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知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子どもの丈夫な心を育む“言葉かけ”を広める活動を展開

NPO法人 親子コミュニケーションラボ(杉並区)

NPO法人 親子コミュニケーションラボ


プロフィール


NPO法人 親子コミュニケーションラボ
代表理事/フリーアナウンサー・天野ひかり

テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」元キャスターの経験を活かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師など幅広く活動する。
親子コミュニケーションラボでは、0歳から親子でコミュニケーション力を高める「ことばでおやこみゅ教室」を主宰。
子どもとの会話のコツをまとめた著書は、通販サイトで子育てランキング1位のロングセラーになっている。

活動の原点は“知ること”で変わった自身の子育て

親子コミュニケーションラボ発足の経緯を教えてください。

NHK「すくすく子育て」のキャスター時代、専門家の先生方から子どもの脳や心の発達、言語を習得する過程など、番組に入り切らないほど多くのことを学ばせていただきました。
知識を得てから自分の子どもを見ると、それまで「なぜこんな行動をするの?」「大丈夫かな?」と不安だったことにも一つひとつ意味があると分かり、「おもしろい!」と感じたんです。
知識の有無でこんなにも子育てのおもしろさが変わるのかと思いました。
これを自分だけに活かすのはもったいない、次世代に伝えていける場を作ろうと、仲間たちと一緒に親子コミュニケーションラボを立ち上げました。

親子で楽しみながら、コミュニケーション力を高める「ことばでおやこみゅ」教室

活動の一つである、「ことばでおやこみゅ」教室について教えてください。

1年間かけて親子のコミュニケーション力を高め、子どもの自己肯定感を育むための言葉かけを学べる教室で、0歳のお子さんから参加できます。

私は、企業のトップの方や営業の方へ大人向けの話し方教室を長くしていますが、子どもが生まれて赤ちゃんのコミュニケーション能力や言葉の獲得の早さにとても驚いたんです。
「これは0歳から始めなくては!」と思いました。また、先生方から得た知識をもとに、「こんな言葉をかけると、子どもはこう返してくる」というのを、自分の子どもで実体験したんですね。少し実験のように(笑)。
「まだ言葉を話さないから…」と親が油断している0歳が、実はコミュニケーション力を育むには一番大事な時期ということを、皆さんにお伝えしようと教室を始めました。

ことばでおやこみゅ
「ことばでおやこみゅ」教室は、杉並区子育て応援券を利用できる。


お子さんだけでなく、お母さんやお父さんも一緒に学ぶ教室なのですね。

最初、子ども向けのプログラムで始めたら、伸びる子と伸び悩む子がいました。
毎日一緒にいるママ・パパに違いがあるのではと考え、「子どもを育てるための親の言葉かけ」を学ぶプログラムへ作り変えたところ、ママ・パパたちがどんどん変化して、子どももあっという間に変わっていきました。
参加した方々からは、「今まで“なんて育てにくい子だろう”“子育てが大変”と思っていたけれど、子どもがダメなのではなく、自分の言葉かけが間違っていたんですね」という声をたくさんいただいています。


具体的にはどんなことを学べるのですか?

たとえば、「褒めた方がいい」「絵本の読み聞かせがいい」などは、知っている方が多くいらっしゃいます。
でも、褒め方や読み聞かせるときの言葉かけを間違えると、逆効果になることもあります。
教室では、「こういう場面ではこんな言葉をかけるといいよ」、というポイントをお伝えするのを軸に、体操や食育、英語、季節の行事などを取り入れながら、親子で楽しくコミュニケーション力や自己肯定感を育んでいきます。


親子で楽しくコミュニケーション
言葉かけについては天野さん、体操や英語などはそれぞれ専門家の講師から学べる。


自己肯定感とはどのようなものなのですか?

「私は私だから大丈夫」という、長所はもちろん欠点も含めてありのままの自分を認められる、心の丈夫な状態です。
自己肯定感を持つと、新しいことに挑戦する力、壁を乗り越える力、相手を思いやる力など、子どものさまざまな力を発揮できるといわれています。
今の子どもたちが社会に出る頃は、AIが当たり前に働く時代になるでしょう。
知識を詰め込み、正しい答えを教えられ、言われた通りにするという、今までの教育ではよしとされてきた能力ではAIに敵いません。
これからはAIにできないことを…と考えると、お子さんが自己肯定感を持つことはとても大切だと思います。

時代とともに子育てもアップデートが必要なのですね。

「早く片付けしなさい!」と言って、その通りにできたら「おりこうさんね」と褒めるのが昭和の教育でした。
でも、これでは“指示がないと動けない”子や、「本当に今片付けたい?」と自分の心へ問わずに、「お母さんが怒らないのはどっち?」と考える子になる恐れもあります。
最近では、「お母さんの望みは分かるけど、自分のやりたいことはよく分からない」と悩む中高生や大学生がたくさんいるんですよ。
何も知らなければ、自分が育てられたやり方で子育てをしてしまうのは当然ですから、「ことばでおやこみゅ」は新しい時代を生きる子どもに合った育て方を学べる場にしたいと思っています。

指示ではなくどんな言葉かけをすれば、きちんと片付けができる子になるでしょうか?

まず、「わぁ〜積み木で素敵なおうちができたね!」のように、子どもが夢中になっていることを声にして全力で“認めます”。
次に、「そろそろ一緒に片付けて夕飯にしようか」のような“提案”をすると、子どもは「まだ遊びたい」や「片付けてご飯にする」など自分で考えます。
この繰り返しで、考えて行動できるようになり、物事を最後まで完成させる力や状況に応じた思考力も伸ばせます。
決めるのは子どもで、親は子どもの考えを受け入れるということ。
最初にかける「認める言葉」が、自己肯定感を育むためにとても大切です。

子どもが考えて決めるんですね。

私は、自己肯定感を「器」、親がつい言ってしまう「片付けなさい」のような言葉や勉強、常識、ルールなど社会で必要な知識を「水」と呼んでいます。
「器」を大きくするのがママ・パパの大切な役割で、「水」は子ども自身が汲んで入れてくるものです。
親がいくら「片付けなさい」と言っても、これは「水」を入れる行為で、「器」が育っていなければジャージャーあふれて、「何回言ったら分かるの!」となってしまいますよね。
そうではなく、「器」を大きく育む言葉をかけてあげると、お子さんは自分で「水」を入れられて、ママ・パパもストレスなく子育てを楽しむことができますよ。

子供とスキンシップ


0歳から“本物”にふれあう機会を。ママ・パパも本気で楽しむことがポイント!

「ことばでおやこみゅ」以外の活動についても教えてください。

講演会や夫婦向け講座などのほか、定期的にオペラや歌舞伎などの鑑賞イベントを開催しています。
芸術を楽しむ力も0歳からきちんとあるんですよ。イベントは、プロの方をお招きしてセットや衣装まですべて“本物”。子どもだからって手を抜くことはありません。
一般的に、芸術の舞台は未就学児お断りが多いですよね。世の中にないなら…と作ってしまいました(笑)。


芸術鑑賞イベント
芸術鑑賞イベントは、0歳児から料金をいただいて“本物”を。思い思い楽しむ子どもたちに、感動するママ・パパたちが多く大好評だ。


小さなお子さんでも舞台を楽しめるのですね!

子どもたちは、踊ったり、歌ったり、歌手の衣装に見とれたり、照明に興味を持ったり・・・いろいろ楽しんでいますよ!
舞台の前には、体操で思いきり体を動かしたり、「オペラってなあに?」など基礎知識を学んだりする時間があります。
リラックスして、少し内容を理解してから見るとより舞台を楽しめるんです。

ママ・パパには「静かに」「走り回らないで」と指示や禁止をしないで、お子さんと一緒に歌って踊って楽しんでくださいとお話しします。
実は、「あれは〇〇だよ」などあれこれ言うより、ママ・パパが「うぁ〜すごい!」と本気で楽しむ方が、お子さんは集中力を発揮できます。
皆さん「うちの子がこんな楽しめるなんて」と感動されるんですよ。

舞台が始まる前のウォーミングアップ
舞台が始まる前のウォーミングアップ。緊張をゆるめ、少し知識を入れるとより楽しく鑑賞できる。


もっとたくさんのママ・パパたちへ、子育てに大切なことを知る機会を!

おやこみゅの活動する上で、天野さんが大切にされていることは何ですか?

「目的」と「手段」を間違えないでお伝えできるといいなと思っています。
子育ては「お子さんの自己肯定感を育む」ことが目的で、褒めることや読み聞かせ、叱ること、勉強などは、そのための手段だと私は思っているんです。
でも、つい「たくさん本を読み聞かせなきゃ」「早くひらがなを書けるように」など、手段を目的化して失敗しがちです。
講演や教室で皆さんにお話しするときは、それらを間違えずにきちんとお伝えしていきたいです。


笑顔がいっぱいの「ことばでおやこみゅ」教室
笑顔がいっぱいの「ことばでおやこみゅ」教室。毎回、季節の行事や食育などを取り入れて行う講座は「とっても楽しいですよ!」と天野さん。


これからの展望をお聞かせください。

「ことばでおやこみゅ」教室は3校6教室あり、2020年に新しく1校開校しますが、今後もさらに増やしたいです。
また、教える側である「子どもの自己肯定感を育むコミュニケーション講師=”おやこみゅ講師”」の育成も目標ですね。
これから、もっとたくさんのママ・パパが、子育てに大切なことを知ることができる機会を増やしていきたいと思っています。

写真協力:NPO法人親子コミュニケーションラボ
http://www.oyakom.com