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知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

「産後うつゼロの社会の実現」を

乳幼児子育てサポート協会(中央区)

乳幼児子育てサポート協会 代表・行本充子


プロフィール

乳幼児子育てサポート協会 代表・行本充子
大手アパレルにて勤務後、結婚を機に退職。ベビーマッサージの資格を取得し、自宅で教室を開業する。2013年に乳幼児子育てサポート協会を設立して代表に就任し、講師を指導する立場に。これまでに多くの認定講師を全国に輩出している。

産後の母親をサポートしたいという思いから発足

乳幼児子育てサポート協会立ち上げの経緯を教えてください。

私は千葉県出身ですが、家族の都合で兵庫県に引っ越して、そこで出産し、子育てが始まりました。初めての子育てなのに親には助けてもらえない状況で、周りには友人もいなく、一人きりで子育てをしていたので鬱のような状態になってしまったのです。そんな時たまたま行ったあるイベントで、ママ友や子育ての相談ができる人に出会い、とても救われました。だから自分も子育てに悩んでいる人の役に立ちたいと思うようになり、ベビーマッサージの資格を取って自宅の一室で教室を始めました。ある時、ベビーマッサージの講師の方々に私から学びたいと声をかけていただきました。一緒に活動する方法として一番良い方法は何か考えたときに、それが当協会を立ち上げることでした。


協会の活動について教えてください。

協会では「産後うつゼロの社会の実現」を理念に、ベビーマッサージ・ファミリーハンドサイン・プレチャイルドマッサージ・おやこヨガなどの資格取得講座を開催し、講師を育てています。さらに資格を取得した認定講師が、住んでいる地域での教室運営がうまくいくように、さまざまな面でサポートしています。現在は協会の認定講師約60名が全国各地で教室を運営し、活躍しています。


資格取得講座では何を学びますか?

それぞれの効果と実技はもちろんのことですが、一番大切にしているのは理念である産後うつを未然に防ぐことと、母親のフォローの仕方です。あってはならないことですが、産後間もない母親が心ないことを言われ傷ついてしまうことがよくあります。まだ体調も不安定な時期に受けた傷は根が深く自信喪失につながります。ですから、まずは教室に来た母親たちを受け止めることを徹底しています。極端な話をすると、「一日中子供にテレビを見せっぱなしにする母親」がいたとしても絶対に否定はしません。そうなってしまうには母親のバックグラウンドが関係していて、そこをフォローしていかないと解決にはならないからです。どんな価値観を持つ母親でもまずは受け止め、心の状態や環境が少しでもよくなるように話を聞き、少しずつアドバイスしていくように講師たちを指導しています。


資格取得講座の試験に合格し、活躍している認定講師たち
資格取得講座の試験に合格し、活躍している認定講師たち。


フォローを徹底することで産後うつが防げるのですね。

産後うつは7人に1人がかかると言われていますが、産後うつであることを自分で気がつかない人もいます。当協会でもアンケートを取ったことがあるのですが、「産後自分は少しおかしくなっていた」「孤独を感じていた」という人はいずれも8割を超えていました。誰かに自分のことを受け止めてもらえると、精神的に安定していきます。特にこれまで色々な人から正論を押し付けられて傷ついた人は、受け止めてもらえることで心を開くことができるのです。


産後うつに効果的な子供とのふれあい

どうして産後うつにベビーマッサージが効果的なのでしょうか。

産後うつを未然に防ぐのに必要なことは、「信頼できる人と話す」「体調・ホルモンバランスを整える」ことです。人の素肌に触れると母親のストレスが軽減されるホルモンが分泌することが医学的にわかっているのですが、ベビーマッサージで可愛い自分の赤ちゃんの素肌に触ることで高い効果が期待できます。またベビーマッサージ教室の講師に育児の悩みを打ち明けることもできますし、同じ立場の母親たちと話をすることで悩みも軽減されます。

赤ちゃんに触れることで、母親自身が癒される
赤ちゃんに触れることで、母親自身が癒される。


プレチャイルドマッサージにはどのような効果があるのでしょうか。

プレチャイルドマッサージの対象は1歳〜未就学児の子供です。ちょうどイヤイヤ期に当たり、子供が精神的に不安定になる時期です。親の愛情を確認しつつ、自立に向かって成長していくこの期間にスキンシップを意識的に取ってあげることで、子供は母親の愛情をしっかり受け止めることができ、自立がスムーズになります。普段は忙しくてなかなか時間が取れなくても、教室に来ればその時間は子供としっかりと向き合うことができるのでとても効果的です。

プレチャイルドマッサージの様子
プレチャイルドマッサージの様子。ボールなどのアイテムを使って子供との触れ合いを楽しむ。


ファミリーハンドサインとは何でしょうか。

ファミリーハンドサインは、まだお話が上手ではない赤ちゃんと手のサインで会話をすることです。特に喃語の時期などは母親にしかわからない言葉がありますが、ファミリーハンドサインを使えば父親とも兄弟姉妹ともコミュニケーションが取れるようになります。通常のコミュニケーションですと伝えたいことを赤ちゃんがしっかり理解できているのかわかりにくいことが多いですが、ファミリーハンドサインでのコミュニケーションは理解できていることがはっきりとわかります。それは母親にとって子育ての自信に繋がるのです。

オリジナル教材を使って子供たちが大好きな動物のサインを覚えている様子
オリジナル教材を使って子供たちが大好きな動物のサインを覚えている様子。


講師の成長・母親の変化

資格取得講座を修了した講師からはどのような反応がありましたか。

「自分の教室のママたちが笑顔になって、やりがいを持てるようになった」と感じる講師もいましたし、協会では資格取得後の教室運営サポートもしているので安心感が持てるのではないかと思います。また教室運営がうまくいくよう試行錯誤する中で、講師自身も大きく成長できるようです。

各教室に通った母親たちからはどのような変化が見られますか。

「教室に行って救われた」「気持ちが楽になった」「子育てが楽しくなった」と言われる人が多いです。また毎日子供と一緒に過ごしていると見過ごしてしまいがちな子供の小さな成長発達について、「先週よりも上手になったね、成長したね」と講師が教えてくれるので子育てが楽しくなります。教室で気の合うママ友もでき、お出かけに前向きになれるようですよ。

ベビーマッサージ教室に行くことで、子育てが楽しくなる
ベビーマッサージ教室に行くことで、子育てが楽しくなる。


産後うつを防ぐために、協会の思いを広げていきたい

活動をする上で大切にしていることは何ですか。

私自身が協会の運営で大切にしていることは「メンバーの講師一人一人に寄り添うこと」です。育児の悩みを持つ人が教室に来ることも多いので、講師自身が元気でないと教室運営が難しくなります。メンバーとは密に連絡を取って、教室運営からプライベートのことまで相談にのっています。講師たちの気持ちが切れずに、母親たちの力になれる状態を作るのが私の使命です。

今後はどのように活動を広げていきたいですか。

産前からの支援を自治体と協働して行うことです。ハイリスク(高齢出産や多胎児など)の母親に対するケアは充実しているのですが、リスクの低い母親の支援は手薄だと感じています。産前支援をすれば、子育ての相談ができる場所を事前に知っておくこともでき、産後うつを未然に防ぐことができると考えています。
もう一つは、現在世田谷社会福祉協議会で年に一度講座をさせていただいているので、このような活動をもっと増やして一般の方々・子育て支援者などさまざまな人たちに協会の思いを伝えていきたいです。また当協会の活動にご興味がある自治体や企業がありましたら、喜んで出張講座やイベントを開催していきたいと思います。

写真協力:一般社団法人 乳幼児子育てサポート協会(一部写真除く)
https://kodomokosodate.com/