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地域の団体活動紹介地域の団体活動紹介

知ろう!出会おう!とうきょう子育て

地域で芽生えた先駆的な支援策や注目の取り組みを取り上げ、取材して紹介します。

子供たちが社会とつながる手助けを。不登校、ひきこもりを支援する

NPO法人ピアサポートネットしぶや(渋谷区)

NPO法人ピアサポートネットしぶや(渋谷区)


プロフィール

理事長 相川良子(あいかわ・よしこ)
公立中学校教諭、教頭、校長を経て社会教育に携わったあと、「ピアサポートネットしぶや]を立ち上げ、不登校、ひきこもりの子供・若者の社会自立を目指している。「原宿の丘コミュニティ委員会」顧問、「渋谷ファンイン」事務局、社団法人 全国キャリア教育ネットワーク協議会監事、NPO法人 スクールアドバイスネットワーク協議会監事など、多岐にわたって子供の支援をおこなっている。


統括リーダー 石川 隆博(いしかわ・たかひろ)
会社員を経て、民間ボランティア推進機関に勤務し、中高生がボランティア活動に参加するきっかけづくりのイベントに参加。その後、ピアサポートネットしぶやでピアサポーターとして活動しながら事務局の仕事に携る。2017年より総括リーダー。

不登校・ひきこもりの支援を開始

「ピアサポートネットしぶや」立ち上げの経緯を教えてください。

相川さん:1980年代、競争社会の中で落ちこぼれてしまう子供が増えました。それによって校内暴力がひどかった時期がありましたが、落ち着いてくると、今度は内に抑えられた思いが暴力以外の形で出てくるようになりました。その特徴的なものが「いじめ」です。その影響で不登校になる子供が増えてしまいました。私は当時、学校で教員をしていましたが、「これはまずい」と思い、社会からこぼれ落ちてしまった中高生の居場所を作るために「渋谷ファンイン」という団体を立ち上げました。

その団体で活動を始めてしばらくすると、東京都が青少年対策事業として、ひきこもりの支援活動を始めることになり、一緒にモデル事業を進めることになりました。その活動をするために、今度は「ピアサポートネットしぶや」を新しく立ち上げたのです。

地域柄の問題・性別の問題・夜の居場所の問題など。多方面から子供たちをサポート

「ぴあサポートネットしぶや」では、困難な状態にある子供たちをさまざまな方法で支援していますよね。まずは学習サポートについて詳しく教えていただけますか?

相川さん:学習サポートは、主に不登校の子供たちに対しておこなっています。学校に行けず、家にひきこもっている子供も、やはり心のどこかに勉強したい気持ちはあるんです。ピアサポートネットしぶやでは、「資格を取りたい」「もっと勉強したい」「勉強したことを活かして何かやりたい」といった、それぞれの子供のニーズに寄り添って学習支援をしています。

学習サポートの様子
学習サポートの様子。勉強を見てもらったり、アドバイスをしてもらったりできる。


石川さん:例えばパソコンでエクセル・ワードを勉強している子がいます。あとは通信制高校のレポートを自力で進めるのが難しいとき、アドバイスをしたり一緒に考えたりすることもあります。また、中学の時点で不登校になって高校に上がった場合、勉強の積み重ねがないのでつまずくことがあります。それを少しずつ埋めていくようなサポートもしています。

子供食堂も開いていると伺いました。

石川さん:子供食堂は、先ほどもお伝えした「渋谷ファンイン」を中心に、地域の人たちで運営しています。私たちは「夜の居場所」とも呼んでいます。この地域は共働きが多いので、子供が夜遅くまで1人で過ごしていることが多かったり、コンビニでお弁当を買ったりすることもあります。「それなら温かいご飯を食べながらみんなでわいわい楽しくやったほうがよさそうだ」と地域からの声を受けて、地域の力を借りながら始めました。子供たちが家から歩いて来られるように、渋谷区内に五ヶ所つくりました。ここで子供たちは夕食を食べ、宿題をしたりして過ごします。

子供食堂で宿題をする子供たち
子供食堂で宿題をする子供たち。テーブルを囲んで仲間と一緒に過ごす。


女子の居場所「ぴあっとカフェ」はどのような活動ですか?どうして女子限定なのでしょうか?

石川さん:ぴあっとカフェは月に一度、女子だけが集まり、手芸や絵を描いたりして過ごしています。どうして女子限定かというと、実は、ひきこもり支援を利用するのは、ほとんどが男子なんです。親御さんからの問い合わせのとき、息子さんか娘さんか聞くと、その数は半々なのに、実際に支援を利用するのは8割以上が男子です。こういった経緯から、女子だけが居られる場所をつくったら、もしかしたら利用してくれるのかもしれないと思い、女子限定の「ぴあっとカフェ」を始めました。ピアサポートネットしぶやは、このおかげもあり、今では利用者が6:4(男性:女性)ぐらいになっています。

ぴあっとカフェでの様子
ぴあっとカフェでの様子。みんなで話しながら、楽しく制作中。


相川さん:ひきこもりが始まるのは高校卒業〜大学生のときが多いのですが、男の子の場合は、親が「どうにかしなければならない」と思って積極的に行動します。しかし、女の子の場合は、「そのうち結婚すればいいし、家事手伝いとして家にいても恥ずかしくない」という価値観があり、親が動きません。そのため、ひきこもっている実態がつかめないのです。実態がわからない分、女子のほうが問題は深刻かもしれません。

同世代のサポーターが、ひきこもりの子供たちを支える

支援を利用している子供たちの中に、変化がみられたケースはありましたか?

相川さん:いろんな理由により、小・中・高とほとんど学校に通えなかった子がいました。高校卒業の資格だけは通信で取りましたが、それでも家に引きこもっていました。そのときにお母さんから連絡をもらい、最初はこちらからご自宅へ訪問して相談にのりました。相談が始まってから、その子がこの場所に来られるようになるまでに2年かかりましたが、小学校から高校まで人とほとんど関わりを持たなかった子供が、自分1人でここに来られるようになったのは大きなことです。最初は親としか来られなかったんですよ。そしてここに来て人と話をするうちに、「このままではいけない」と思ったようで、通信で大学に入学し、がんばって卒業をしました。今は仕事をしようと、必死で就職活動をしています。

時間をかけてゆっくりとサポートをしてくのですね。

石川さん:そうですね。まずは私たちが訪問して話を聞きます。その後、ボランティアの「ピアサポーター」がサポートに入り、何回か訪問を繰り返したあと、ここまで来るように誘導します。最初は1人で来るのは難しいので、お母さんやピアサポーターと一緒に来るのを繰り返して、ようやく1人で来られるようになります。

相川さん:ここまで来られるようになれば、子供に変化が起こります。ここに来さえすれば、人と会う機会が増え、(外の世界に)だんだん慣れていくからです。

「ピアサポーター」とはどのような人たちでしょうか?

石川さん:ピアサポーターは主に大学生です。どうして専門家ではなく大学生なのかというと、年齢が近い方がより共通点が多くなり、子供たちが話しやすいためです。ゲームや漫画のことなど、同世代のサポーターと雑談し、心を開いていく中で、思い悩んでいる部分を少しずつ出してもらえればいいな、と思っています。

「居場所」に集まるピアサポーターと子供たち
「居場所」に集まるピアサポーターと子供たち。


0歳〜3歳のサポートも開始!

「渋谷papamamaマルシェ」とは?

石川さん:渋谷区は、子育てをするには少し厳しい環境にあります。共働きが多いことや、外から移り住んで来て渋谷区にルーツがないケースがあるからです。そこで、渋谷区で子育てをするパパママが、「もともと渋谷に住んでいる人たちとどうやって繋がっていくか?」とか、「子育てをもっとやりやすくしたい!」と声をあげて、「渋谷papamamaマルシェ」を立ち上げ、実行委員会形式で自主的に運営しています。主な活動は、渋谷区にある多くの子育て支援団体の情報を取りまとめて、わかりやすくすることです。私たちは、寄付集めや広報活動で運営に参加しています。

渋谷の「子育て団体・施設ガイド」
渋谷の「子育て団体・施設ガイド」。渋谷区内の子育て施設情報を一覧にまとめ、わかりやすく・利用しやすくした。


相川さん:3歳までは、どうしても親と家にいることが多くなってしまいます。そうすると親が子育てで煮詰まってしまうので、この年齢までは虐待が発生する件数も多いです。虐待発生予防も兼ねて、「乳幼児期から地域と繋がっていこう!」と活動しています。

地域で協働して、力を合わせて課題を解決していくかたちに

今後の目標や課題はありますか?

相川さん:今は基本的に私と石川さんの 2人で運営をしていますが、事業内容は非常に幅広いです。しかし、私たちがどんなに頑張っても、できることは限られています。これからも活動を広げていくためには、それぞれの組織が主体的に動き、役割分担をしながらつながって活動していく、ネットワーク型の組織づくりが必要だと考えています。地域社会が複雑で多様になってきているわけですから、一つの団体や行政が全てを負うことはできないのです。役割分担型の地域ネットワークをどのようにつくっていくかを、現在は模索中です。

写真提供:NPO法人 ピアサポートネットしぶや(一部写真除く)