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ワーク・ライフ・バランスはワークハードに、ライフハードに

Part9 川島高之さん ワーク・ライフ・バランスはワークハードに、ライフハードに

川島高之さん

NPO法人コヂカラ・ニッポン代表。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。

1987年、三井物産入社、現在は系列上場会社の社長。子育てや家事(ライフの視点)、商社勤務や会社社長(ビジネスの視点)、PTA会長やNPO代表(ソーシャルの視点)という3つの視点を融合させた講演活動を行っている。長男は18歳。

リアルイクメンは、まだまだ少ない

父親の育児の現状を、どうとらえていますか?

ここ数年でイクメンが増えたのは間違いありません。しかし、週末に子供と遊んだりはするけれど、育児の大変なところはママ任せという父親もまだ多い。育児や家事と仕事を両立する『リアルイクメン』はまだまだ少数派だという認識です。
その一方で、「男性だって、育児のために休んで当然でしょ」と言うような権利主張型のイクメンも出てきています。私自身、上司として部下にいつも言っているのは、男性・女性に関わらず、やることはやらなきゃだめだということ。『ワーク(仕事)ハード、ライフ(子育てや家庭)ハード』でいくべき。それが嫌だったら、ワークライトな職場はいくらでもあるから、そこにいけばいいし、それ自体は個々の生き方なので否定はしません。ただ、私の部下には、ワークもハードにやってもらっています。

講演でも、「ワークハードのほうがおもしろいぞ。ライフもワークも両方充実したほうが、人生はおもしろいから、子育てのために仕事が片手間というのはもったいない。また、仕事のために子育てが片手間なのももったいない」と話しています。

仕事は、限られた時間内で最大のパフォーマンスを

ご自身は、ワーク・ライフ・バランスをどのように実現されていますか?

私自身、試行錯誤はずっとしているけれど、それは「どのくらい私生活の時間をとれるか、仕事をもっとやろうかどうしようか」ということではありません。『ライフ(子育てや家庭)もソーシャル(地域活動や社会貢献)も、主体的に参画する』というのが自分の中の所与の条件。そこから引き算して残った時間内で仕事をする。だから、仕事は限られた時間内でいかに最大のパフォーマンスを出すか、がカギになります。

ライフもソーシャルも軽視して仕事ばかりの人には負けたくないから、常に『2倍の生産性(成果)』を意識して仕事に臨んでいます。集中力と退路を断つ気迫があれば、結構できるものですよ。
ソーシャル(地域活動や社会貢献)に参画する意義とは?

最初はわが子の子育て。そこから地域のことへ、そして社会のことへ。関心や活動の場は必然的に広がっていきました。子供の年齢が高くなるほど、直接的な子育てから間接的な子育てに移行し、現在は、社会活動が中心になっています。そうした活動の大きな原動力の1つが、「わが子のために、社会をなんとかしたい」という気持ち。「長男が就職するころには、仕事も家庭も当たり前に楽しめる社会に1ミリでも近づけたい」というのが、モチベーションの半分くらいをしめています。

ワーク・ライフ・バランスと収益は連動する

企業のワーク・ライフ・バランス推進の動きは?

大企業も中小企業も、働き方を変えようとしているところは増えています。2015年には女性活躍推進法(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html)が成立して、この動きが加速しているとはいえ、私の印象としては、まだ2合目くらい。まだまだゴールには程遠いです。
私の経験値から、『ワーク・ライフ・バランスと収益は連動する』と自信をもって言えます。実際に自社で、働き方の改革を行った結果、ワーク・ライフ・バランスの充実と利益は比例して上がりました。

「ワークにかかる時間を減らす!」と決めてしまえば、会議を短くしようという意識は高まるし、効率は上がる。営業部門だったら、「3回クライアントに行って決めてきた取引を、1回行くだけで決めよう!」という気迫が出てきます。1回で決めるためには、入念な下調べをして、しっかりロジックを立てて、粘り腰で契約を取ってくる。それまで足と時間でかせいでいた営業のやり方を、変えることになるでしょう。

ワーク・ライフ・バランス実現のための2つの覚悟

個々がワーク・ライフ・バランスを実現させる秘訣は?

部下には、「ライフやソーシャルは所与の条件で、これだけは絶対やるんだ!と決めてかかれ」と言っています。最初にライフやソーシャルの時間を確保するんです。
仕事は、平日が24時まであると思うからいけない。たとえば「平日は19時まで。週末はそもそもない」と思って取り組めば、その中で仕事を終わらせることができます。それを、「深夜残業してもいいかな」「土日もやればいいか」と思うから、ずるずる働いてしまうわけです。
決めた枠内で集中力と気合をもってすれば、できるんです。それでもできなかったとしたら、「自分は、しょせんそこまでの能力」と思えばいい。そこは開き直りも必要でしょう。

ワークハード、ライフハードのライフワークバランスを実現させるには、2段階の覚悟が必要です。1つ目は、たとえば「残業しても20時まで」「週末は仕事をしない」など、退路を断つ覚悟。2つ目は、決めた時間内で必死に頑張ってもオーバーフローしたものは、「しょせんそこまでだ」と思って深追いしない覚悟です。
行政に期待することは?

税収入は限られていますから、子育て・次世代育成を重視した予算配分にするべきです。高齢者政策も犯罪軽減も経済復興も、いい人材が育てばすべて解決するはず。長期目線で考えて、根源となる子育て・次世代育成にお金を使うようにしないといけないでしょう。

これは企業に関しても同じこと。長期目線で次世代育成を行うことが、会社経営のプラスになります。経営者は目先の利益だけを追わずに、社員の働きがい、働きやすさ、能力を高めることに配慮する必要があります。