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幼児期は、人の“土壌”を作る大切な時期

幼児期は、人の“土壌”を作る大切な時期

友松浩志さん

東京都私立幼稚園連合会会長。神田寺幼稚園理事長・真理学園幼稚園園長。神田寺幼稚園の母体「神田寺」は千代田区神田の唯一の寺としても知られ、神田寺の住職としてもお勤めを行う。

都心回帰で、都心では子供が増えている

都心にある、神田で唯一のお寺「神田寺」が母体の神田寺幼稚園のことを教えてください。

 神田寺幼稚園は、昭和25年に開園し今年66年目を迎えました。私の父が園を開き、私も3歳から通いました。現在はバス通園ができることもあって、文京区、台東区からのお子さんが大半を占めていますね。開園当時はベビーブームもあって、今は想像できないかもしれませんが、この辺りも子供で溢れていました。どの幼稚園も軒並み満員で、小学校もたくさんあったんですよ。1969年の東京オリンピックの頃から、段々と子供の数が減って、バブル崩壊の頃が一番少なかったように感じています。最近は都心回帰が起こって、都心では子供が増えています。高層マンションが立ち並ぶ江東区や港区は顕著で、定員いっぱいの私立幼稚園もあります。

幼稚園での父親の育児参加はいかがですか?

 びっくりする位、今は父親が幼稚園行事や、送り迎えに関わるようになりました。昔は、入園式にも父親が来ることがほとんどありませんでしたが、20年位前からは入学園式は100%、運動会、発表会、保護者の参観日などに、父親の参加が見られます。今の子育ては「夫婦一緒」というのが浸透しているように思います。ひと昔前の「父親は仕事で稼ぐ人」、「母親は家で家事や育児をする人」という役割分担は薄まって、女性が働くことも当たり前になり、家のお財布もお互いから出しあう、父親も有給を取って幼稚園の行事に参加しています。幼稚園の送りは母親で、お迎えは父親という、どちらかを父親が行っているご家庭も結構ありますね。

「子育ては苦労もありますが、得るものも多いです」と語る友松浩志さん

「子育て」は、人の幅が広がる経験

父親の子育てについてお聞かせください。

 父親の役割、出来ることは「強く、負けない気持ちや心構え」を伝えることや、「運動的なことをする」でしょうか。母親は子供を優しく包みこむ役割があると思っています。持論ですが、女性に比べると、男性は子供との接し方を経験している人が少ないように感じます。男性は子供を育てることで、小さい子供に対して優しくすることを覚え、父親自身が人間的に成長する機会を得られると思います。そして、人の幅も生まれると思います。会社で部下を育てる時や、チームで動くプロジェクトなどにも、子育ての経験は必ず活きてきます。部下への助言も、お子さんが生まれてから変わった方もいるのではないでしょうか?
 子育ては、大変です。子供は親の思うようになりません。損得ではなくて、生きていくことの幅をもらえる、気づきをたくさんもらえるのが子育てだと強く思います。

保護者参観で見て欲しい「子供の外の顔」

保護者参観に参加する父親が増えているそうですね。

 そうですね。保護者参観は、幼稚園でのお子さんの様子を見る機会になります。ここで見て欲しいのは、「子供は外の顔を持っている」ことです。家では甘えん坊のお子さんも、幼稚園にいる時は、他のお子さんと一緒に行動することになります。幼稚園は、子供達が社会性を経験し、学ぶ場所です。どんな風にお友達と遊んでいるか、先生の話を聞いているか、「ごめんね」が言えるか、我慢する場面でできているかなど、ぜひ見てください。
 つい、親はその日の参観での工作やお遊戯ができる、できないで見てしまいがちですが、お子さんが自分のペースで頑張っていることを見て、おうちでたくさん褒めてあげてください。

運動会の練習に励む神田寺幼稚園の年長さん

幼稚園は、親子の育ちの場、そして、土壌をつくるところ

今の子育てについて、思われていることをお聞かせください。

 昔は祖父母や両親、近所の方などから育児を教わる機会もありましたが、最近はとても減っています。幼稚園はお子さんの場でもありますが、親御さんの場でもあります。同じぐらいのお子さんを育てている同士のネットワークづくりができ、先生方への育児相談も小さなことから気軽にして欲しいです。親御さんも、お子さんと一緒に子育てのことを学べたらと思っています。
 幼児教育は、人の“土壌”を作ります。その土に種を植えていくのが小学校の役目です。種を植えるのに、土が硬かったり、水がなくてカラカラよりも、ふかふかしている土がいい。栄養のある土を作るには、時間がかかります。幼稚園での毎日の生活の中で、一つひとつ経験を積み重ねていくことが必要です。ぜひ、幼児期に、人の話を聞くことや、自分のことを表現できるなど社会性を身に付けて欲しいと思います。

幼稚園の子供達が種から育てている花

東京都私立幼稚園連合会の会長として、今後していきたいことはありますか?

 連合会に加盟している東京都の私立幼稚園は、以前1000園以上ありましたが、現在は約800園です。中でも40年、50年続いた園が閉園になるケースが増えています。保育園の待機児童問題がクローズアップされていますが、待機児童の年齢は0~2歳がメインです。3歳以降の預かり保育が、待機児童問題解消の担い手になっていることをぜひ知って欲しいです。
 最近は、早朝保育や預かり保育を実施する幼稚園も増え、保育園の保育時間とあまり変わらなくなってきています。保育園の新設も必要ではありますが、長年地域に親しまれている既存の幼稚園をもっと活用できるような仕組みができれば、待機児童問題の解決に役立つことができるのではないかと思います。