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子供は、お父さんとお母さんに見てもらうこと、褒められることが大好きです

柊澤章次さん 子供は、お父さんとお母さんに見てもらうこと、褒められることが大好きです

柊澤(ひいらぎざわ)章次さん

平成6年から社会福祉法人めじろ会めじろ保育園園長。

東京都社会福祉協議会保育部会部会長、子育て応援とうきょう会議構成員などを務める。保育現場で、子供たちや父親・母親とリアルに接し、現状の保育に関わる働き方や社会環境の問題改善に努めている。

育児を「楽しむ」イクメンが増えている

保育園では、どのようなお父さんが多いですか?

二十数年前は、保護者会などでは「黒一点(こくいってん)」でやむにやまれずお父さんが来ている、といった状況もありましたが、今では普通にお父さんが一人で来られたり、お母さんと一緒に参加する「イクメン」が増えています。毎日の送り迎えや、入園式・卒園式などの行事が平日でもお休みをとって夫婦で参加していますね。

「イクメン」たちは楽しんで参加している?

行事に参加したお父さんたちは「楽しかった」という感想の人が多いですよ。そういったイクメンが増えている背景には、社会の変動が影響していると思います。年配の方の中には、今のお母さんたちに対して「夫に甘えている」「私たちの時代には子育てに有利な制度がなかった」と言う人もいます。ですが、昔は2世代、3世代が同居して家庭内で子育をフォローする体制ができていたし、近所にもおっかないおじさんやおせっかいなおばさんがいて地域全体で子供を見る環境があった。今はそれが希薄になっているから、お母さんがちょっと美容院に行きたくても保育園の一時預けを利用しなくてはならないですよね。昔とは社会構成が違うことを、社会が認めてあげることが必要だと思います。

苦い経験もあります

いま国が出生率1.8を目標にしていますが、お母さんだけでなくて、お父さんも育児に関わることができる、ゆとりある働き方にならないと難しいでしょうね。 なんて言ってますが、私も前職では、ほとんど家にいないで働いているいわゆるモーレツタイプで(笑)。朝、玄関で娘に送り出されるとき「また来てね!」と言われて……あれには参りました(苦笑)。同じ家に住んでいるのに、顔を合わせる時間がほとんどなかったですね。

未来のイクボス※1に期待

働き方が変わるのは、難しい?

企業からすると、子育て中の特に母親を雇うことはまだリスクだと捉えられています。本来なら、子育て中の両親には就労を制限してあげたり、所得の援助をする政策があっていいと思いますが、なかなかそうならない。だけど、希望はあるんですよ。子育てを楽しいと感じている「イクメン」たちが、数年たつと「イクボス」になっていく。育児を経験したことのある男性が管理職になれば、「子供が小さい時は今だけだから、楽しめよ」と理解を示して、小さい子供のいる男性の働き方をサポートしてくれると思うんです。 たとえいくらお金を払っても、時間は戻りませんからね。育児中のお父さんやお母さんからしてみれば、大変なのは本当に今だけ。なので楽しんでもらいたいですね。

遊びは日常の延長でOK

お父さんだからできる、子供との関わり方はありますか?

大人のものさしで満足度をはからないほうがいいと思います。時間とお金をかけて苦労したぶん、子供が喜んでくれるとは限らないんです。どうやって子供と遊んだらいいか分からないお父さんもいると思いますが、肩の力を抜いて、コンビニなどでお弁当を買って、近くの公園で一緒に食べる、そういう普段の延長のような遊びをしてもらえるといいなと思いますね。
また子供は、お父さんやお母さんに褒めてもらうことが1番嬉しい。そして伸びていきます。これは私たち保育士と長い時間を過ごしていても勝てないところで、お父さんやお母さんの顔を見ると、ぱっととびきりの笑顔になるんですよ。子供を叱るときは、お父さんとお母さんで共通のルールを決めて接してあげてください。

お母さんとのかかわり方で大事なことのアドバイスをお願いします。

忙しくてお母さんを手伝えない時は「大変だね。ありがとう。」とひとこと声をかけてあげてください。12年前のアンケート※2では、何もしなくていいからそれだけでいい、という意見もありました(笑)。そしてイクメンが増えているといっても、子育てをしている割合は、まだお母さんが多いです。ですから、お母さんが子供や子育てに対して単眼的になっているとき、別の視点でアドバイスをしてあげるのもいいと思います。それが発端で喧嘩になることもありますが……(笑)。

子供の声は騒音ではない。

東京都社会福祉協議会の部会長として今後していきたいことは?

先にも触れましたが、いまは子供の数が減って地域で子育てをする環境が整っていないので、子供の声が珍しくなっています。でも、子供の声は騒音ではない。当たり前のことだと伝えていきたいです。

※1 イクボス……部下の育児やライフスタイルに理解のある管理職のこと。

※2 平成16年に実施された、東京都社会福祉協議会保育部会調査研究委員会による「保育園を利用している親の子育て支援に関する調査報告書」。