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これが子育て最前線これが子育て最前線

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

専門知識で“見立て”、家族と一緒に子どもたちをサポート

一般社団法人ぽけっと(文京区)

一般社団法人ぽけっと(文京区)


プロフィール

一般社団法人 ぽけっと 代表理事・吉本 舞美
平成29年、一般社団法人ぽけっとを立ち上げる。児童発達支援・放課後等デイサービス「発達支援ルーム ぽけっと」にて子どもと保護者を支援。また保育園や幼稚園の先生方をサポートする巡回・研修事業を、複数の園に対して100回以上にわたり実施。保護者向けの講演会、支援者向けの研修等、子どもを取り巻く環境にさまざまな方面から支援を実施している。

子どもたち一人ひとりに必要なことが全部できる場所を

ぽけっとの活動を始めた経緯を教えてください。

ぽけっとのスタッフのほとんどは、行政の発達支援センターに所属していた職員なんです。その中で療育支援・相談などを行っていましたが、行政の枠組みは良くも悪くも公平性が求められるため、本当にその子に必要とされる支援を行うのは難しい状況でした。それならば私たちの持つ専門知識や情報を最大限に活用し、子どもたち一人ひとりに本当に必要とされる支援ができる場所を作りたい、と思ったことが「ぽけっと」を立ち上げる大きなきっかけになりました。

病院の診断がなくても、お子さんに気になる点があればぽけっとを利用できるのですか?

はい。理解面に遅れがなくても、集団生活が難しかったり、日常で思うように力が発揮できなかったりするお子さんの療育支援などを行っています。病院からの紹介で利用されるケースもありますが、ぽけっとでは診断結果にとらわれず、その子が何に困っているのか、どんなことが苦手なのかという部分を大事にして詳しく分析します。

たとえば「言葉が出ない」というご相談はよくありますが、言葉を言わせることを重視して単語を覚えさせようとするのではなく、その子の言葉が出にくい理由や発達段階をしっかり“見立てる”ことが療育にはとても大事だと考えています。

気になっているところだけをなおす、のではないのですね。

今困っていることだけでなく、過去や将来像まで想像することが大切です。その子の将来のためにどんな経験をすればいいか見立て、土台を作ったり、本人に必要性を感じてもらったりするのが重要ですし、そこがしっかり見いだせないと効果は望めません。

ぽけっとは、言語聴覚士や作業療法士などの専門的な資格を持つスタッフのみで構成されているので、さまざまな専門性でその子を見立ててサポートしています。

児童発達支援や放課後デイサービスを提供
ぽけっとは東京都の認定を受け、児童発達支援や放課後デイサービスを提供している。


療育は、楽しく自信をつけて社会へ出て行く前の“舞台袖”

療育ではどのようなことをするのでしょうか?

お子さんに合わせた個別やグループのクラスで、コミュニケーションの基礎や認知・言語スキル面、運動面などを育てます。療育は遊びやゲームなどにこっそり苦手要素を入れ込んだプログラムで、楽しみながら苦手なことも経験できてしまうことをねらいにしています。

お子さんが楽しく通えそうですね!

療育は子どもにとって面白かったり、褒められたり、「できた!」がいっぱいあったり、楽しい時間に思ってほしいんですね。その分ご家庭には、楽しいだけでなくねらいを定めた活動だとご理解いただけるよう、「ぽけっとノート」という連絡帳を作成していて、とてもご好評いただいているんです。

どのような連絡帳なのでしょうか?

口頭でもお伝えしますが、「ぽけっとノート」にはその日の活動プログラムやそのねらい、頑張っていたご様子、今後の課題など詳細に記載します。書面にすることでお子さんのご様子を客観的に捉えられますし、成長の過程を見たり、ご家族や所属機関の先生との共有ツールにできたりとご活用いただいています。

療育は、保護者と分離で受けるのですね。

お子さんにより異なりますが、基本的に分離です。家庭でも学校でもない療育は、お子さんにとって社会の一つなんです。その社会の中で、家族以外の大人や“先生”と呼ばれる人とよい関係を築いたり、楽しい活動の中に“分かった”や“できた!”と感じられる場面をたくさん経験することで、基本的な人との関係づくりの土台や社会で生きていくための力を育てていきます。
楽しい思いや自信をつける経験がたくさんできるぽけっとは、本番(社会)に出て行く前の“舞台袖”のようなイメージですね。

療育のクラスは定員に達している(2020年1月現在)そうですが、利用者の方からはどんな声がありますか?

行政や医療機関からのご紹介や、ありがたいことに保護者様からの口コミもいただき現在は定員となっています。2歳から小学6年生までのお子さんが通われていますが、幼少期から「卒業してもずっとここに通いたい」と言ってくださる方も多く、信頼を得られているのかなと嬉しく思っています。

お子さんについての見立てや療育内容、所属機関との付き合い方などを明確にお伝えすることも、ほかにあまりない取り組みで「安心」という声をいただきますね。はっきり明確にするのは責任を伴いますし、「様子見で…」とうやむやにしがちな支援者も多いのですが、私たちは「どのような様子を」「いつまで」見るかなど、専門的に分析した上で具体的に説明することを意識しています。

療育は2歳から受け入れ、プログラム等は子どもそれぞれに合わせて作成される
療育は2歳から受け入れ、プログラム等は子どもそれぞれに合わせて作成される。


保護者向け講座、先生向けの研修なども積極的に行う

療育以外の活動についても教えてください。

保護者の方向けに、ペアレントトレーニングという活動をしています。療育に通っていない方でも利用でき、スタッフがご自宅へ伺って行います。トレーニングといっても“訓練”ではなく、一緒に話しながらお子さんの行動を紐解いて「じゃあこうしてみよう」と考えたり、つい怒ってしまう気持ちのコントロールについてお伝えしたり…ご家族皆さんがハッピーになれる時間を増やすための講座です。

幼稚園や保育園でも講座を行っているそうですね。

企業が運営する保育園、幼稚園や学童などへ“支援者支援”という形で研修や訪問をしています。
ぽけっとへ来るお子さんだけですと、支えられるお子さん・保護者の人数は限られます。たくさんの子どもたちと日々関わる先生方がスキルアップすれば、救われる子は増えると思うんです。
また先生方には「この仕事をやっていてよかった!」「子どもが成長して嬉しい!」と感じる瞬間をもっと増やして欲しいなと思い活動しています。

「“支援者支援”は今後もさらに力を注いでいきたい」と吉本さん
「“支援者支援”は今後もさらに力を注いでいきたい」と吉本さん。


我が子のように愛しサポートする“子育てのチームメイト”に

活動をする上で大切にされていることを教えてください。

私はぽけっとにいらっしゃるご家族に、「子育てのチームメイトにしてください」とお話しするんです。
チームメイトは、常に横にいなくても少し先を歩いて「ここは石があるから気をつけて」などアドバイスするのも、チームでは大事な役割ですよね。お子さんやご家族が幸せになるために、私たち専門職はお子さんを“見立てる力”を持ち、それをきちんとお伝えすること、自分たちが「やりたい」ではなくお子さんに「必要かどうか?」常に問うことを大切にしたいです。

スタッフたちは、通ってくる子どもたちをみんな「うちの子」という感覚で接しています。我が子のように全力で愛して、可愛がって、その子に合うものをずっと探しながら育てていきたいですね。

子どもだけでなく保護者にも担当スタッフがつき、綿密な情報共有を行う
子どもだけでなく保護者にも担当スタッフがつき、綿密な情報共有を行う。


知識を持った支援者を増やし、一人でも多くの子どもを支えたい

これからの展望をお聞かせください。

子どもへの療育支援の継続はもちろん、支援者をもっと育てていきたいですね。
私たちは困っている子どもを支えるための専門知識や情報をたくさん持っていますが、関われる人数は限られます。私たちが直接関われなくても、子どもたちに関わる方々のスキルが上がれば一人でも多くの困っている子どもを支えていけるのではないでしょうか。そのためにも私たちが知っている知識や情報を惜しみなくお伝えしていきたいです。

写真提供:一般社団法人 ぽけっと

HP:https://www.pocket-room.org