラキラさせている。
料理の前に行う「食材クイズ」。知らない食材がたくさんあるので、みんな興味津々!目をキラキラさせている。


野菜を洗っている様子。調理されていない野菜を見る機会が少ない子どもたちにとっては、とても新鮮な体験。
野菜を洗っている様子。調理されていない野菜を見る機会が少ない子どもたちにとっては、とても新鮮な体験。


家庭では危ないからとためらってしまいそうなことも、料理教室で体験させるんですね。

危ないことをしっかり伝えてルールを決めれば、小さな子どもでも何でもできます。例えば子ども用の包丁は「切れない」包丁が主流ですが、教室ではあえて「切れる」包丁を使っています。大人が切れない包丁を使うのがストレスであるのと同じように、子どもも切れない包丁は使いたがらないからです。「包丁は危ない」ということをしっかり子どもに伝え、使った包丁は必ずまな板の奥に置くというルールを決めています。またフライパンや鍋を使うときは、片方の手で柄を持たせ(柄を持たせないと誤って鍋肌を触ってしまうことがあるため)、もう片方の手で調理するよう指導しています。


左手でフライパンの柄を持ち、右手で調理。どうすれば安全にできるか教えてあげれば、子どもでもできる。
左手でフライパンの柄を持ち、右手で調理。どうすれば安全にできるか教えてあげれば、子どもでもできる。


料理教室に通われたお子さんたちは、どのように成長しますか?

料理教室は4回で1セットですが、1回目と4回目を比べると成長をはっきり見ることができます。例えば、1回目では親と一緒に包丁を使っていたのが、4回目では親はそばで見守るだけになります。


料理教室4回目の2歳の女の子。お母さんは横で見守るだけ。小さな手だけれど、包丁を使う姿はたくましい。4回の料理教室での体験を通して、子どもに自信がつくのだ。
料理教室4回目の2歳の女の子。お母さんは横で見守るだけ。小さな手だけれど、包丁を使う姿はたくましい。4回の料理教室での体験を通して、子どもに自信がつくのだ。


またメニューはご飯・汁物・メイン・副菜まですべて作るので、段取り力をはじめさまざまな力がついていきます。私が親子料理教室を開いたきっかけはここにもあるのですが、料理をすると「生きる力」がつきます。これとこれを合わせたら美味しくなるかな?という「考える力」、誰かのために作るという「思いやり」、料理をしたら必ずでき上がるという「達成感」、そしてそれらから得られる「自己肯定感」まですべてが料理という作業の中に詰め込まれているのです。


この日のメニューは、シュウマイ・キャベツのにんにく炒め・ふわふわ卵スープ・ご飯。野菜がたっぷりで栄養満点!
この日のメニューは、シュウマイ・キャベツのにんにく炒め・ふわふわ卵スープ・ご飯。野菜がたっぷりで栄養満点!


絵本に興味を持って欲しい!という親の想いを叶えたい

子育てKitchenでは絵本講座も開催していますよね。

絵本講座では、絵本の読み聞かせ方から、絵本を選ぶポイントや絵本の種類、本から離れる時期まで、さまざまなことを伝えています。
でも、基本は料理教室とまったく一緒なんです。
子どもの興味や好奇心を潰さないでうまく後押ししながら、「本を読むという環境」を作って、あとは親子で一緒に楽しむこと。講座では、実際にどうやるとそれができるのかをお伝えしています。
「読んでも子どもが反応しない」「図鑑しか読まない」など、親御さんから悩みを聞くこともありますが、そういった一人一人の悩みにも寄り添っていきます。絵本講座を担当しているのは、絵本の編集歴30年以上の絵本を知り尽くしたベテランです。その絵本がどんな想いで作られているのかなども教えてくれます。


絵本講座では、実際に絵本を読み聞かせながら、ポイントを伝えている。
絵本講座では、実際に絵本を読み聞かせながら、ポイントを伝えている。


教室を通して子育ての考え方が変わり、世界が広がる

教室に参加された人たちからはどのような反応がありましたか?

料理教室に参加したある家庭からは、「休日の過ごし方が変わった」という話をいただきました。これまで休日は外で食事していたのが、子どもと一緒に家で料理するようになったそうです。
また「パパが料理するようになった」という家庭もありました。パパはそれまで一切料理をしなかったのが、子どもに教わりながら一緒に料理をするようになったそうです。
子どもと料理をすることで、家族でのコミュニケーションは圧倒的に増えるようですよ。
絵本講座に参加した人からは、「絵本選びが楽しくなった」「知らなかったジャンルの絵本を紹介してもらい世界が広がった」という声をいただいています。
どの家庭も、料理教室や絵本講座を受けて、子どもとの時間が以前よりももっと楽しくなったようです。


子育てKitchenの想いをたくさんの人に広げたい

活動をする上で大切にしていることはありますか。

子育てKitchenでは、大人がストレスを抱えずに育児する方法を、一緒に考えるようにしています。例えば、たった5分でもしっかりと子どもに向き合って絵本を読むことで、子どもは満足します。夕飯を作っているとき、子どもが興味を持っているようなら、少しだけでも手伝わせてあげるといいですね。それだけでも子どもの自尊心を育むことができます。このように忙しい日常の中でも、無理なく子どもと向き合う方法を、具体的に伝えています。子どもが親と一緒に何かしたがる時期は本当に限られています。その時期がどんなに大切な時期であるかも必ず伝えています。


一方で、子育てを頑張っている親御さんたちに「子育ては、できて当たり前みたいな雰囲気があって誰も褒めてくれないから、たまには自分自信を褒めてあげてね」とも伝えています。ついつい子育てを頑張りすぎてしまいますからね。


今後どのように活動を広げていきたいですか。

子どもが親とのふれあいを通して「失敗しても大丈夫」「泣いても大丈夫」という大きな安心感を育てられるのは、小さいときだけです。そしてその安心感は、人として大切な基盤であり、心の成長を促すものでもあります。子育てKitchenでは、この期間限定の時期に親が子どものためにできる環境づくりを、後押ししていきたいのです。
しかしこの教室で接する親子は限られるので、より多くの拠点で多くの人に向けて伝えられるように、指導者育成に力を注ぐべく養成講座もスタートしています。


※写真協力:子育てKitchenグループ(一部写真を除く)

http://kosodatekitchen.com/