• ツイッター
  • フェイスブック

これが子育て最前線これが子育て最前線

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

たくさんの言語や世代が交わり、世界中どんな人でも大切にする気持ちを育む

ヒッポファミリークラブ(渋谷区)

ヒッポファミリークラブ(渋谷区)


プロフィール

一般財団法人 言語交流研究所 ヒッポファミリークラブ
研究員・平岡 由布

ヒッポファミリークラブ創設者・榊原陽氏の長女。自身の誕生を機に「この子が大きくなったときには、世界はどんどん狭くなっていく。そんな世界を伸び伸び生きていってほしい。それには日本語以外の言葉もできたら」という榊原氏の思いから、ヒッポの基となる活動が始まった。現在、夫と3人の息子の5人家族でヒッポの活動を楽しむ傍ら、全国各地で講演を実施、ヒッポの活動普及にも携わる。2012年、ヒッポのインターンシップでメキシコに2カ月半滞在。

創設のきっかけは、これからを生きる子どもへの思いから

「ヒッポファミリークラブ」立ち上げの経緯を教えてください。

創設者である父・榊原陽は、私が生まれたことをきっかけにヒッポの活動を始めたんです。父は、私が大人になる頃の世界は今よりもっと狭く、近くなっているだろうと考え、別の国の言葉が話せれば視野が広がったり、いろいろな人と出会えたり、子どもが豊かに育つのではないかと思ったそうです。その思いが、ヒッポの原点になりました。

当初から、多言語の活動をされていたのですか?

まず始めたのは、子どもたちに英語をプレゼントする活動でした。ですが、いくら子どもが楽しく学んでも家に帰れば日本語だけの生活に戻ります。また英語は学校で習うこともあり、親が子どもの話す英語につい「間違っているよ」など指摘しがちなんです。子どもだけでやっていること、英語だけでやっていることにも行き詰まりました。

人間はどんな言葉でも“環境”があれば話せるようになる

何を機に、現在のような活動へ変化したのでしょうか。

世界を見回すと、「一国=一言語」の国は少なく、何言語も話す国や地域はたくさんあります。日本人の感覚だと2ヶ国語以上できれば「すごい!」となりますが、多言語で育つ人は頭のよさなど関係なく、生活環境にある言葉ならいくつでも話せるんですね。

「本来人間は、どんな言葉でも“環境”があれば話せるようになる」と気付いた父は、英語だけでなく、多くの言葉が飛び交う環境を作ろうと考えました。そして、どんな年代でも関係なく、子どもと同じ環境に暮らす家族もみんなで参加できるようにし、いろいろな価値観、目線、言葉を持つ人たちが集まる場に変えよう、と始まったのが現在の多言語多世代が交わる活動なんです。

主な活動の一つであるファミリーはまさに、そのような場ですね。

“ファミリー”とは、ヒッポのメンバーが定期的に集まって多言語を楽しく育む場所です。赤ちゃん連れの家族や子育てを卒業されたシニアの方、会社帰りに来る方、外国の方などさまざまな人がいて、本当に家族のような雰囲気です。私の息子たちも小さな頃は、ファミリーでたくさんの人に抱っこしてもらいました。
全国に約700カ所以上あり、メンバーはどこのファミリーでも、週に何度でも参加できるんですよ。

“ファミリー”では老若男女さまざまな人が集まり、歌やゲームを通して多言語を楽しんでいる。
“ファミリー”では老若男女さまざまな人が集まり、歌やゲームを通して多言語を楽しんでいる。


赤ちゃんが母国語を話すように、自然に言葉を身に付ける

ファミリーではどんなことをするのですか?

歌や物語を21の言語で収録したヒッポオリジナルのマテリアル音源を使い、踊ったり、ゲームをしたりして遊びながら言葉と触れ合います。ダンス好きなメンバーが振り付けを作ってくれて、それが周辺のファミリーに伝わり、全国のファミリーで流行る・・・なんてこともありますね。

とても楽しそうですね!

単語や文法を覚えて学ぶのとは違い、楽しく自然に言葉と親しむことができます。音源はCDやSDカードなので、メンバーはファミリーの日以外も家のいろいろな場所から流して、BGMのように自然に耳に入る環境を作れます。すると、知らないうちに言葉が身に付くんですね。特に子どもたちの吸収力はすごいです! 大人は必死になりがちですが(笑)、遊んでいたはずの子どもはスラスラ言えてしまうというのはよくあることです。

必死に覚える勉強とは全く違うアプローチで、楽しく言葉と触れ合う。
必死に覚える勉強とは全く違うアプローチで、楽しく言葉と触れ合う。


あえて勉強するのではなく、自然にインプットされるんですね。

「自然習得」とは、赤ちゃんが母語を話すように言葉を習得することです。ヒッポには、赤ちゃん研究会(ベベフィールド)というものもあり、子育て中のママたちと一緒に赤ちゃんが言葉を獲得するプロセスなどを研究しているんですよ。赤ちゃんからさまざまなことを学びながら、「泣き声も言葉なんだね」「何もできないと思っていたけど、何でもできるんだ」とホッとして帰るお母さんがたくさんいらっしゃいますよ。

まるで本当の家族のような“ファミリー”は明るい笑顔でいっぱい!
まるで本当の家族のような“ファミリー”は明るい笑顔でいっぱい!


国際交流では、家族全員で外国の暮らしを体験することも!

国際交流活動も盛んに取り組まれているようですね。

小学5年生からの海外ホームスティや、留学生などのホームスティ受け入れなどの活動をしています。家族全員でホームスティへ行くご家庭も少なくないんですよ。みなさんとてもよい体験をされています。海外へ行ったメンバーはもちろん、ほかのメンバーもホームスティの体験談を聞いたり、日本に滞在中の留学生がファミリーへ遊びに来てくれたり、ヒッポには世界の文化を知る機会がたくさんあります。

ロシアへホームスティしたご一家は、家族の会話にロシア語が出るようになったそう。
ロシアへホームスティしたご一家は、家族の会話にロシア語が出るようになったそう。


活動を通して、メンバーの方からはどんな声がありますか?

「積極的に外国の方へ話しかけるようになった」や「外国の方から声をかけられやすくなった」という方は、たくさんいらっしゃいますね。また、家族みんなで同じことに取り組むことで家族の会話が増えたという方や、子育てで悩むお母さんたちからは、「いろいろな世代のいるファミリーへ来ると気持ちが楽になれる」という声もよくいただきます。

海外からは年間5,000名の留学生などを、メンバー宅で迎え入れている。
海外からは年間5,000名の留学生などを、メンバー宅で迎え入れている。


さまざまな線引きをなくし、人と人をつなぐ言葉の活動をさらに広げたい

活動する上で大切にされていることは何ですか?

「言葉を話す、言葉を大切にすることは、その言葉を話す人を大切にすること」と父がよく言っていました。言葉は単なるコミュニケーションツールではなく、言葉を通してその人が分かり、近づけます。国や言葉、世代に関わらず交わるヒッポのスタンスは、さまざまなものに線を引かなくなり、どんな人とでも向き合って、その人のことを大切にできる気持ちが育っていくと思います。

これからの展望をお聞かせください。

創設40周年に向けて、さまざまなイベントを企画しています。一人でも多くの方にヒッポの活動を知ってもらいたいですし、一緒に活動してくださる方も増えればいいなと思っています。ヒッポのメンバーは会員制ですが、どなたでも参加できる後援会やワークショップを各地で開催しているほか、お近くのファミリーへ体験参加もできます。興味をお持ちの方はぜひ一度、ヒッポの活動を体験してみていただきたいですね。
また、現在は韓国、アメリカ、メキシコ、台湾で同じマテリアルを使った活動を展開していますが、今後はさらにいろいろな国へ活動を広げていきたいと考えています。

写真提供:一般財団法人 言語交流研究所 ヒッポファミリークラブ(一部写真を除く)

https://www.lexhippo.gr.jp