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パパだけでなく、既存の枠組みではカバーできない多様な家族形態を支援

パパだけでなく、既存の枠組みではカバーできない多様な家族形態を支援

町田 彰秀さん

出版社、婦人靴製造業、ベビー靴製造販売を経て、手作りベビーシューズやキットの製造・販売に従事。自身の経験より、2010年非営利団体A-Stepを発足させる。足立区中心に様々な形態の家族が共存できる地域づくりを目指して活動中。日本心理学会認定心理士。家族研究・家族療法学会会員。一般社団法人ねっとワーキング所属ペアレントメンター。

町田 彰秀さん町田氏


当事者自らが状況を変えなければ、世の中はよくならない

発足の経緯などを教えてください。

町田さん:自分自身が親族の中途養育を経験したのがきっかけです。最初は、さほど変わったことをしている自覚はありませんでしたが、徐々に「中途養育」は様々な問題があることに気づきました。行政や資料をあたってみたり、ウェブ上でステップファミリー当事者とも知り合いましたが、その方のブログが荒らされているなど苦労されている様子を見て、社会からの偏見があるのでは、とショックを受けました。
その後、里親子支援のアン基金の懇親会で相談する機会があり、「問題を抱えたら、その当事者が問題を解決する必要がある。もし、自分はそれほど困っていないので何もしなくてよいという態度をとれば、本当に支援を必要としている同じ立場の者を虐げることに加担しているのと同じ」という言葉に考えさせられました。その後、大学でこども心理について学び、活動につなげるためにA-Stepを任意団体登録しました。  


イベントでの親子の様子 ゆる育児キャンペーンあだち イベントでの親子の様子 ゆる育児キャンペーンあだち


ステップファミリーへの社会的偏見や、当事者達の養育プレッシャーをとりのぞき、住みやすい地域作りを目指す

現在の活動について教えてください。

町田さん:過去には広域の家族イベント(特定の家族形態「ステップファミリー・シングルマザー等」向けのイベント)を開催していましたが、最近は地域活動を中心にしています。月1回の「ゆる育カフェ」とベビー小物を皆で作る「てづくりくらぶ」、児童虐待防止月間に他団体と協力して「ゆる育児キャンペーン」、多様化する家族支援について考える不定期での「フューチャーセッション」を開催しています。その他、個別に傾聴を通して家庭内の様々な課題を解決に向けて支援しており、発達障害に関わる養育者支援やひとり親家庭支援など、縦割りの行政サービスでは分断されがちなケースを地域課題として捉えなおすことを目標にしています。
「ゆる育カフェ」については、問題がかなりプライベートなため本当に悩んでいるステップファミリーはなかなか参加しにくかったり、子連れだと子供に関する相談ができないという問題がありますが、個別相談へのきっかけになっています。「私は大丈夫だけど。」と言いながらも実は支援を必要としている人達が、イベントを機に社会とつながることで自己受容の始まりになると信じて今後も続けていきたいです。家族ネットワークのあり方として最近よく取り上げられている「弱い紐帯の力」を活かせるとよいと思っています。
近年、ステップファミリーの数は増加傾向にあります。一見すると継父より継母の方がストレスが大きいように思われますが、継父(あるいは同居の男性)の虐待事例が多いのが事実です。これは、実際の虐待事例は大半が実母(女性) であるという点と相し反しており、詳細な調査が必要な問題だといえます。これまでの経験から言えるのは、男女の違いが強く表れるという点で、ステップファミリーはジェンダーバイアスの弊害を最も受ける家族形態なのかもしれないということです。他人の子を自らが育てるのですから、生物学的に考えても養育ストレスは他の養育形態とは異なるでしょう。加えて、養育についての根源的な問題である「子供を育てるのは実親(母親)」 という認知の歪みは以前よりもむしろ強まっているようにも感じます。
ステップファミリーは血の繋がりのない難しい子育てに取り組んでいますが、その大変さは社会的に認識されず、むしろ心ない偏見によって居場所がなくなり、そのことが子供の発達に影響を与えているような気がします。A-Stepは、当事者の周辺から見方を変えてもらい、当事者自身も「自分の子供でなくても、愛さなくてはならない」「通常家庭の養育者よりも、強い人間でなければならない」等の思い込みにとらわれない自分らしい子育てをしてもらう応援をしています。孤独な養育を強いられている中途養育全体を応援することは、その元で生活している子どもの成長をサポートすることにつながるはずです。


月1回程度開催「ゆる育カフェ」のお知らせ 月1回程度開催「ゆる育カフェ」のお知らせ


「てづくりくらぶ」で親子そろって手作り体験中 「てづくりくらぶ」で親子そろって手作り体験中


育休取得を経験したパパ達が、社会を変えていく

活動に参加されるパパ達を通して、感じられることはありますか。

町田さん:A-Stepの活動には、独身者やひとり親参加者も多くいますが、パパだけの会やイベントは、男性の本能である競争心や頑張りを認めてほしいという欲求を満たすのが難しく、今は、パパにしぼった活動はあえて行っていません。活動を通して、育休を取得したパパ達をみていて思うのは、一度でも「育休中」というマイノリティー経験をすることで社会意識が芽生え、育児に関する意識や社会の一員としての感覚がとても優れてくるということです。育休経験者が少ない現状では、具体的効果を感じることは少ないかもしれませんが、育休取得の義務化が、当たり前の労働環境になればパパ達の活動は現在とは全く異なるものになるでしょう。そのためにも、まず会社が変わらなければなりません。時代は変わりつつあり、パパ達が社会を変えていくという兆候を、活動に参加しているパパ達から確かに感じます。


縦割り社会の壁を壊すために理解を求めつつ、中途養育教育プログラムを作っていきたい

今後の展開や課題を教えてください。

町田さん:A-Stepの地域活動目標のひとつでもある「縦割り社会の壁を壊す作業」は既存の組織やコミュニティーの中で生活する人達には理解することが難しいようで、彼らの理解と共感を得ることが課題だと思います。壁を作ることで実は自らが加虐者になっていることは自覚しにくく、「自分には関係ない」となりがちなところにどう気づいてもらうか、壁のないフラットな社会の良さを伝えられるよう工夫していきたいです。
また、国連では「代替養育者」として「公式(施設職員、里親)」と「非公式(ステップファミリー、親族など)」を定義していますが、現状は「非公式な代替養育者」は慈悲の志を賞賛されつつ、支援策の対象から外れています。例えば親族養育の里親認定を簡素化するなどの経済的支援に結び付けることは簡単ではないとは思いますが、教育プログラムを策定するなど、自分が子育て中に欲しかった講座や学習コンテンツを作っていきたいです。「子供って、実際に育ててみるとイメージと全然違って辛い」「中途養育がこんなに大変だと思わなかった」という悩みを減らし、中途養育者とその子供達の成長の助けになれればと考えています。


※1 中途養育者・・・・・・親の離別や死別等で子育てを引き継いだ親族、ステップファミリー、里親、養子縁組した人などなんらかの縁により、中途からこどもの養育に携わることになった人々。


※2 ステップファミリー・・・・・・子連れ再婚による継親の家庭。


A-Step:http://astep3.org/
A-Step facebook:https://www.facebook.com/astep3.org/
中途養育者サポートネット:http://cysupport.net/
ゆる育児キャンペーン:https://yuruikuji.jimdo.com/