イベントレポート

とうきょうの子ども・子育てスタンダードプロジェクト「地域の特性を生かして協働するには」

2011/10/14 東京都庁第二本庁舎10階201・202会議室

とうきょうの子ども・子育てスタンダードプロジェクト「地域の特性を生かして協働するには」

平成23年10月14日(金曜日)東京都第二本庁舎にて、「地域の特性を生かして協働するには~荒川の事例から学ぶ地域協働の仕掛けと戦略」パネルディスカッションが開催されました。

子育て支援は、これまで、行政、専門家、地域の実践者それぞれが孤軍奮闘しながら取り組んできた新しい領域。これからは、地域の特性を生かしながら協働することが求められています。
東京都荒川区では、住民、学生、専門職などさまざまな立場の人が集まり、他職種連携による地域ぐるみの子育て支援を展開しており、その活動と実績が大きな注目を集めています。今回のイベントは、荒川のこれまでの営みや取り組みから、協働の仕掛けと戦略について、共に学び考える場として開催されました。

パネリストは荒川区の子育て支援を支えているボランティア・行政・専門家の合計7名。参加者は、都内で子育て関係の活動をしているNPO団体のリーダーやスタッフ、子育て支援に関わっている自治体関係者など、約50人。子育てに対する熱い思いが飛び交う、パネルディスカッション、質疑応答、グループワークの様子をレポートします。

パネリスト:(写真左より)

高山恵美さん  35(産後)サポネット in 荒川

角田崇子さん  35(産後)サポネット in 荒川

藤田房江さん  35(産後)サポネット in 荒川 代表

中川和行さん  荒川区 子育て支援部 子育て支援課

茶谷由紀子さん 荒川区 子ども家庭支援センター 所長

鈴木訪子さん  荒川区 社会福祉協議会 管理課 地域ネットワーク調整課長

木村千里先生  首都大学東京 准教授

コーディネーター

松田妙子さん NPO法人 せたがや子育てネット 代表理事

コメンテーター

高山和久さん 東京ボランティア市民活動センター 統括主任

とうきょうの子ども・子育てスタンダードプロジェクト とうきょうの子ども・子育てスタンダードプロジェクト

こうして私たちはつながった!(それぞれの活動紹介と協働までの営み)

藤田房江さん 35(産後)サポネット in 荒川 代表

私たち「35(産後)サポネット in 荒川」は、地域のボランティアと、大学の教員・学生が協力しながら子育てを応援している任意団体です。現在ボランティアの数は7~80名で、そのうち半分は首都大学東京の学生です。首都大学東京側の呼びかけから始まって7年になりますが、現在、官民の垣根を越えた子育て支援を行っています。「35(産後)サポネット」の主な活動は、生後6か月までの子供がいる家庭を訪問する産後支援と、子育て交流サロン「みんなの実家@まちや」。この「行く」「来る」の二つの柱で活動しています。

角田崇子さん 35(産後)サポネット in 荒川

私がこの活動に関わるようになったきっかけは、藤田さんからのお誘いでした。経営している喫茶店「フェルメール」を「35(産後)サポネット」のボランティアの拠点にして、ここで利用者からの申し込みを受け付け、実際のサポート「産後支援」につないでいます。具体的には、学生と住民のボランティアが4名でチームを組んで、生後6か月までの子供がいる家庭に、週1~2回ほど伺って、2時間程度の育児のサポートを行います。去年の実績は54ケース、派遣人数は492名でした。

高山恵美さん 35(産後)サポネット in 荒川

補助金をもらい、2階建の一軒家の1階を借りて、「みんなの実家@まちや」を運営しています。気軽に訪れることのできる、ハードルの低い子育て交流サロンで、スタートから2年半になりますが、現在の登録世帯数は520、使用は1日平均約17件です。訪問支援後のお母さんが、育児の不安から少しずつ立ち直っていく様子を見られる場でもあり、私たちも楽しく活動しています。また、乳児の一時預かり「駅たま」や、月に一度の子育て交流イベント、専門家による講習会なども行っています。

中川和行さん 荒川区 子育て支援部 子育て支援課

荒川区の乳幼児状況は、3歳未満の子の約66%は在宅育児、0歳児では8割在宅になります。平成18年度に子育て支援部を立ち上げ、本格的に在宅育児への支援を始めました。この年に、産後家庭ボランティア派遣事業をモデル事業として補助を開始、また、大和証券財団の助成を受けて、理由を問わない赤ちゃんの一時預かり事業「駅たま」もスタート。行政では手の届かないところ、行政としては入りにくいところを「35(産後)サポネット」に埋めてもらいながら、互いに想いを共有しつつ、試行錯誤しながら進めてきて、現在に到っています。

茶谷由紀子さん 荒川区 子ども家庭支援センター 所長

平成17年児童福祉法の改正後にセンターが設置され、地域支援拠点事業などの拠点事業を、区の子育て支援部と一緒に行っています。現在は、「子育て支援ネットワーク会議」を年に2回、社会福祉協議会と共同で開催し、専門家による基調講演や、子育てに関わる行政、ボランティア、お母さんみんなで荒川の子育てをどうしていったらいいか、情報交換なども含めて話し合う場を作っています。去年から東京都の補助事業で、市町村相談対応力強化事業もスタートするなど、少しずつですが、子育て支援の仕組みができあがりつつあります。

鈴木訪子さん 荒川区 社会福祉協議会 管理課 地域ネットワーク調整課長

地域の活動を担う人も、ニーズのある人も、人こそが財産であり、それをつなぐことが私たちの仕事。「困った」と相談に来る人を主観的に受け止め、寄り添いながら一緒に考えていくことを大切に活動しています。「35(産後)サポネット」と関わるようになったのは、首都大学東京の先生からの働きかけがきっかけでした。それぞれに何ができるかを考え実行し、また、そこに大学が入ることによって活動の意義付けがなされ、それが行政への強いアピール力となりました。集まって話し合うだけのネットワークからは何も生まれてきません。一緒に活動することが大事です。また、これからは、全てを抱え込むのではなく、エンパワメントする支援が求められていると思います。

木村千里先生 首都大学東京 准教授

最初の仕掛け人は、当時首都大学東京の助産学教授だった恵美須先生。出産後間もない母子対象の支援活動は少なく、大学と地域の連携による取り組みが必要だということから、学生、地域、行政を巻き込みながら、準備期間、試行期間と段階を追って進めてきました。試行期間には、産後間もない母親の支援のニーズや地域のボランティア意識、学生の意識などを調査し、育児支援活動のため広報として公開講座やシンポジウムを開催しました。このシンポジウムではたくさんの人たちとの出会いがあり、ご協力をいただきながら、モデルケースでの実施、修正などを行ってきました。この活動は、学生にとっても、私たち大学側にとっても、有意義な価値ある場となっています。

聞きたいことたくさん!荒川に学ぼう(質疑応答タイム)

聞きたいことたくさん!荒川に学ぼう(質疑応答タイム)

コーディネーター松田さんから、手作りの「荒川ネットワークMAP」を使って、荒川区での子育て支援の取り組みについての説明があり、その後、参加者からパネラーへの質問タイムになりました。

Q:ボランティアがたくさんいらっしゃいますが、どのように人集めをしたのでしょうか。また、なにか条件はありますか。

A:今は7~80名ですが、始めた時は7名だけでした。大学のシンポジウムの際に募集したり、社協の講座などで声掛けしたりしながら集めました。個人的な付き合いで声をかけた方もいます。A4用紙1枚のマニュアルはありますが、基本的に、やりたいと来てくださる方は全て受け入れています。月に1回の月例会やメーリングリストなどで情報交換をしながら、また実際の活動の中のOJTでスキルアップしています。(藤田)

Q:訪問では、実際にどんなことをしているのでしょうか。

A:首都大学之学生とボランティアで4~5人のチームを組んで、週に1~2回訪問します。1回の活動時間は2時間で、衛生上の問題で食事作りだけはやりませんが、それ以外は、育児・家事全般、何でもお手伝いします。洗濯もしますし、外出の同行や遊び相手、沐浴もお手伝いします。ボランティアなので厳しい決まりがないことがよいところかもしれません。(藤田・角田)

Q:ボランティアは有償なのでしょうか。

A:都の時給最低賃金よりは低いですが、有償です。金額については、活動の内容、経験や資格の有無によって違いがあります。訪問に関してのみ資格の有無などに関係なく一律になっています。金額については、それぞれに思うところもあるでしょうが、よく話をして理解してもらっています(高山・角田)

基本的にはボランティア活動という位置づけです。これで生活を支えることはできません。自身の持つ能力を、時間的に余裕があるところで、発揮していただく場所と考えています。(中川)

スタートしたばかりのころは無償でした。私たち教師も年休を使って訪問に行っていました。学生は未熟で、入学卒業の出入りがあるので、簡単な初期研修を実施していました。(会場にいらっしゃっていた首都大学鈴木先生)

予算がついたからこそ、有償でできるというところもあります。モデル事業から始まり、予算を付けてもらうまでにはかなりの時間がかかるのも事実ですね。(松田)

Q:利用者側の負担はどうなっていますか。

A:訪問は、1回2時間まで500円です。預かりも同様で1回2時間500円。ワンコインです。(藤田)

Q:ファミリーサポート事業など、他の活動とかぶってしまうこと、ボランティアの取り合いにはなりませんか。

A:「産後(35)サポネット」の訪問支援は生後6か月までですが、ファミリーサポートは6か月以上なので、うまく繋がるというか、棲み分けができています。「産後(35)サポネット」の特徴は、家事も育児もすること。ファミサポは育児のみですし、にこにこは家事のみです。それぞれに、違う役割も共通の役割もあります。選べるものがたくさんあることは、地域の住民にとってよいことでし、もっともっとあってもいいと思います。(鈴木)

Q:もともとある団体と、セクターでうまく連携していくために、その間にうまく入ったのが大学ではないでしょうか。

A:大学としては、母乳育児に悩んでいるお母さんから連絡があったとき、専門的なアドバイスをするという形でのフィードバックが多く、間に入ってどうこうというのはありません。荒川区は、ボランティア同士、団体同士、またその間での問題解決能力が高い人たちが集まっているというのが私の実感です。(木村)

NPOでも何でもない、こんなところに良く予算がついたと思っており、これもバックに大学がついていたことが大きいと感謝しています。地域を繋ぐ場合に、専門家としてまた、信用という面からも、地域の大学はとても重要な役割を担っていると思います。(藤田)

Q:書面で契約書のようなものは交わされているのでしょうか。また人間関係を上手にやっていくコツなどありますか。

A:契約書も取り交わしますし、最初にルールを説明しています。そこはしっかりとやり、その後はゆるやかにやっています。顔を合わせての情報交換や振り返りは頻繁に行っています。月に1度の定例会を首都大学の部屋を借りて、ボランティアから行政まで集まって行っています。行政が顔を出してくれることはありがたいことだと思います。他にも、ネットワーク会議や、実は飲み会などもあって、実際に会う機会は多いです。(藤田)

東京ボランティア市民活動センター 高山和久さん

私どもは、1980年にセンターが出来て、「ネットワーク」というタイトルで情報誌を刊行しています。今、「荒川はいいな」という思いで聞いている方も多いと思いますが、荒川だから出来たというのではなく、どの地域にも仲間になれるひとは必ずいるはず。プロボノは、地域にたくさん眠っているはずですから、そういう人と繋がりながら創り上げていくことが必要ではないでしょうか。たくさんのネットワークを見てきましたが、いろんな形のネットワークがあり、地域にもいろいろな特徴があります。まずは、自分が暮らしている地域の状況を良く見ながら、その地域やそこに住む人たちの潜在的な能力を引っ張り出しながら、誰かと繋がっていく、そうすることでよいネットワークが出来ていくと思います。

みんなで話し合おう(グループワーク)

この後、4~8人のグループに分かれて、地域や自身が抱えている問題、これまでの体験について語り合うワークを行い、グループ内で活発な意見交換が行われ、それぞれのグループから発表がありました。

みんなで話し合おう(グループワーク)
  • 「困っている人に対して、すき間のない支援をするためにはどうするか。どうしたらより的確な支援につなげることができるかを話し合いました。」
  • 「各々の地域の連携のとりかたを情報交換し、ネットワークを作るために、横のつながりが大切であることを実感しました。」
  • 「ボランティアの継続、また開拓をどうするかが話題になりました。」
  • 「行政と専門家も加えた、三位一体の取り組みが参考になったので、実践に移していきたい。」
  • 「家庭の子育て力の低下の問題が上がりました。親力向上や、自立に向けた支援も必要だという意見が出ました。」
  • 「それぞれが違う立場で子育てをどう支援して行くかを話しあいました。活動拠点の確保、活動のPR、資金の問題などが課題としてあがりました。」
  • 荒川区の事例から学んだこと、グループ内で話しあったことを、それぞれの地域に持ち帰り、これからの活動に役立てて行こうと確認し合い、終了しました。