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知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子供が自分を表現できる環境を作る

一般社団法人 武蔵てらこや(豊島区)

一般社団法人 武蔵てらこや


プロフィール

一般社団法人「武蔵てらこや」学生代表・中村淳吾
立教大学 文学部文学科日本文学専修3年生
自分自身の成長にもなる社会貢献活動をしたいと思い、大学入学と同時に武蔵てらこやのメンバーとなる。武蔵てらこやでは、チームで楽しみ、チームで問題解決をしていくことを大切に、
"どのような子供になってほしいか"
"そのためには何が必要か"
"どのように伝えることが効果的か"
を学生の目線で見つけ出し、試行錯誤を重ねて活動に取り組んでいる。

子供に感動体験を

「武蔵てらこや」立ち上げの経緯を教えてください。

武蔵てらこやの最初の立ち上げは「地元の子供たちのために何かしたい」という思いで、有志の学生が集まって活動を始めました。「全国てらこやネットワーク」という大きな組織があり、武蔵てらこやはその理念をもとに活動を行っています。
もともと全国てらこやネットワークは、高校生の不登校の問題に焦点を当てて活動をしていましたが、高校生で不登校になる子の特徴は「幼少期における感動体験」や「人との関わり」が少なかった子供に多いことがわかってきたのです。そこで武蔵てらこやではさまざまな企画をたて、子供たちに楽しい体験をしてもらうべく活動をしています。


学生が主体なのはどうしてでしょうか?

この団体の理念は、「大学生も成長の対象である」からです。僕たちは子供の未来のためにあらゆることを企画して実践していますが、こうした活動の中で、大学生である僕たち自身も学ぶ機会をいただいているのです。地域の社会人の方々も活動に参加しますが、あくまでも主体となって動くのは学生中心になります。


毎週行われる企画会議の様子。メンバーの学生が集まり、アイディアを出し合う。
毎週行われる企画会議の様子。メンバーの学生が集まり、アイディアを出し合う。

 

学生ならではのダイナミックな企画

「武蔵てらこや」では子供たちが喜びそうな活動をたくさん行っていますね。

子供たちが楽しみにしているイベントの一つは、夏休みに行われる1泊2日の合宿です。埼玉県の川越に昔ながらの町があるのですが、その近くの養寿院というお寺で毎年合宿をしています。合宿は小学生を対象に、「自分や、自分が住んでいる地域のことを他者に伝えることができるようになる」という目的を持って、お寺体験や町探索をしています。


お寺での食事風景
お寺での食事風景。お寺ならではの野菜中心のメニューと、特別な食器。普段とは違う雰囲気に、子供たちもかしこまった様子。


活動をするときは目標を立てるんですか。

はい。どの活動にも必ず目標を立てます。そして活動が終わったあとは、目標が達成できたか検証を行います。目標・検証を通して、より効果の高い企画を立てるためです。


夏合宿で、地域の人にインタビュー
夏合宿で、地域の人にインタビューしている。自分のことを人に伝えるには、自分が住む町を知ることも大切な一歩なのだ。


合宿の他にはどのような企画がありますか。

最近行った活動は、「脱出ゲーム」と「ダンボールハウス」です。
「脱出ゲーム」では、ある大学の一角を借りて、小さなグループを作って教室の中に入ってもらいました。教室から脱出するにはクイズに答え、ミッションを達成しなければなりません。グループの構成を小学1年生〜6年生の縦割りにすることによって、世代間で交流できるようになること、また友達を意識することを目標として行いました。


脱出ゲームの謎解き
脱出ゲームの謎解き。力を合わせてやり遂げることで、友達の大切さを知ることができる。


「ダンボールハウス」では、ダンボールを使って家を作りました。
ここ最近は、子供たちの人と関わる環境は狭くなっています。昔と違って近所の大人との交流はほとんどないですし、遊ぶ公園も少なくなっています。それでは武蔵てらこやの僕たちが近所の大人の代わりになれないだろうかと思い、この企画を計画しました。ダンボールで家を作るという共同作業によって子供と大学生のコミュニケーションが生まれ、子供が抱えている問題や不安などを気軽に話してもらえるような関係づくりを目指したのです。


制作したダンボールハウスで記念撮影
制作したダンボールハウスで記念撮影。活動を通して子供たちと大学生の距離が縮まり、絆が強くなる。


活動に参加して成長する子供たち

子供たちにはどのような成長が見られますか。

長い期間で見ると、小学1年生から見ている子供たちが小学6年生になる頃にはとてもたくましく成長します。小さい頃はお兄さん・お姉さんに寄り添って活動していたのが、小学6年生になると下の学年の子を率いてリーダーとして活動に参加するようになります。
1日の活動内では、最初は全く自分を出せなかった子が、活動が終わる頃には学生と信頼関係ができ、自分を表現することができるようになります。


大学生の隣で、集中して作業に取り組む男の子
大学生の隣で、集中して作業に取り組む男の子。


参加した子供の親からはどのような声がありましたか。

以前、「食事の大切さを学ぼう」という企画がありましたが、食事が自分の前に出されるまでにはどういった過程があるのかを体験しながら学びました。活動に参加した子の一人が、家でご飯を食べる前に「お母さん、いつもありがとう。いただきます」と言って食べ始めたそうです。いつもはそんなことは言わないので驚いたと、その子のご家族の方から伺いました。
別の親御さんからは、子供が武蔵てらこやの活動に参加したあとは、いつも笑顔いっぱいで帰ってくるとおっしゃっていました。


ダンボールハウス制作後の記念撮影
ダンボールハウス制作後の記念撮影。子供たちの顔から笑顔が溢れている。


子供たちが自分を表現できる場所を

活動をする中で、大切にしていることは何ですか。

武蔵てらこやは学校でもなければ家庭でもない「第三の場所」であることを大切にしています。子供たちが自分の意見をぶつけられる場所、自分を表現できる場所でありたいのです。子供が緊張してしまって意見が言えない場合は、どうすれば打ち解けられるのか考え、親でも先生でも友達でもない、ちょっとだけ人生経験が豊富な僕たちが自然な形でその子に話しかけるようにしています
また武蔵てらこやは少人数の団体なので、それを強みとして子供たち一人一人をよく観察し、何か問題があればメンバーと共有するようにしています。


子供が成長する環境を、多視点で考えていきたい

今後はどのように活動を広げていきたいですか。

グローバルに活動していきたいと考えています。例えば、大学に留学生として在籍している人と「武蔵てらこや」の活動について意見交換をすることです。もっと将来的には、海外の子供と交流できるような環境を作り、海外の人にも自分のこと・自分が考えていることを表現できるような大人になる手助けをしていきたいです。

また、地域に根ざした活動を展開していくことも課題の一つです。先ほどお話しした「ダンボールハウス」のダンボールは、地元の建築家の方が支援してくれましたし、夏合宿で使わせていただいている養寿院さんも地域のお寺です。こうした関係をもっと広げ、地元の人たちと協働して一つの大きな企画を作り上げていきたいです。活動の中で地域の大人と子供たちの交流が盛んになることも、子供たちの成長にとても大切なことなのです。
大人・子供・海外の人など、さまざまな人から意見を取り入れて視野を広くし、今後も武蔵てらこやを運営していきたいと思います。


写真協力:一般社団法人 武蔵てらこや(一部写真除く)