子供が仕事について学び、夢を見つける。

夢さがしプロジェクト(港区)

きたく子ども劇場(北区)


プロフィール

NPO法人 夢さがしプロジェクト 代表・菅原亜樹子
2002年にキャリア教育の草分け的書籍「夢さがしエトセトラ」を出版。同書が数々のメディアに取り上げられた事がきっかけとなり、全国の学校などで講演活動を開始。若者たちの夢さがしを応援するNPO法人「夢さがしプロジェクト」を設立し、独自に開発したキャリア教育プログラムを全国で実施している。キャリアコンサルタント。

きっかけは息子たちのために作った一冊の本

「夢さがしプロジェクト」立ち上げの経緯を教えてください。

最初は本を出版したのがきっかけでした。
私の2人の息子がそれぞれ小学生と中学生だった時に、「何のために僕たちは勉強しているの?」と聞かれたんです。でも当時主婦だった私は、彼らに適切な答えを与えられませんでした。じゃあいろんな人にインタビューして、どうしてこの仕事を選んだのか?どんな苦労があるのか?どういうことが得意だからこうなったのか?という話を聞いてみようと、突然思いついたんです。

まずは知り合いのツテで子供たち500人にアンケートを取って、人気トップ30の仕事を選びました。そしてその職業に就いている30人にインタビューをしていったのです。有名人のインタビューは、事務所に手紙を出してお願いしたら、意外なことにみなさんからOKをいただきました。当時はまだこのような本がなかったので、「これ面白いじゃない!」と共感してくれてインタビューを引き受けてくれました。坂本龍一さんも、どうしてもインタビューしたくて手紙を書いたら「いいですよ」と言ってくれました。子供たちに仕事のことを伝えたいという思いは、みんな一緒だったのね。この本は、こうしてインタビューで集めた「この仕事はこうだったよ」「挫折もしたよ」など色々なエピソードをまとめた本です。

夢さがしエトセトラ
「夢さがしエトセトラ」。菅原さん自ら出版社にかけあい、自費出版した最初の一冊。


もともとはご自身のお子さんたちのために作ったんですね。

本当はね。でも読んでくれるかなと思ったんだけど、最初は読まなかったよね。「何やっているの、お母さん」と言われていました(笑)でもその後、息子が大学受験で悩んでいた時に読んでくれていたみたいです。その時、「やった甲斐があった!」と思いました。

この本がきっかけで、活動が広がっていったんですね!

“お母さんが作った仕事の本”ということで、いろいろなメディアが取り上げてくれました。これがきっかけでたくさんの講演の依頼をいただくようになったんです。
本を出版した後、キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)という資格を取って、いろんなワークショップに出るようになりました。イベントやワークショップを開催するなら団体の方が活動しやすいので、2006年にNPOを立ち上げました(2012年NPO法人認証)。現在はスタッフ13人で活動しています。

仕事を学べるオリジナル教材や、イベントプログラムを開発

仕事について学べるオリジナルのカードを作っていますよね。

「職業人なりきりカード」です。
職業人なりきりカードは、インタビューを通して子供たちが職業について学べるカードです。このカードを小学校や中学校に持って行き、子供たちとインタビューごっこをします。名付けて「職業人なりきりインタビューゲーム」です。

職業人なりきりカード
職業人なりきりカードは、表裏に職業と質問(インタビュー)内容、プロからのメッセージが書かれたカード。これを使って2人1組でインタビューごっこをし、仕事について学ぶ。未就学児、大学生向けにも、それぞれオリジナルの教材がある。


教員研修でこのカードのモデル授業もおこなっています。教員研修をすると先生たちが使い方を理解できるようになるし、より多くの子供たちに使ってもらうことができます。岐阜県では、全公立中学校にこのカードが配られて、それぞれの学校で熱心にやっているそうですよ。

ラグビーのイベントを開催していますね。

「みんなのラグビー小学校」は、2017年から開催しています。
現役のラグビー選手と一緒にラグビーを体験しながら、ラグビーに関する仕事についても学べる、夢さがしプロジェクトのオリジナルのイベントになっています。

この体験イベントのために、職業人なりきりカードをラグビー用に作りました。ラグビー選手の仕事だけではなく、ラグビーに関わる仕事、例えばマネージャー、マウスピースやボールを作る人のカードなど、10種類以上作りました。そのカードを選手が一枚選んで、子供が選手を囲んでインタビューします。そうすると子供たちは、楽しみながらもだんだん仕事を覚えていきます。

ラインアウトの体験をしている様子
プロ選手とラグビーができる!ラインアウトの体験をしている様子。


落語のイベントもありますね。どんなことを学ぶのでしょうか?

「みんなの落語学校」ですね。
この体験イベントでも、ただ落語を聞くだけではなくて、落語の仕事についても勉強します。まずは大学生の落研の人たちが落語について詳しく解説してくれます。その後に、前に来て子供たちに落語をやってもらいます。小学生などはとても緊張しますが、みんな上手にできましたよ。そして、最後に師匠の落語を楽しみ、大いに笑います。

落語に挑戦する小学生
落語に挑戦する小学生。落語家から身振り手振りもしっかりレクチャーを受け、堂々とやりきった。


どうして落語を学ぶのですか?

私が落語が大好きというのもありますが(笑)、落語を学ぶとコミュニケーションに活かすことができるんですよ。落語は人を笑わせる話術です。落語を子供たちが学ぶことはすごく大切で、学校の教科書にも取り上げられています。人を惹きつける話し方など、落語から学ぶことはたくさんあります。

ワークショップを受けた子供たちの変化について

これまでプログラムを受けた子供たちから、どのような反響がありましたか?

私の著書を読んだ岐阜の中学校のある先生が、本をまねて子供たち自身にインタビューをやらせて、それをまとめて一冊の本にして送ってくれたことがありました。感動した私は彼らに会いたくて講演&インタビューゲームをしに出かけていきました。

この中にはある嬉しいエピソードがあります。当時、少しぐれてしまっていた中学生の女の子がいました。その子は憧れていた女医さんにインタビューをしたんです。その女医さんから、昔は悩んでいたけれど、女医になって頑張って仕事をしているという話を聞いたそうです。女医さんのその姿を見て、「女の子でも頑張ればできるんだ!」と思い、その子は住み込みで美容師の見習いになって、ついに美容師になったのです。

当時は中学生だったその子たちが20歳になった時に、私にビデオレターを送ってくれました。「先生の話を聞いて、こんなに変わりました!」とメッセージをくれたんですよ。その時はすごく嬉しかったです。

中学校で講演をしている菅原さん
中学校で講演をしている菅原さん。


大人にも輝いてほしい

2020年はどのような活動の予定がありますか?

2020年は、辰巳の森海浜公園で「みんなのラグビー小学校」の開催が決まっています。参加者500人ぐらいの規模で、ラグビー体験やインタビューゲームをやる予定です。
10月には、ピアニストの秦万里子さんを招き、文化シヤッターBXホールで「みんなの音楽学校」も開催します。他にもいろいろな企画を計画中ですよ!

今後はどのように活動を広げていく予定ですか?

子供はもちろんですが、大人にももっと元気になってもらいたいと思っています。大人が元気にならないと、子供は元気になれないんじゃないかな?

父母講演を開催すると、お母さんたちは「子供のために聞きに来た」と子育てにとにかく一生懸命です。そんなお母さんたちに、「あなたたちも好きなことをやっていいのよ」と私が声をかけると、お母さんたちの顔色が変わります。お母さんが元気になると、子供は「ママいいな」と思うのではないでしょうか。子供はママの元気な背中を見ていたいのです。子育て中でも、できることはありますよね。例えば昔やっていたピアノをまた始めてもいい。ピアノを弾いたら子供が興味を持ってくれるかもしれません。

まずは大人に好きなことをやってもらい、輝いてもらいたいのです。今後は、そのために大人向けの講演やイベントも増やしていきたいと思っています。

写真提供:NPO法人 夢さがしプロジェクト