とうきょう子育てスイッチ 子育てマガジン

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地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子育て相談のプロを養成するスクール

NPO法人 日本子育てアドバイザー協会(渋谷区)

NPO法人 日本子育てアドバイザー協会 コンセプチュアルディレクター 小谷野公代さん


プロフィール


NPO法人 日本子育てアドバイザー協会 コンセプチュアルディレクター 小谷野公代

1982年、海外での子育て経験からベビーシッター専門事業である(株)キンダーネットワークを設立。2002年、NPO法人 日本子育てアドバイザー協会を設立。子育てに悩む親に寄り添い、なんでも相談ができるプロの人材の育成に取り組んでいる。

子育ての悩みを相談できる専門家の必要性を実感

「日本子育てアドバイザー協会」立ち上げの経緯を教えてください。

日本子育てアドバイザー協会は、小児科医の木下敏子さん、家庭裁判所調停員の池田秀子さん、幼稚園園長の松本良子さんと共に4人で、子育てに悩むお母さんの悩みを解決してあげたいという思いを持って平成11年に設立されました。

分野の異なる4人の出会いは?

私自身はキンダーネットワークというベビーシッターの会社を経営しています。以前、会社から派遣したベビーシッターから、仕事を終えて帰ろうとするとお母さんに止められ、悩みを頻繁に相談されてしまうという苦情がきました。ベビーシッターは相談を受ける教育を受けていないので、戸惑うのは当然です。家庭に訪問するベビーシッターは、子供の成長発達に合わせたお世話や家庭に入るマナー、親とのコミュニケーションなど、保育士とは異なるスキルが必要です。そこで改めて勉強してもらうために、ベビーチュータープロ養成スクールを始めました。その講師となって来ていただいたのがこの3人でした。

偶然の出会いから協会設立に至ったのですね。

ベビーシッター派遣先のご家庭に、子育てに悩むお母さんが多いことを3人の先生方に相談すると、みなさん「うちもそうよ」とおっしゃいました。どの分野の専門家も、子育てに悩むお母さんを抱えていたのです。お母さんたちは専門家に話を聞いてもらいたいという思いがありますが、ベビーシッターや病院の先生が悩み相談に時間をかけることはできません。そこで4人で協力して、相談を受ける専門家を養成する協会を立ち上げることにしました。協会で養成した子育てアドバイザーが、お母さんたちの気持ちを楽にして、安心して子育てできるようにするのが目標であり、大きな理念です。

悩み相談の専門家を育てる「子育てアドバイザー養成講座」

子育てアドバイザー養成講座ではどんなことを学びますか。

相談に来たお母さんたちは、自分の話をわかってもらえるのか、何から話したらいいのかなど、大きな不安を抱えています。まずはそんなお母さんたちを受け止めてあげる「受容」が必要です。そしてお母さんの気持ちを理解して寄り添う「共感」、さらに子育ての意義を話しながらお母さんの気持ちを和らげる「ねぎらい」です。私たちはアドバイザーを「気持ちの専門家」と呼ぶことがありますが、お母さんたちの気持ちが楽になると、子育ての質がずっと良くなります。そうなるためには悩みや不安を打ち明け、気持ちが解き放たれる必要があるのです。講座では各専門分野の先生が講義をしますが、どの先生もこの受容・共感・ねぎらいについて授業の中でお話ししています。

かなり専門的な知識を学ぶ講義もありますね。

もちろん、発達障害や発育など専門的なことも学びます。子供がまだ1歳にもならない頃から発育に関して心配するお母さんもいるので、そのような知識があることも重要です。しかし、アドバイザーはお母さんが抱える問題ばかりに焦点を当てず、お母さんの気持ちの拠り所や仕事のことなどについて雑談をしながら、気持ちを開いてもらうことから始めます。お母さんに子育てのアドバイスをする必要があっても、それは何回か面談を重ねてからになります。

子育てアドバイザー養成講座の様子
子育てアドバイザー養成講座の様子


養成講座の中で特に大切なポイントは何ですか。

講師の先生たちが、「アドバイザーがしてはいけないこと」をしっかり伝えていることです。例えば、アドバイザーは「様子をみましょう」と言ってはいけません。この言葉は、お母さんに問題を丸投げしているのと同じです。どういう点に注意して子供を見るのか、お母さんが具体的にできることをわかりやすく伝えます。またアドバイザーは、否定的な言い方をしてはいけません。「うちの子は動き回って大変です」とお母さんが言ったら、「それは大変ですね」と返すのではなく、「元気で活発なお子さんですね」と伝えます。自分の育児を違う角度から見てもらえることで、気持ちが楽になります。まるでおばあちゃんのように、おおらかな気持ちでお母さんを受け止めてあげることが大切です。

子育てアドバイザーに必要なのは、お母さんの気持ちを受け止めるスキル
子育てアドバイザーに必要なのは、お母さんの気持ちを受け止めるスキル


どのような人が受講しますか。

受講者の中で最も多いのが保育士です。厚労省の方針により保育士は、保護者が子育ての問題について支援を求めている場合、援助する必要があるからです。そのため多くの保育士が保育園から派遣されて養成講座を受講します。そのほかの職種としては、教員や保健師、看護師、社会福祉士、会社員など、すでに子供に携わる仕事をしている人がスキルアップのために受講することが多いです。専門的な内容もありますが、講座は何度でも受講できるため、少しずつ理解を深めていくことができます。

受講生からはどのような感想がありましたか。

ある保育士は、「これまでの考え方が全て変わった」とおっしゃっていました。また会社で親子イベントなどを担当している会社員からは、受講することで次々と企画を思いつくようになったと聞きました。お母さんの悩みや気持ちを理解することが、仕事に直接役に立ったようです。またこの講座は、実はコミュニケーションスキルを学ぶことができるため、親子関係や職場の人間関係にも応用できます。受講者から、自分自身の子供への声のかけ方がわかった、職場での人間関係が良くなったという声もあります。

子育てアドバイザーの活躍

講座を修了したアドバイザーの活動について教えてください。

協会からスーパーマーケットにアドバイザーを派遣し、その中の赤ちゃん休憩室でオムツ替えなどを手伝いながら相談を受けています。また自治体から委託を受けて、アドバイザーが毎日相談を受けている施設もあります。自主活動をしている人も全国にはたくさんいて、自宅の一室を相談室にしている人もいます。

スーパーマーケット内の赤ちゃん休憩室で活動する子育てアドバイザー
スーパーマーケット内の赤ちゃん休憩室で活動する子育てアドバイザー。


子育て中の親がいつでも気軽に相談できるような環境に

今後はどのように活動を広げていきますか。

大きなビジョンとしては、18万人子育てアドバイザーを社会に輩出することです。少子化になって久しいですが、日本は毎年180万人子供が生まれるとちょうどいいと言われています。その時に子育てアドバイザーが18万人いれば、アドバイザー一人につき10人のお母さんのケアができます。全ての子育て中の親の近くに、気軽に相談ができる子育てアドバイザーを配置できればと思います。


写真協力:NPO法人 日本子育てアドバイザー協会(一部写真除く)

http://www.kosodate.gr.jp/