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多様性を受け入れ、人が本来持っている可能性を引き出しながら子育てひろば支援を行いたい

多様性を受け入れ、人が本来持っている可能性を引き出しながら子育てひろば支援を行いたい

新澤 拓治さん

練馬区立大泉子ども家庭支援センター所長(社会福祉法人雲柱社が練馬区より事業委託を受け運営)。保育や子育て支援にかかわる著書多数。保育士時代に東京都父親ハンドブック(初版)作成に携わる 。子育てセンター実践研究会会員、 NPO法人びーのびーの 理事(横浜市港北区)、NPO 法人こどもの地域生活サポーターこぴあ監事(東京都江東区)、NPO 法人子育てひろば全国連絡協議会専門アドバイザー、浦和大学非常勤講師。

保育士としての経験を活かし、公共の子育てひろばを18年間支援

子育てひろば支援や指導に関わられた経緯を教えてください。

新澤さん:もともと父が園長をしていた保育園 に、1987年より保育士として勤めました。当時の子育てひろばは、保育園に併設されている場合が多く、もっと多くの人に開かれた公の子育てひろばを作り、法的な枠組みを整備して広めようという気運が高まっていました。そのような折、1999年に江東区子ども家庭支援センターみずべ地域ネットワーク主任として子育てひろば開設に関わったのを最初の経験として、子育てひろば全国連絡協議会などと協力をしながら現在に至ります。江東区の子育てひろばは、当時地域に根差した公共の子育てひろばを作ろうという珍しい試みで、全国から年間100件程度の見学者を受け入れていたこともあり、その後、関係者の指導をすることにつながっています。


大泉ぴよぴよ受付カウンター 大泉ぴよぴよ受付カウンター


育児やひろばに正解はない。多様性を受容する文化を大切にしたい

子育てひろばを運営される上で工夫されている点などについてお聞かせください。

新澤さん:子育てひろばは、様々な方が来られる場所として、どの親子も楽しく遊び、ホッとでき、安心できる居場所となることを目指しています。このような文化(雰囲気)を保つためにも、スタッフが多様性を受け入れることが大切です。子育てひろばや育児のあり方に正解はありません。子育てとはこうあるべき、というメッセージが強すぎると皆の居場所にはなりにくいものです。
もう一点挙げるならば、利用者の参加性や自己発揮を尊重していることです。最近の育児休業中のママ達は、自分達でお楽しみ会などのイベントを企画するなど活発です。育休中ママに限らず、自分達で何かを作り出すということは、育児中も「自分はこんなことができるんだ」という自信につ もながります。これまでの社会経験やスキルを存分に活かして、驚くような仕上がりの場合も多く、子供達も私達も楽しませてもらっています。
育児には近道はなく、だからこそ悩む方も多いかと思いますが、皆で楽しめるきっかけを子育てひろばでみつけていただければと思います。


子育てひろば支援の中で気づかれたことや利用者のニーズなどがあれば教えてください。

新澤さん:20年前は支援のスポットがあたっていなかった 在宅育児ですが、子育てひろば も、数が増えてきて利用者も加しています。それに伴い、 一時保育利用のニーズも増えています。保育士不足の折、一時 保育を担うスタッフを地域でどのように取り込んでいくかは、今後の課題であり、在宅育児をするママ達への支援の必要性をもっと社会に認めてもらうのも私達が努力していくべきことのひとつです。地域の方々にとっても、「近所で知らない子供が遊んでいる」という感覚から、子供の顔や名前を知り、世話に関わることで「地域の皆で〇〇ちゃんを見守ろう」という気持ちが強まり、子供を介して人間関係の可能性が広がります。
支援の相談については、近年パパが相談に来られる数が増えました。内容はパパ自身の育児というより、ママが育児で心身共に追い詰められているので解決の方法はないか、というものが多いです。従来は実家や近所に相談しながら、基本的には夫婦間で解決していた問題ですが、今のパパ達とママ達には相談相手が少ないのが現状です。そして、パパによる相談件数が増えた背景は、ママの相談相手がおらず、パパが頑張らねばならない状況があることと、家庭へ目配りすく育メンパパが増えてきたという両面があるのだと思います。


大泉ぴよぴよ子育てひろば内。素足で過ごせる畳スペース 大泉ぴよぴよ子育てひろば内。素足で過ごせる畳スペース


パパ達の活動で、地域との距離感が縮まる

子育てひろばにはパパ達も来られるとのことですが・・・・・・

新澤さん:練馬区にある大泉ぴよぴよは、開設イベントがパパ向け講座で始まり、今も土曜にパパ達による絵本の読み聞かせが定期的に行われているなど積極的な方々が多い場所です。年2-3回のパパ向け講座も続けており、おかげで地域とのつながりが強まっています。近年、育児に関わるパパ達が増えていますが、もともとどのパパ達も子育てに関わりたいという意識はあるはずです。ただ、きっかけがつかめなかったり、ある程度慣れが必要な育児というものについて気軽に相談できる仲間が見つからなかったため、結局はママ任せになってしまった、ということではないでしょうか。


支援者の中にある能力を活かして、利用者の状況を正しく理解し、地域や人とつながるきっかけを作る

今後、子育てひろばを作っていく方々へのメッセージをお願いします。

新澤さん:子育てひろばは、親子が楽しく過ごせる居場所であると同時に、地域とつながるきっかけや相談への入り口として、大切な場所です。多様な利用者に対して、支援者一人ひとりがもともと持っている能力や経験を活かし ながら、「この人は私の言うことを理解してくれている」「信頼して話してみよう」という気持ちになるような対応が求められます。 そのため、利用者の表情や雰囲気から、心情や背景を洞察する力も必要です。支援者はアドバイスや指導をするということよりも、その親子を理解する、そういう視点をしっかりと持ってもらいたいと思います。
先程話題に出たパパ利用者に対しても、「今日はお休みですか?」「ママはどうしたの?」と通り一遍の声掛けをしてしまうこともあります。言われた側は、「休みじゃないと来てはいけないのかな?」「ママとセットじゃないと来られないわけじゃないんだけど・・・」など、様々な気持ちを持つことがあります。自分の考えの軸だけで関わりをもってしまうと、パパ達の心には響きませんし、かえってやる気を失わせてしまうこともあるかもしれません。
きっかけや良いサポートがあれば 、人間同士はつながり、個人も本来の可能性を発揮できるものです。利用者も支援者も、皆さん可能性にあふれているはずです。
特に子供を育てると否が応でも地域の安全や街づくりが気になり、地域への関心が高まりますので、育児を始めたばかりのママやパパ達が地域に溶け込みやすい機会をもっと整える努力が大切ですね。育児やひろばにおいて多様なあり方や利用者を大切にして、皆さんが楽しく安心して過ごせる期間・場所にするお手伝いをしたいと思っています。
ママ、パパ、祖父母の方々などすべての育児中の皆さん、まずは気軽にお越しください。


大泉子ども家庭支援センター内 大泉子ども家庭支援センター内。利用者ママ達の手作りオーナメントで飾られた階段


練馬区大泉子ども家庭支援センター:http://fukushi.unchusha.com/oizumi/