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子育てを主体とする主夫を中心に、悩みや思いを共有しネットワークでつながり、多様な家族のあり方を支援

育てを主体とする主夫を中心に、悩みや思いを共有しネットワークでつながり、多様な家族のあり方を支援

浅田 直亮さん

子育て主夫の交流会やイベントを開催し、メーリングリストやSNSを使って子育て主夫同士のつながりを作る活動をしている子育て主夫ネットワーク「レノンパパ」共同代表の浅田直亮氏にお話を伺いました。


子育て主夫ネットワーク「レノンパパ」
2011年4月、2人の「子育て主夫」によって設立。2011年度「子育て応援とうきょう会議」のネットワーク形成モデル事業。共同代表は、東京都練馬区在住の浅田直亮氏と同清瀬市在住の梶勇基氏。


子育て主夫ネットワーク「レノンパパ」共同代表:浅田 直亮(あさだ なおすけ)
1958年生まれ、大阪府出身。ドラマ、映画のシナリオライターやシナリオ専門学校の講師として活動していた2007年に長男が誕生。長男が1歳2カ月の時、妻が育休から仕事に復帰し、主夫になる。現在も週に2回、シナリオ専門学校の講師を務めている。妻、9歳の長男の3人家族。


浅田直亮氏 浅田直亮氏


動機は、気軽に相談できる相手を見つけにくい「孤独な思い」から、主夫ネットワークを発足

レノンパパ発足の経緯を教えてください。

浅田さん:私はもともと自由業なので、一般企業に勤める妻の育休中は夫婦2人で子育てをしていました。子供を保育園に預けようにも、僕が仕事に行くのは夜や週末なので時間が合わないということで、妻の復職後、自然な流れで主夫になりました。しかし育児と家事に専念するのは本当に大変でした。子育ての悩みを気軽に相談できる相手が欲しくなって、児童館や公園に行ってみたところママ達ばかりで、顔見知りになっても輪に入って相談できる関係になるのが難しく、たまにパパを見かけても、こちらが主夫とわかると相手が引いてしまい、孤独を感じていました。一方、休日に公園に来ているパパ達や育児を楽しむイクメン達と話しても子育ての苦労が伝わらず話が嚙み合いませんでした。結局、同じ立場の子育て主夫を探してみてもなかなか見つからず、社会から自分達だけが取り残されているように思いました。そうした中、それぞれの悩みを相談していた子育て支援団体の仲介で梶氏と出会い、意気投合して任意団体「レノンパパ」を立ち上げたんです。


子育て主夫同士でつながり、ポジティブに子育てに取り組み、社会に認識の変化を促す

活動内容を教えてください。

浅田さん:対象とする子育て主夫の定義を「母親以上に子育てを中心に行っている父親」とし、仕事をしている・していないは問わず、子育てを主体としているかどうかで考えることにしました。活動の目的は、①子育て主夫のつながりの場を作る、②ポジティブに子育てに取り組めるように、子育て主夫の不安や悩み、喜びややりがいを共有する、③子育て主夫の存在や子育てに取り組む姿勢・経験を積極的にアピールし、「子育て主夫」さらには「子育て」や「家族のあり方」に対する社会の認識の変化を促す、の3つです。
2011年8月に、子育て主夫に限定せず、一般のパパママにも声をかけ、交流しながら子育てを考えようという主旨で東京都庁で「レノンパパ・サミット」を開催しました。サミットは主夫に対するマイナスイメージや先入観を変えていくことを目的としています。サミットは毎年テーマを変えて続けており、2016年は「主夫VS女子大生」のディスカッションを行い、「自分に海外転勤の話がきたら、夫を帯同する?」「交際相手が主夫になりたいと言い出したらどうする?」など、聴衆の男子学生達も交えて盛り上がりました。
この他、主夫の交流会は2カ月に1回のペースで続けており、新規の参加者も来ます。また、行政や大学の要請を受けて、主夫講座を行うこともあります。情報交換やコミュニケーションには、メーリングリストが大きな役割を果たしています。


2016年レノンパパ・サミットのチラシ 2016年レノンパパ・サミットのチラシ(出典:レノンパパ)


2016年レノンパパ・サミット 2016年レノンパパ・サミット「専業主夫VS女子大生」、白熱の議論(出典:レノンパパ)


主夫交流会 和室で子供を遊ばせながら子育て主夫交流会(出典:レノンパパ)


最初から主夫になろうと考えていたわけではなく、夫婦間で独自のバランスを求めて日々試行錯誤

活動の手応えや参加されているパパ達の声をきかせてください。

浅田さん:参加するパパ達は、在宅で仕事をこなしながら主夫をする人、専業主夫、学生からそのまま主夫、難病を抱えながらの主夫、元会社員の主夫などバラエティに富んでいます。共通するのは、家族の中で家事と育児と仕事のバランスをそれぞれの事情に合わせてうまくとっているという点です。男性が仕事、女性が家事・育児と分担する家族が多い中、男性が子育て主夫を担うモデルは少ないため、自分達で工夫し、夫婦間でワーク・ライフ・バランスを上手に作り出す必要があります。家族の数だけスタイルがあり、実践あるのみで独自の生き方を貫いている様子は心強いです。
一方、主夫の方の中には、人見知りで引っ込み思案な方が結構おられます。そんな方々にこそ、活動に参加してもらい、「こんなに共感できる仲間がいるんだ」と知ってもらいたいです。
主夫パパ達に共通して言えるのは、最初から主夫になろうと思っていた人はおらず、子供が産まれてからはじめて「主夫」という生き方を検討したということです。「主夫の妻達が語る」というイベントで感じたのですが、パパ達自身が主夫になろうと決意したというより、いろんな条件を加味した結果、自然に主夫になったケースがほとんどです。
私もそうですが、子供が苦手もしくは家事が苦手という人も多いです。主夫といえば家事や育児が得意なイメージを持たれるかもしれませんが、決してそうではありません。無限に続く家事のループ感や子供以外に話し相手が欲しい等、主婦と同じいらいらや悩みを抱え、孤立感を感じながらいろんな形で試行錯誤しながらがんばっている人達だと理解していただければと思います。


主夫は、夫婦でバランスよく子育てに関われる形としておすすめ

「主夫が増えると社会が変わる」というお考えをお持ちとのことですが。

浅田さん:家事と育児をひとりでこなすママを指して「ワンオペ育児」という言葉が最近聞かれますが、このような状態を改善するには、イクメンを作るよりも主夫を作るほうが効果的だと思います。主夫の夫がいても、どんなに忙しくても、子育て主夫家庭の働くママは子育てをしないわけではなく、積極的に子育てをしています。子育て主夫家庭は、夫婦偏りなく子育てに関われるバランスの良い形なのかもしれません。
私は長時間労働規制よりも、夫婦の出勤時間を遅くすることだけでも家族で朝の時間を共有したり、PTA等の地域活動に夫婦で参加することができると思います。また、昨今問題になっている保育園入園については、男性が育児休暇をとれば大幅加点にする、という案はいかがでしょうか。女性1年間に加えて男性1年間の合計2年間の育児休暇をとることで、保育園の定員オーバーを改善できますし、男性が育児休暇を取得することで子供が保育園に入れる確実性が高まれば、女性の復職率も上がり、雇用主にとっても益になるわけですから、育休取得率上昇の後押しとなりませんか?


既存の役割観にとらわれず、多様な「家族の形」を選択できる社会を目指して、主夫からの発信を続ける

今後の展開について教えてください。

浅田さん:団体名は、子育てのために一時音楽活動を停止したミュージシャンのジョン・レノンにちなんでつけました。子育てほどクリエイティブな仕事はないのに、社会の評価はまだまだ低いと思います。主夫だけでなく、子育てそのものの評価を見直してもらうためにも、主夫であることを胸を張って言えるよう、社会の意識を変えたいと思っています。
また、男性が「外で働くこと」に縛られず、主夫を選択すれば、その分女性にとっての働きやすさにつながります。固定的な家族像の枠にはまらず、柔軟に役割分担することは、今後の家族のあり方として必要性を増していくと思われます。もっと自由な「家族の形」を選択できるような社会を願い、実際の子育て主夫の立場ならではの説得力のあるメッセージを発信し、多くの方々に届けたいです。


子育て主夫ネットワーク「レノンパパ」:http://www.lennonpapa.org/index.html