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パパの子育ての、今とこれからを語ろう!

Part6 平井康行さん 子育て社員が働きがいのある企業へ

武石恵美子さん

子育て応援とうきょう会議実行委員長

法政大学キャリアデザイン学部教授。筑波大学卒業後、お茶の水女子大学人間文化研究科博士課程修了。労働省(現・厚生労働省)、ニッセイ基礎研究所、東京大学助教授を経て、2006 年法政大学キャリアデザイン学部助教授、2007 年より現職。博士(社会科学)。専門は人的資源管理、女性労働論。主な著書に『雇用システムと女性のキャリア』(勁草書房)、『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』(編著、ミネルヴァ書房)、『ワーク・ライフ・バランス支援の課題』(共編著、東京大学出版会)など多数。

共働きが増えていけば男性の育児ニーズが高まる

父親の育児の現状を、どうとらえていますか?

私は企業の人事管理が専門ですので、企業の側から見たときに、男性の育児への関心は高まってきていますし、変化も起こってきていると思うのですが、構造的な問題もあるように思います。たとえば、日本は男性の育休取得率は低いのですが、その背景に共働き比率が低いということがあります。3歳児未満の子を持つ女性の就業率は上昇してきてはいますが、まだ3割程度しか就労しておらず、妻が専業主婦で、夫が1人で働いているという形が圧倒的に多いパターンです。したがって、父親の育児と言っても、社会の共通の課題になりにくい構造があると言えます。
妻が正社員の夫の育休取得率は9%というデータがあります。国の目標として男性の育休取得率を13%にすることがありますが、妻が正社員であれば1割程度が取得しているので、共働きが増えていけば男性の育児ニーズが高まるという方向性はありますね。

男性の育児休業取得は、なぜ必要なのでしょうか?

人事管理的な視点から言えば、本人が制度利用を希望しているのにできないとすれば、それによりモチベーションが下がってしまう、そのような対応なら会社を辞めてしまうということもあるという点で、問題です。両立ができないことで仕事に集中できないということもあります。そういう意味では、育児休業制度を希望しているのにそれが実現できないことで人材活用面でのロスが発生します
男性が育児したいとか、育児しなくてはならないというニーズは現状ではさほど強くなく、企業側にとっても差し迫った課題になっていない。「育児は女性の問題だよね」となってしまっています。ただし、共働きが増えれば、男性も妻と育児の役割を分担しなくてはならなくなります。時代が変わるのを待つか、積極的に変えていくべきなのか、その辺は少子化対策などの社会的な課題とも関係してくるところだと思います。
近年、女性の活躍推進が重要な政策になっていますが、それを確実なものにするためには、私は、「男性が育児する」ということへの共通理解が高まっていくことが不可欠だと思います。育児休業はその一つの形ですが、男女が共に働き活躍する社会は、一方で、男女が家庭の責任や役割を共に担うことがなければ実現しません。

ムダな残業をなくし、個人の裁量性を強くしていく

父親の子育ての課題は?

夫婦の間で子育てをどうしていくかということ、父として母としてどうしたいのかということを、個々人、そして夫婦がまず考えることが前提です。その上で、それぞれが働き方を検討するために、多様な働き方の選択肢があるべきです。夫婦で相談した結果、家庭によっては、父親0、母親100%という選択肢もありうると思いますが、子育ては当然母親の役割、と、話し合いすらしないカップルも多いのが現状です。子育てに対して、夫婦がどのように向き合うのか、ということを考えて、職場にも働きかけながら、妻だけでなく、世帯全体として仕事と子育ての両立を考えることが必要です。
当然ですが、恒常的な長時間労働や硬直的な働きを変えていかなくてはなりません。
海外では、平均的な労働時間が日本より短いことに加えて、時間や場所など柔軟性のある働き方をしているケースが多く、子育てを含む家庭生活との両立が可能になっている点が注目できます。たとえば、フレックスタイムを利用して、朝早く出社して午後3時頃に帰宅するといった働き方も可能です。在宅勤務も広く導入されており、通勤時間やオフィススペースの節約など、メリットが大きい働き方として定着しています。夫婦で多様な働き方を組み合わせれば、休業制度や短時間勤務制度など特別な制度に依存しなくても、仕事と家庭の両立が可能になり、職場にとっても働く人にとってもメリットがあります。
日本の働き方は、国際的にみるとかなり異質です。ムダな残業をなくし、個人の裁量性を高める働き方に転換していくことが必要でしょう。家庭生活との関係でいえば、これからは、子育て以上に介護で多様な働き方が求められるようになってきます。現在でも介護離職者が年間10万人程度あり、早急に対応が求められています。恒常的な長時間労働の是正や柔軟な働き方は、介護においても当然有効であり、子育て中の従業員に対応できると、介護中の従業員にも対応しやすくなるという側面もあります。従業員全員に一律に働いてもらう形は、様々な状況変化から、もう限界に来ていると言えるでしょう。
現状では、妻が出産して育休を取得し、その後短時間勤務で復帰すると、夫は妻に家庭のことを任せる意識になってしまい、女性の短時間勤務の期間が長期化してキャリアに影響がでる、という問題にもつながっています。子供子が産まれたら夫婦の役割分業が顕著になってしまった、という状況に陥らないためにも、育休の取得やその後の育児のあり方、夫婦の働き方について夫婦で相談することが必要になるわけです。

企業の働き方はどのように変えるべき?

企業として利益を上げていくのは、経営者にとっても労働者にとっても共通の目標です。共にいい組織を作っていくという同じ目標があるわけですから、それを共有して、何が必要かを考えることが大切です。男性も育児したいというニーズがあれば、それを企業に伝え、一緒に考えていくことが重要ですし、実際に男性の育児休業にうまく対応している職場では、それができていることが、私の調査でも明らかになっています。労使関係で円滑なコミュニケーションを取れていることが、企業の成長にもつながります。
日本の職場では、労働者のプライベートなことは職場に持ち込まない、といった風土がありましたが、1人1人の個人の事情に配慮しながら人事管理をしないと人材活用が進まない時代になってきています。介護の例をあげると、家族の介護のことを職場で言い出せず、ぎりぎりまで頑張って結局辞めるときに人事に相談してもその時にはどうしようもない、というケースも少なくありません。個々人がそれぞれに事情を抱えながら働いているわけですから、仕事以外の状況を含めて職場のマネジメントをする必要が高まっており、そのために職場の中でお互いにコミュニケーションを取ることが大切です。

子育て応援とうきょう会議実行委員をしてきて、思うことは?

男性の育児については社会的に意識が変わってきました。当初は「男性が子育て?」という感じでしたが、「仕方がない」から、今は「かっこいい」と、肯定的に変わってきていることは確かだと思います。
東京都は、若者が集まる一方で相変わらず出生率が低いので、まだまだ解決しなくてはならないいろいろな課題があります。
実行委員には、いろいろなメンバーがいますが、子育ては楽しいという空気を作る役割を担うことが会議の目的です。子育て中の親を社会全体で応援していくという社会的な状況を作るのが、この会議の本来の目的なので、そのために様々な立場の方がそれぞれできることを考えていただく、ということで取り組んできました。ただ、多様なバックグラウンドの方たちが、その強みを活かして相互に連携するという部分ではまだまだやるべきことがあるように思います。

親が就業継続できるよう、保育所待機児童問題は喫緊の課題

子育てについて、問題と思っていること。行政ができることは?

喫緊の所では、保育所の待機児童問題ですね。女性の活躍をすすめる上で、育児をどうサポートしていくのかというところが大きな問題であり、重要なのが保育所の整備です。子ども・子育て支援新制度がスタートしましたが、待機児童が常に一定数いるという状態が続いています。保育サービスに財源を投入することは、将来への投資と考えるべきだと思います。当然、父親の子育て参画を進めて、男女が子供を持ちながら普通に働けるようになることが大切です。

企業ができることは?

働く人の状況によって、働き方に柔軟性を持たせることですね。労使の対話の中で、育児、介護、家庭について労働者と一緒に考えていくことが大切です。現在の人材不足という経済環境は、働き方改革を進める追い風になります。非正規雇用者を含めて、働く人のニーズに対応している企業しか生き残っていけなくなるでしょう。

NPOができることは?

NPOは重要な役割を果たしていると思います。子育て応援とうきょう会議は多様な団体から構成されていますから、お互いに不足している部分を連携して補っていくといいのではないでしょうか。子育て支援の団体は地域の活動中心になっているところも多く、もう少し組織だって活動できるといいと思います。

個人としてできることは?

繰り返しになりますが、夫婦で子育てをどうしていくのかともっと話すことが大切です。子育てに関して、夫婦で話し合っているかというと、意外と話し合っていないことはデータでも明らかになっています。また、夫婦で話し合っている場合には、夫が育休を取ったり、育児にかかわる時間が長い傾向にあり、相関関係が見られます。子供が生まれる前から夫婦で話しておくことが必要でしょう。男性が必ず育休を取らなければならないということではなく、二人で話し合った結論として女性が育休を取るという選択をしてもいいと思います。