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知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子育て中のママに「話をしっかり聴いてもらう20分間」を提供

NPO法人リスニングママ・プロジェクト

NPO法人リスニングママ・プロジェクト副理事/代表講師・高橋ライチ


プロフィール


NPO法人リスニングママ・プロジェクト
副理事/代表講師・高橋ライチ

コミュニケーション・カウンセラーとして女性が自分らしく生きることをサポートする傍ら、2003年に立ち上げた「こぶたラボ」が子育て中ママのコミュニティのパイオニアとなる。26歳、16歳の二女の母であり、3度の結婚を経験。パートナーシップや子育てしながらのキャリアやライフワークについて、乳幼児・学童期・思春期それぞれの子育ての大変さや喜びを分かち合う場と仲間を持つことを推奨している。2011年の東日本大震災後から活動を始め、2018年にNPO法人化した「リスニング・ママプロジェクト」は、テレビや新聞でも紹介され注目を集めている。

「ママには話せる場が必要」震災で始めたオンライン通話が活動のきっかけ

リスニングママ・プロジェクトの活動を始められた経緯を教えてください。

もともと、私自身が子育て中に誰かと話のできる場が欲しいと思っていたことから、カウンセリングの仕事と並行して、子連れで参加できるイベント開催などの活動をしていました。その後、東日本大震災でイベントが中止になったり、外出を控える方が増えたりした時期があったんですね。何が正しい情報かも分からない中、ママたちは不安な気持ちで子どもと家に閉じ込められている状況でした。「こういうときこそ話せる場が必要なのに…」と思ったとき、オンラインで話を聴くことを思い立ってSNSで呼びかけたところ、利用があったんです。たった20分間ですが、話し終えたときにみなさんから「ホッとした」「安心した」という声をいただきました。子どもには見せられない心配や不安も、大人に話すことで安心できる…これはママにとって必要なことなんだ、という手応えがありました。それから、「聴く人=リスナー」をもっと増やして交代で話を聴けるシステムを作ろうと考えたのが、リスニングママ・プロジェクト発足の経緯です。最初は任意団体として活動していましたが、実際に利用して話すことや聴いてもらうことのよさを体感した友人たちと、2018年にNPO法人を立ち上げました。

リスニングママ・プロジェクトのかわいらしいロゴマーク。リスママメンバーのお気に入りなのだそう。
リスニングママ・プロジェクトのかわいらしいロゴマーク。リスママメンバーのお気に入りなのだそう。


話すママも、聴くママも元気になれる「おはなしDAY」

オンラインで話を聞く活動が、現在の「おはなしDAY」につながったんですね。

はい。「おはなしDAY」では、妊婦さんから(末子が)小学6年生までの子育てをしているママが、オンラインの通話ツールを使って20分間無料で自由に話すことができます。パソコンやスマホでどこででもアクセスできますし、顔や名前も見えずに利用できます。リスナーは現在約10名が活動していますが、みなさん利用する方と同じ子育て中であり、「聴き方」の訓練を受けたママたちなんです。

ママ同士であれば、話しやすそうですね。

やはり、同じ立場でないとニュアンスが伝わりづらいことってありますよね。例えば、雨が続いて洗濯物が大変…なんてことでも、大人の洗濯物といろいろ汚れ物の多い子どもの洗濯物とでは悩みも違います。同じ子育て中なら詳しく説明しなくても、そうした状況を分かり合うことができるんです。また、リスナーとして活動しているママたちは年3回開催しているリスナー養成講座を受け、実践試験に合格した方々ですから、話をしっかり「聴く」ことができます。「聴く」は無意識にやっている方が多いと思うんですが、意識的に「聴く」のは最初とても大変なんです。講座では、話している人の自己対話が深まるような特殊な「聴く」スキルを、段階的に学んでいきます。

ただ聴いてもらうのとは、全く違うのでしょうね。

違いますね。例えば、ママ友同士だとお互いに話したいことが溜まっているので、自分の話を最後までしきれないことがあったり、ちょっといらないアドバイスがきたり(笑)することもありますよね。「おはなしDAY」は、どんな話をしてもOKなんですが、リスナーからはアドバイスを絶対にしないんです。20分間、最後までさえぎられることなく話しきることができて、とてもスッキリします。話している方がどんどん元気になるので、聴く方も元気になるんですよ。お互い対等な立場で、話す人も聴く人も元気が出るのというのが「おはなしDAY」の特徴ですね。

利用したいときは、どうすればいいですか?

ホームページにあるカレンダーを見て、利用したい日時を申し込みます。その日に活動しているリスナーによりますが、午前、午後、子どもを寝かしつけた後の21時ごろなど、いろいろな時間帯があります。海外在住のリスナーもいるので朝5時くらいの枠が出る日もありますね。リスナーのプロフィールを見ることができるので、例えば「男の子3人のママなら、私の気持ちを分かってくれるかも」と、属性で選んでくださる方もいらっしゃいます。はじめは「何話せばいいの?」と思ってしまう方も多いんですが、まずは一度利用してみていただきたいですね。子育てをしていると、話したいのに話せていないことが無自覚に溜まっているものです。「相談するまでもないことなんだよな…」というような、どんな小さなことでもいいので、誰かに話す、聴いてもらうという体験をぜひしてみていただきたいなと思います。

「おはなしDAY」を利用したママたちからは、どんな声がありますか?

これまで900人以上(2014年4月〜2019年7月までの累計)の方にご利用いただいていますが、「1人目のときも聴いてもらったんです」と2人目の育休中にリピートいただいたり、お礼を言うためにわざわざ予約を入れてくださったりした方もいて、そうした声はとても嬉しいですね。「私も聴けるようになりたい」と、リスナー養成講座に申し込んでくださった方もいるんですよ。

イベントにブースを出展することも。活動内容の紹介や実際に聴いてもらう体験ができます。
イベントにブースを出展することも。活動内容の紹介や実際に聴いてもらう体験ができます。


万人に使える「聴く」ことのよさを、たくさんの人に知ってほしい

おはなしDAY以外の活動についても教えてください。

月に1〜2回、ママ向けの講座を開催しています。8人くらいの少人数制で、オンライン講座なのでお子さんがそばにいても受講することができます。小学校や幼稚園、保育園の保護者向け講座に呼んでいただくこともあり、子どもの話を聴くコツや、ママが話を聴いてもらう重要性など、「聴くことのよさ」を広める活動もしています。

PTAなどから好評の「子どもの話を聴くコツ講座」の様子
PTAなどから好評の「子どもの話を聴くコツ講座」の様子。オンラインだけでなく、オフラインでの講演にも力を入れています。


「聴く」ことは、大人同士に限らず幅広い年代に必要なことなんですね。

そうなんです。例えば、介護する人、される人が密室に近い状況に置かれる介護も、育児と同じように聴き合える場が必要なものだと思っていて、そうした現場に「聴く」研修を提供できないか検討しているところです。ほかにも、職場内や夫婦、パートナーとなど、「聴く」は万人に使えるスキルですね。

24時間365日、話したいときいつでも聴いてくれる場所がある安心感を

活動する上で、大切にされていることは何ですか?

一方的な助ける、助けられるというのではなくて、「対等である」ということを大事にしています。また、リスニングママ・プロジェクトに関わったことで、より幸せが増すような活動であろうということも常に思っています。活動する上で無理をしたり、家庭がおろそかになったりということなく、関わることでみんなの人生がよりよくなるような活動を目指しています。私たちは、リスナーも事務局もお互い「聴いてもらい合う」ということを日常的にしているんです。「今から20分間聴いてくれる人いますか?」というやりとりはしょっちゅうで、「スッキリした」「助かった」という感想のフィードバックもします。私たち自身が「聴くっていいものだ」と実感して活用しているという、想いと活動が一致してることも大切にしていますね。

NPO設立記念に全国各地から集合
普段はオンラインで活動するリスナーが、NPO設立記念に全国各地から集合。「離れていても、話を聴き合える仲間は日々の支えです」と高橋さん。


これからの展望をお聞かせください。

「毎日がおはなしDAY」を目指しているんです。24時間365日、どこかで話を聴いてくれる人がいて予約を入れられる状況になればいいな、と思っています。利用者の方から、「来週おはなしDAYの予約を入れたら、それだけで落ち着きました」というメッセージをいただいたことがあるんです。頼り切って依存するのではなく、聴いてもらう場所を確保したら、その日までちゃんと生きられる…これってすごいことですよね。話したいと思ったときに聴いてくれる場所があるという安心感を、これからも提供していきたいです。そのために、世界中にリスナーを育てたり、利用者を増やしたりしていきたいですね。そうすれば、夜中でも話すことができますし、外国で子育てをしている方も利用しやすくなるなと考えています。

リスニングママ・プロジェクトの紹介ティッシュ
リスニングママ・プロジェクトの紹介ティッシュ。チラシより受け取りやすく、持っている時間が長いことで利用につながればと願いを込めて、メンバーのカンパにより作られたのだそう。


もう一つは、「聴き方」を磨く機会をたくさんの方に持ってもらいたいです。「聴く」ことは学校では習いませんが、学んでみると「そういうことだったんだ〜」というシンプルなことなんです。例えば、保護者の方や先生方に学んでいただいて、子どもたちがいつでも話を聴いてもらえる環境が作れたらいいですね。聴いてもらいながら育ったお子さんは「聴き方」がインストールされますし、聴けるようになると、話すのも上手になります。そうやってコミュニケーションや人とのつながりを大事にできる、誰もが身近な人に聴いてもらえる社会になれば、「おはなしDAY」もいらなくなりますから、それを目標にしてこれからも活動していきたいと思います。

写真協力:NPO法人リスニングママ・プロジェクト(一部写真を除く)
https://lis-mom.jimdo.com