子供時代にもっと仲間遊びを!

NPO法人 東京少年少女センター(渋谷区)

NPO法人 東京少年少女センター 理事長・神代洋一(かじろ・よういち)


プロフィール


NPO法人 東京少年少女センター(渋谷区)
理事長・神代洋一(かじろ・よういち)

学童保育・児童館職員を歴任。現在は同団体の理事長のほか、「めぐろ子ども食堂ネットワーク」代表や「すずめ食堂(子ども食堂)」副代表なども兼任し、子ども・地域・自然をキーワードに活動を推進している。

子供たちの“手が虫歯”に。子供の遊びを取り戻そう!

「東京少年少女センター」はどのようにして発足したのでしょうか?

1970年代以降、詰め込み教育やテレビの普及、ファミコンの出現などで子供を取り巻く環境が激変しました。
それにより、子供たちは仲間と外で遊ばなくなっていきました。
指先の器用さも失われ、ナイフやマッチが使えなくなりました。
当時はそのことを「子供の手が虫歯になった」と表現したものです。
こうした状況を受けて、子供の遊びを取り戻そうと、各地域で小さな活動が始まりました。
それらの活動の交流と学び合いの拠点の一つが少年少女センターの始まりです。

神代さんが活動を始めたきっかけは?

高校時代に友人の死を経験した私は、人を育てる教育に関心をもち、大学で教育学を専攻していました。
その頃、たまたま友人から地域の子供たちのキャンプを一緒に引率するように頼まれ、なかなか言うことも聞かない、キャンプの経験もないやんちゃな子供たちを預かることになりました。
キャンプ生活はちゃんとできなかった子供たちでしたが、キャンプが上手で楽しく盛り上げてくれるちょっと年上の先輩たちに憧れを抱きました。
「次は自分たちも彼らのようなキャンプをするんだ!」と決意した彼らは、夏休みが終わると、学校で友人に声をかけ、次のキャンプに誘い始めました。
その時、“憧れ”を持ったときの子供の力に感動し、これがきっかけとなって活動を始めました。
キャンプの活動は、今でもセンターの中心的活動になっています。

:40年前のキャンプの様子
40年前のキャンプの様子。


“一から自分の生活を考える”夏のキャンプ村

キャンプ村について教えていただけますか?

キャンプ村は毎年夏休みに3泊4日で開催されます。
東京少年少女センターのキャンプでは、1グループ20名ぐらいで構成し、グループのことを“村”と呼び、子供の年齢や経験に応じて役割を相談して決めていきます。

高校生〜大学生(青年)は、キャンプ村での子供たちの生活を支えます。
青年は約半年ほどかけて、自分たちの村が生活するキャンプ地を、地元の人たちの協力も得ながら、整備します。

中学生はリーダーです。みんなをまとめ、キャンプ場での生活をリードします。
自分よりも少し上のお兄さん・お姉さんに憧れを抱き、少しでも近づこうとがんばると同時に、自分よりも年下の子の面倒も見ながら一緒に生活をします。

キャンプ村では子供たちが中心になって活動します。
キャンプ本番の前に何回か集まり、どんなプログラムにするか、食事はどうするかなどを話し合います。
だからグループごとに遊ぶ内容や食事の内容が異なるのです。

子供たちが中心となって活動をするのですね!子供たちだけで計画を立てて、失敗することはありますか?

いろいろありますよ。例えば、なかなか火が起こせずに、朝ごはんのはずがお昼ご飯になってしまったり(笑)。
雨対策が不十分で自分たちで作ったかまどが水浸しになってしまったりね。
でも子供はやってみて、失敗も体験する方が納得しますから、それも良い経験です。

キャンプ村の目的は何でしょうか?

「一から自分の生活を考える」ことです。
現在は便利な世の中になり、スイッチ一つでご飯が炊けたり、おかずを作れたりします。
学校や放課後の生活も先生や親、大人たちに管理された生活です。だからこそ何もない不便なところで、自分たちで考えて生活をすることによって、改めて「確かな自分の存在」を感じられるのではないかと思うのです。

キャンプの様子
キャンプの様子。テントも皆で協力して設営する。


キャンプ村の活動を通して、子供たちにどんな成長が見られますか?

あるお母さんから聞きましたが、家で食事の片付けをしていたら、「キャンプの時は洗い物が大変だったんだよー」なんて言いながら、手伝ってくれたそうです。
またキャンプでは青年たちがオリジナルの曲を作って皆で歌うのですが、その歌を家でもずっと口ずさんでいるという子が大勢います。
「自分たちの力で生活しきった」という達成感と充実感。主体的に参加したからこそ得られた体験が、子供にとっては大きな自信に繋がるようですね。
たまに大人になったOB・OGで集まると「あの時は誰々と一緒のグループで、言い合いになったよな」など、細かいことまでよく覚えています。
キャンプ村での経験は何年経っても、ずっと心の中にあるようです。

キャンプ村での経験が、子供たちの自信となり、人生の基盤となっているのですね。

そうですね。キャンプを経験した子供は、何があっても大丈夫な気がします。
例え震災に遭っても、自分で食事を作り、自分で水を汲んで運んだ彼らなら、きっと乗り越えられるのではないかと思います。

集合写真
集合写真。子供たちの笑顔が眩しい!


子供たちが思い切り遊ぶさまざまな活動

雪まつりなども毎年開催していますよね。

雪まつりは今年度で38回目になります。
青年たちは事前に集まって、子供たちに教えられるようにスキー・スノボの講習を受けています。
どんな遊びを雪の中でするのかも、子供たちのリーダーと一緒に計画を立てます。
子供たちが中心となって生活するので、普通のスキー教室とは違い、子供たちの発想でいろんな遊びを展開します。

スキー、スノボ、雪遊び
スキー、スノボ、雪遊び。何をして遊ぶかは子供たちで決める。スノーフラッグをして遊ぶグループも。


また、毎年11月3日に代々木公園で「あそび万博」を開催しています。
子供から大人まで1,000人以上が参加し、みんなで思いっきり遊びます。
この活動には児童館の職員や地域の子ども会・少年団や大学のゼミ生などにも協力してもらっています。
過去にはスポーツメーカーからの紹介で、サッカー選手が参加してくれたこともありました。

あそび万博に参加している子供たち
あそび万博に参加している子供たち。思いっきり走って、思いっきり遊ぶ。


センターの事務所で、“よよぎゆうゆう”としても活動しているのですね。

スタッフが事務所にいる時は、近くに住む子供たちに、この場所を開放しています。
子供たちはここで遊んだり宿題をしたりして過ごします。
お母さんやお父さんが一緒に来ておしゃべりすることもあります。
子育ての悩みを聞いたりもしていますよ。

「森のゆうゆう」という活動もしています。
未就園児の親子が集まって月に数回、プレイパークで一緒に遊んでいます。
秋には、一緒にどんぐり拾いをし、そのどんぐりをみんなで調理して食べる計画もありますよ!

森のゆうゆうの活動中
森のゆうゆうの活動中。散策中に拾った落ち葉で、落ち葉アート!


子供たちに仲間と遊ぶ時間を

多くの活動を通して、子供たちの遊びを推進しているのですね!今後の目標はありますか?

ミヒャエル・エンデの「モモ」という小説があります。
灰色の男たちに、自由に生きる時間を次々に奪われてしまう大人と子供。
それに対して主人公であるモモは1人で立ち向かい、時間を取り戻すというお話です。
子供の遊ぶ時間は年々減っています。
しかし遊びは子供にとってかけがえのないもので、子供の持つ権利でもあります。
遊びから人生の土台が築かれるのです。
私は主人公のモモのようになって、子供たちの時間を取り戻したいと思っています。

写真協力:NPO法人 東京少年少女センター(一部写真除く)