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パパの子育ての、今とこれからを語ろう!

Part6 平井康行さん 子育て社員が働きがいのある企業へ

平井康行さん

子育て応援とうきょう会議実行委員

1975年日本経営者団体連盟(日経連)入職。2002年の経団連との統合を経て、東京経営者協会事務局長、2013年から現職。日経連時代に「少子化問題に対する提言」を取りまとめる。

若い世代でも、まだまだ役割分担意識が根強い

父親の育児の現状を、どうとらえていますか?

個人的には、通勤途中で、保育園へ送っている母親の姿が依然として目につきますね。でも、最近では、父親が送り迎えする姿も見かけるようになりました。それなりに、父親の育児参加は進んできていると思います。今朝も、傘を差したお父さんと雨合羽を着た女の子が歩いているのを見かけました。
ただ、平日の育児家事の分担はまだまだではないでしょうか。 週末に出かけると親子連れの姿を見かけますが、お母さんがベビーカーを押しながら荷物もたくさん持っている横で、お父さんが手ぶらで歩いていたり、電車からホームにベビーカーを下すのを手伝わないお父さんを見かけることがあります。そのような様子を見ると若い世代でも、まだまだ役割分担意識が根強いのかなと思います。

父親の子育ての課題は?

働く女性も増え、夫婦共働き世帯が一般的な社会になりつつあります。そうなると、平日の家事育児の分担が課題になってきます。若い親世代が突然に意識を変えることは難しいですし、ましてや一人っ子が増えて、「家事手伝いより勉強優先」の家庭もありますので、子供の時から男女を問わず家事を手伝うような家庭環境も大事でしょう。
振り返りますと、我が家の場合は、私は料理ができないので片づけをやっていました。妻からすれば、まだまだと思っていたかもしれませんが。やはり人間は学習しないとできない部分もありますからね。意識して、家事を子供と一緒にやることも必要だと思います。
また、当時は紙おむつの普及したての頃かと思いますが、布おむつをトイレで洗ったり、お風呂に入れて寝かしつけるのも私の役目でした。布おむつを振り洗いして……なんて、最初は「え~こんなことやるの?」みたいな抵抗感がありましたけどね(笑)。寝かしつけの時は、『きんぎょがにげた』とか『きかんしゃやえもん』などの絵本を読み聞かせしていました。

「子育て社員が働きがいのある企業」へ

企業の働き方は、どう変えていくべき?

日本の企業は、誤解を恐れずに言えば、これまで低生産性を長時間労働で補うという働き方だったかと思います。欧米の技術を日本風に工夫、改善してキャッチアップし、それで成功してきたと言える面もあります。しかし、今では世界のフロントランナーになったにもかかわらず、依然として働き方はこれまでのままであることが問題となっています。
そのような意味では、働き方の見直しは経営戦略と密接な関係にあると思います。トップの方針、関与が求められることになります。トップが新たな経営戦略を出し、その両輪として働き方の変革があると思います。ここに、わが国の経済社会の再生への課題があるといえます。

ライフを充実させることが、仕事に生きてくる

解決のためにどうしたらいいか?

生涯現役社会の声も聞こえる中、長時間労働を続けていくことでは個人や生活の時間を持つことができず、創造性も生まれません。
ワークライフバランスも、私は仕事と生活が別々だとは思っていません。生活の中でも仕事のことを考えることがありますよね。生活、余暇の時間を確保することで仕事での新しい発想が何かの瞬間に閃くことがある。買い物に行って人の流れを感じたり、お店で売られているものを見たり、誰がどんなものを買っているのかをキャッチしたり。ライフを充実させ消費行動にアンテナを張ることは、仕事にも生きてきます。
ワークライフバランスは、これまでは「子育て支援」という発想でしたが、今は「子育てによってキャリアを断絶させない」という考え方に変わってきていると思います。子育て中の従業員に配慮するというより、継続して活躍してもらうという方向に発想を変えていくことが大切です。先進的に取り組んでいる企業のように子育て社員が働くことに優しい企業から、「子育て社員が働きがいのある企業」へと進化していくべきでしょう。
日本の企業はまだ横並び的な発想が見られますが、これからは自社の業種、業態や実態、実情に応じていろいろな働き方がある、工夫や改善もいろいろな取り組みがあっていいと思います。朝型勤務もいいですし、子供連れで働くというスタイルもあります。みんなが同じようにやるのでなく、経営者が自社にあった働き方を作り上げていく時でしょう。

子育て応援とうきょう会議は、都内をまとめるコーディネイト的な役割を

子育て応援とうきょう会議実行委員をしてきて、思うことは?

東京都は、各区市町村と同じような自治体としての役割と、都内の各自治体の取り組みを尊重しつつ良い意味でのそれらをまとめるコーディネイト的な役割の2つを持っていると思っています。実行委員会に参加して思うのは、前者の方が強いですね。各自治体が行うような子育て支援イベントを単に同じようなレベルで大規模で行うのではなく、区市町村と連携しつつ総合的、総括的な取り組みとしての位置付けをもって行なうなど都内をまとめるコーディネイト的な役割にシフトしていっても良いのではないかと思います。各区市町村では、保育所の待機児童の解消が最優先課題となっていますが、待機児童の解消も含めたそれ以外の子育て支援も行っているので、それぞれの区市町村が独自にそうした情報を収集する方法もありますが、都がそれら自治体に代わって情報を収集し、提供、共有することを通じて社会的な機運の醸成にも役立つのではないか。その際、各区市町村が行っていることを尊重しつつ支援し、情報提供し広げていく。いろいろなNPO団体もありますから、行政やNPO同志の交流機会の拡大などのコーディネイト機能を発揮していくといいと思います。

子育てについて問題と思っていることは?

子育て環境をもっと整備していく必要がありますね。保育所の待機児童の4割が東京に集中していると言われていますが、待機児童を解消すると、また潜在的な待機児童が顕在化するということを繰り返しています。こうした目先の対応だけではなく、もう少し先を見据えてスピード感を持って子育て環境の整備をしていくことが必要なのではないでしょうか。
保育所に入れなくて仕事を辞めなくてはならないとなれば、次の結婚や出産の適齢期の世代は出産を諦めたり、そもそも結婚しなくなるでしょう。子育てを社会化していくことが大切です。子育てを支える機能として、保育所はもちろん、子供の居場所作りや教育的機能も整えていく必要もあります。今、スピード感を持って整えていくことが、次の世代が希望を持って子育てすることにつながると思います。

企業やNPO、個人ができることは?

「何でも行政がやる」という時代は終わりました。企業もNPOを活用すべきですね。企業内託児所も人材の確保も含めてNPOの力を借りるという方法もあります。もっと知恵を出し合うことが必要です。
個人としては、夫婦で役割分担について話し合ったり、互いの仕事を調整するなど、コミュニケーションを取ることが必要ではないでしょうか。

父親のこれからの子育てとは?

子育ては命の継承だと思っています。縁あって家族になり、次の世代を育むことに責任を持って携わる。子供によって親も成長させてもらう部分もあります。子育ての負担感だけを感じるのではなく、育てる喜びを分かち合うことが大切ではないかと思います。